三体 [Kindle]

  • 早川書房
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感想・レビュー・書評

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  • 話題の中国発、壮大なSF作。最初は少し世界観の把握に時間がかかるものの、逆にそこを通り過ぎるとどんどんページが進みました。

    物語の始まりは中国・文化大革命、中国共産党に迫害を受ける知識人とその家族。残された物理学者の娘・葉文潔は自由を制限された身でありながら、紆余曲折を経て僻地の紅岸基地に派遣され、太陽放射と異星人の存在に関する観測に没頭する。そしてある日、太陽が持つ増幅機能を発見し、どこかにいる異星人への信号を送る。その信号は太陽系の少し先、”三体文明”へ到達した。
    三体文明からの侵略への警告にもかかわらず、人類に絶望していた文潔は侵略者”三体文明”を招くメッセージを送る。

    現代では物理学者の自殺が相次ぐ事例が発生していた。
    文潔の娘であり物理学者である楊冬は「物理学は存在しない」という遺書を残し、命を絶っていた。
    現代編の主人公、高強度ナノマテリアルの研究者である汪淼は、粗野であるが鋭い洞察力を持つ警察官・史強に引っ張られ、事件に巻き込まれていく。
    そこには「三体」というVRゲームが関わっており、これは三つの太陽を持ち、その予測不可能で複雑な軌道と激しい気候変動(常に太陽が出る恒紀と、極寒の乱紀)に苦闘する知的生命体の、文明の隆興と崩壊の繰り返しを描いたゲーム。
    汪淼はこのゲームの深い世界観に驚愕し、そしてこの世界が単なるゲームでなく、実在の宇宙空間をテーマにしたものだった。最後に、三体文明はこの惑星でない異星への居住へと舵を切る。
    そしてこのゲームは「三体文明」への理解者を増やすという目的もあり、それらは次第に地球三体同盟(ETO)という強大な勢力として、地球の文明に取っての脅威となる。

    地球の友好勢力との交信を可能とした三体文明は互いを理解するための多くの情報を交換し、将来の人類社会の急速な科学発展を防ぐべく、ある刺客を送る。それは”智子”と呼ばれる、高次元を司る高い知能を持った粒子。智子による、地球の科学への破壊が始まる。。


    地球を破壊できるレベルの高度な宇宙文明の交流として、「星を継ぐもの」は比較的テーマを見ても近いかも。
    地球の残虐な文明に絶望を感じ、宇宙文明に救いor破壊を求める、というのは聖書の時代からの普遍的なテーマでありながら、より近代の非人道的政治(中国での文化大革命)の犠牲に端を発すという、現実と空想の組み合わせが絶妙。
    また時系列の移動と、話の中での伏線回収も見事で、ある意味「漫画的」とも言えるようなわかりやすさもある。
    「三体運動問題」をはじめ様々な箇所でガリレオからアインシュタインまで物理学とその歴史にも言及されるけど、物理学の専門知識はなくても楽しめます。

    本当にこのような危機が起こってもここに書かれているような対策が行われそうだな、とも思うし、非現実的と思えない。
    三体文明の理解者を増やすという運動を知識層をターゲットにしている、という点も、SFファンの優越思想を上手くくすぐっていると思う。
    (本当にこういう事態が起こったら、多分ETOに近い組織の構成員はほとんどSFファンなのではないか・・)
    読んでいて「うー、そうくるか!」と思う場面ばっかりの詰め込みっぷりで、退屈しない。本当に面白いです。

  • いきなり文化大革命の光景から始まる本格的SF作品、門外漢のわたしさえ引きずり込まれる面白さ!
    中国ならば純文学 と言う定説を思い切りひっくり返す目から鱗 な作品です。
    異星文明とのコンタクトがテーマだけど、作者は否定しているらしいけど現代が抱える地球文明の問題提起もたくさんあり、挿入されるヴァーチャルリアリティゲームや悠久の過去をさ迷う場面等 今様が満載のSFです♪
    和訳者の熱意も伝わってきます。
    やはり こう言うのは男子向き だろうかねぇ? でも主人公は女子だし ねぇ(笑)

    • ありんこさん
      なんだか興味深いですねぇ!読みたくなりましたよ!
      なんだか興味深いですねぇ!読みたくなりましたよ!
      2020/06/18
  • やっと読み終わりました〜長かった!

    ぐいぐい引き込まれるから、気が付いたら時間がどんどん経ってて危なかった。
    三部構成になってるけどそれぞれの部が結構違う内容で、まさか第一部の文化大革命時代の学者の話が異星人との交信に繋がるなんて予想だにしなかった。

    あとこの日本語版の面白さはだいぶ訳者の大森さんの功績が大きいみたい。
    原文の直訳を読み比べてみたら、だいぶSFとして面白い作品になるよう工夫を凝らしていることが分かる。

    続編も楽しみ!早く日本語版出てほしい。この状況で予定通り今年中に刊行されるのか⁈

  • 中国のSF小説って、あんまり面白くないだろうと思った。中国国内で、3部作で2100万部も売れている「三体」を読んでみた。最初のところで、文化大革命の紅衛兵の追求集会の場面が出ていることに驚きだ。少なくとも、臭いものに蓋をするという中国で、よくぞ書いたと思った。理論物理学者を、紅衛兵や学者である妻が、一般相対性理論が観念的だとか、ビッグバンをいうと、神の存在を認めるのか?と追求する。結局は、その公開討論で、理論学者は死にいたるのである。その娘/葉文潔が、この物語の主人公となる。下放されている時に、レイチェルカーソンの沈黙の春を読み、共感した友人にはめられたりする。中国は、密告社会なのである。
    ナノテクノロジー研究者の汪淼が、重要な役わりを果たす。VRによって、中国の時代を遡っていく、世界の哲学者や学者が登場する。確かに、VRを使うことで、時間は無理なく、過去にも未来にもいけ、本来会えない人にも会える。このVRの特徴は、かなりの時間のシーンが見れることだ。とにかく、いいとこ取りを全てしてしまうところに、この物語の編集のうまさがある。
    物理的法則は、時間と空間を超えて不変であるはずが、不変ではない実験データが出ることによって、物理学は存在しないと遺書に残す科学者。応用部門ではなく、基礎理論の物理学者が、自殺していく。一体、何が起こっているのか?という中で、太陽が三つある世界が登場する。全く、太陽が出ない乱紀と太陽が出る恒紀。ある時は燃えつくされ、ある時は凍りつく。そして、人や植物は脱水して、生き延びる。仕掛けが、面白い。そして、スリリングに進んでいく。結局は、地球外生物との交信と、地球の人々がおごり高ぶっているので、地球外生物に助けを求めることに。最も簡単に殺したり、殺されたりするので、長い歴史や激変の中で、ありうる話として処理される。
    驚くべき、要素と構成に、圧倒された。ふーむ。中国のSFも面白いのである。

  • あまりにも評判になっていて読んでみたいかも、と思っていたところへキンドルセールだったので。
    そもそもSFが得意じゃないし、物理学とか科学的な話はほとんどただ字を追っていただけという感じなので、1割くらい読んでないことになるのかもしれないけど、それでも十分おもしろかった。SFとしてすごく画期的なのかとか、他国のSFと違うのかとかはわからなかったけど。
    ときどき、壮大すぎるというかなんというか想像が追いつかない感じで、場面を頭に思い描けないようなところもあったけど。あと、VRゲームのなかの場面もけっこう絵づらが思い浮かばなかったり。
    そういう想像もつかないような突拍子もない感じにわくわくしたり、人間を使ったコンピュータ、みたいなのとかユーモアがあって妙にほのぼのするようなところもあったり。

    もう人類が自分たちの手で自分たちがつくった文明をコントロールできなくなっていて、外から、もっと高等な文明をもつ異星人になんとかしてもらうしかない、なんとかしてもらいたい、っていうの、なんだか、今、すごくわかる。

    三部作っていうのも知らなかったんだけど、次作もきっと読む。

  • コロナウィルスによる緊急事態宣言が発令され、自宅にいる時間が増えてしまった。

    外出するのは、買い物とウオーキング程度。

    せっかくだから、これまで読んだことない、触れたことのないジャンルに手を付けてみよう。

    Audibleでダウンロードして、いろんな形で聞いた。


    物語は文化大革命の真っ只中からスタートする。

    想像をはるかに超えた、現実に打ちのめされる間もなく事態は展開していく。

    文革後の時代パートの主人公である、天体物理学者の葉文潔(イエ・ウェンジェ)。
    父を紅衛兵の女子中学生に大衆の面前で殺され、この国の未来に絶望する。
    その後勤務することになった軍事基地である発見をする。


    そして、現代パートの物語は、ナノマテリアル研究者の汪淼(ワン・ミャオ)。
    「科学フロンティア」への潜入を命じられた彼に、ある日ありえないものが現れる。

    「ゴースト・カウントダウン」
    目の前に巨大な数値が現れ、常に減っていくのだ。


    4000年の歴史を持つ国らしい、圧倒的なスケール。
    息をもつかせぬ、緩急巧みな展開。

    そして個性豊かな登場人物たちをたった一人で語り抜いた、朗読の祐仙勇の圧倒的な技量にも魅了される。

    中国では2100万部、全世界では2900万部のベストセラーに偽りはない。

  • 文化大革命で大学教授の父を紅衛兵に殺された葉文潔は二年後大興安嶺で生産兼摂兵団にいた。彼らは、ソビエトの戦車を迎え撃つ代わりに、カラマツの木々を倒すことに日々を費やしていた。そんな日々に葉文潔は兵団の機関紙の記者から手紙の清書を頼まれたことで、思想的な問題があるとされ罪に問われた。しかし、彼女の天体物理学の知識を必要とした人物にあるプロジェクトに移された。それは紅岸プロジェクトだ。これがすべての始まりだった。

  • 激しい文革の描写からスタート。歴史、政治、都市、物理、宇宙、VRゲーム、宗教、サスペンス、自然愛護...色んなテーマが幾重に展開されるアツモリSF小説!三体人はどんな容姿をしているのだろう。第二部の日本語版発売が楽しみ。

  • 初のSF小説に挑戦!

    宇宙戦艦ヤマト!発進!ってな具合な!
    テンションで読んでみました!

    〜あらすじ〜

    物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人エリート女性科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)。失意の日々を過ごす彼女は、ある日、巨大パラボラアンテナを備える謎めいた軍事基地にスカウトされる。そこでは、人類の運命を左右するかもしれないプロジェクトが、極秘裏に進行していた。

数十年後。ナノテク素材の研究者・汪淼(ワン・ミャオ)は、ある会議に招集され、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる。その陰に見え隠れする学術団体〈科学フロンティア〉への潜入を引き受けた彼を、科学的にありえない怪現象〈ゴースト・カウントダウン〉が襲う。そして汪淼が入り込む、三つの太陽を持つ異星を舞台にしたVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは?

    結論……全然宇宙戦艦ヤマトぢゃあなかったww

    さて……
    正直に言って私は平均よりだいぶ下の知能指数だと自負しております。要するに『馬鹿です』ww

    この作品を読む前に色々と感想を目にしてきたのですが…スケールやばい!、面白すぎっ!、イッキ読み必須っ!、等の素晴らしい感想を聞かされたのでこれは!読まずにはいられない!
    だが……あるひとつの言葉に引っかかりました…
    『難しい』……む、難しいっ!!
    いや!難しいは無理だよ!
    物理学とか出てきても分かんなぁ〜い〜
    正直読む前は大分不安に押しつぶされそうになりましたが……いざ読み始めると!

    ……ムズい!!!!!!ww
    物理学…知らん!
    量子力学…知らん!
    天文学…知らん!
    …………パニックっっ!!ww

    しかーーし!大丈夫です!!
    確かに難しいですが!!
    ちゃんと後から分かりやすく説明してくれるので
    安心してください!!
    なんとな〜く〜こんなことなんだろ?的な感じで読めば大丈夫です!
    そして結論を言うと……読みやすいです!!
    そして……
    『三体』……めっちゃくちゃ!!面白い!!
    やばいです!!×10!!ww
    し・か・も!まだこれはまだほんの序章に過ぎないと
    キタ━━ヽ(´ω`)ノ゙━━!!
    追っかけます!!
    三体シリーズ!!




  • うつらうつらしては、VRゲーム「三体」にログインした時に覚醒するの繰り返し。
    アイデアは面白いが、描写や展開に興を削いでしまうところがあり、SF要素のない前半の文化大革命当時のパートの方が小説として出来が良かったりする。
    そもそも「三体」も、謎解きの要素はあるがバッドエンドでもどんどんステージが進み、ゲームというよりは体感アトラクションに近い。
    さらに、せっかく手に入れた地球外生命体との通信記録も、次の章ではどういうわけか彼らの視点で内情や思惑が読者に明かされ、著者のあまりのサービス精神に唖然とさせられた。

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著者プロフィール

1963年、山西省陽泉生まれ。発電所でエンジニアとして働くかたわら、SF短篇を執筆。2008年に刊行された『三体』で人気に火が付き、“三体”三部作(『三体』『黒暗森林』『死神永生』)は中国で2100万部以上を売り上げた。2014年にはケン・リュウ訳の英訳版が刊行され、2015年、アジア人作家として初めてSF最大の賞であるヒューゴー賞を受賞。2019年には日本語訳版が刊行され、11万部を超える大ヒット。

「2023年 『神様の介護係』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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