掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集 [Kindle]

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  • 1936年アラスカ生まれ。鉱山技師だった父の仕事の関係で幼少期より北米の鉱山町を転々とし、成長期の大半をチリで過ごす。3回の結婚と離婚を経て4人の息子をシングルマザーとして育てながら、高校教師、掃除婦、電話交換手、看護師などをして働く。いっぽうでアルコール依存症に苦しむ。20代から自身の体験に根ざした小説を書きはじめ、77年に最初の作品集が発表されると、その斬新な「声」により、多くの同時代人作家に衝撃を与える。90年代に入ってサンフランシスコ郡刑務所などで創作を教えるようになり、のちにコロラド大学准教授になる。2004年逝去。レイモンド・カーヴァー、リディア・デイヴィスをはじめ多くの作家に影響を与えながらも、生前は一部にその名を知られるのみであったが、2015年、本書の底本となるA Manual for Cleaning Womenが出版されると同書はたちまちベストセラーとなり、多くの読者に驚きとともに「再発見」された。

  •  「『アメリカ文学界最後の秘密』と呼ばれたルシア・ベルリン、初の邦訳作品集」とのことだが、原書は43篇あるうち24篇が抽出されている。個々の作品の長さはまちまちで、数分で読めるものもあれば1時間以上かかるものもある。

     語り手の職業や舞台となる場所は様々であるため、最初はそれぞれ完全に独立した物語かと思って読み進めたが、中には共通と思われる登場人物もいる。ひとつの世界観で統一されているのかな、などと考えながら読み終えたが、その疑問はあとがきを読んで氷解した。

     「・・・アラスカで生まれた彼女は、幼少期をまずアメリカ西部のいくつかの鉱山町、ついで父の不在のあいだエルパソの母の実家で過ごし、そこから南に移って、チリで一転して裕福な上流階級の身分となり、・・・メキシコ、アリゾナ、ニューメキシコ、ニューヨークと移り住んだ。・・・晩年の彼女はコロラド州ボールダーに教職を得、死の直前に息子たちの住むロサンジェルスに移った」(リディア・デイヴィスによるあとがきより)

     どの作品も、作者自身の体験をもとにした物語なのだ。普通の人はこんなに多彩な人生を送れないだろう。職業についても多彩で、「掃除婦や、ERの看護師や、病院の事務員や、病院の電話交換手や、教師」などに就いており、それぞれ物語に反映されている。それを作家の才能としてどう評価するかは意見が分かれると思うが、妙に生々しいリアリティはそこから来ているのだろう。

     残念ながらリディア・デイヴィスが絶賛した言葉の選び方やリズムを翻訳で味わうのは難しいと思われる(訳者はかなり努力されていると思うが)。また、アメリカの作家だから当然原書は英語だと思っていたが、途中でひょっとしてスペイン語で書かれてたのだろうかと思う部分もあった。実際どうなのか分からない。いつか機会があったら、原文を読んでみたい気がする。

  • ルシア・ベルリンという方の、小説でもなし、エッセイでもなし、作品集とでもいうものです。そこからいくつかの作品を選んで翻訳されたものが、今回の日本語版です。それゆえに選び抜かれた良質のものを味わうことが出来たのではないかと感じています。
    著者の実体験を裏に基づき、それを著者の意識下の現実に置き換えて、新たな物語として創作される。全体として一人の人生ではあるのですが、そこにありえないと感じるほどの現実さが加味されています。そのリアリティに、驚かされ、嫌悪も感じ、読んでいて辛さもひとしおでした。ただ、それが読んでいるうちに快感にも変わっていくところが何ともいえないのです。読み終えたくないと思いながら、読み終えてしまいました。

  • 風が強い夜の星のような、乾いた輝きのある文体が印象的だった。センテンスが短くて切れ味がよく、リズミカル。訳もいいんだろうと思う。
    ただそれだけに、あまりにも悲痛で正直続けて読むのがつらかった。特に子どもの目線での家族についての話が苦しかった。短編だから一息入れながら文体の魅力に惹かれながら読めたけれど、長編では私は読み切れないんじゃないかと思った。
    (そこまでしんどくない話をピックアップしておいて再読するという味わい方がいいかもしれない)

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著者プロフィール

Lucia Berlin 
1936年アラスカ生まれ。鉱山技師だった父の仕事の関係で幼少期より北米の鉱山町を転々とし、成長期の大半をチリで過ごす。3回の結婚と離婚を経て4人の息子をシングルマザーとして育てながら、高校教師、掃除婦、電話交換手、看護師などをして働く。いっぽうでアルコール依存症に苦しむ。20代から自身の体験に根ざした小説を書きはじめ、77年に最初の作品集が発表されると、その斬新な「声」により、多くの同時代人作家に衝撃を与える。90年代に入ってサンフランシスコ郡刑務所などで創作を教えるようになり、のちにコロラド大学准教授になる。2004年逝去。レイモンド・カーヴァー、リディア・デイヴィスをはじめ多くの作家に影響を与えながらも、生前は一部にその名を知られるのみであったが、2015年、本書の底本となるA Manual for Cleaning Womenが出版されると同書はたちまちベストセラーとなり、多くの読者に驚きとともに「再発見」された。

「2019年 『掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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