よだかの片想い (集英社文庫) [Kindle]

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  • 生まれつき顔にアザがある女性と、彼女の経験を題材にした映画を撮影する映画監督の青年との恋。

    アイコは自分の顔に強くコンプレックスを持っているけれど、同じ研究室の先輩に可愛がられてたり、後輩に強く慕われてたりして、十分充実した環境に恵まれてるなって思う。

    どちらかというと孤独なのは、映画監督の青年(飛坂さん)のほう。
    彼を実写化したらきっとジャニーズ的なイケメンを起用したりするんだろうなって思うくらい、人を惹きつける輝きを持ってる印象だし、きっとこれまでも羨ましがられる人生を送ってきたんだと思う。

    そんな2人が恋に落ちる。

    「なんとなく影のある青年に惹かれる」って、若かりし頃の女子あるあるよねー。笑

    そんな中でもアイコは常に堂々として、自分より5つ?6つ?も歳の違う男の人に食ってかかったりもするし(経験はないって設定だったけど)十分、恋愛上級者よ。あなた。笑

    さて、そんなアイコに飛坂はどうする??!

    っていうのが、この小説のポイントなんですね。

    まぁ、最後にアイコが選んだ選択は、実に女性的で現実的で、彼女らしいなって思う。

    個人的には、こういう「あの時なんかすごい恋愛してたよな、自分。なんだったんかな、あれ。」って思う経験は、できるだけ若いうちにしとくのがいい笑。

    こういう経験の積み重ねが「自分はどんな結婚生活を送りたいのか」を明確化することに繋がると思うし、自分の人生を強くしてくれるとも思う。


    しかし、私も学生時代に思う存分翻弄された、あのクソみたいな男たちは今どうしてるんだろうか。ま、もう会いたくもないし、話したくもないけど笑。

    リアルな恋愛の結末は、こんなもんかな。笑

  • 読み終えると、恋愛とは違う視点が印象に残った気がした。
    重そうな内容かと思っていたが、読みやすかった。

    自分にとって当たり前のことが、他人から、時には家族からも違った意味で見られているということ。
    それは一生そうだろうと思う。
    自分のことを100%わかる人なんていないし、自分以外の人を自分が理解できるなんて思っていない。
    それでもわかろうとしたり、本当のことなんてわからないのに、好きになってしまう。
    恋愛ならわからない方が燃える場合もあるし。笑

    私自身、左手首に赤ちゃんの時に突然出来たという、丸い痣がある。また、左耳にも副耳というイボがある。こちらは生まれつき。
    幼い頃から母はとても気にしていたけれど、自分にとっては物心ついた時から、体の一部で本当に何とも思っていなかった。
    どちらかいうと「左手はこっち」みたいな左右の区別に役立っていたくらい。しかも左利きなので、そんな痣やイボすら左に集中していて、なんとなく特別感があったのだ。

    でも、母はたまに痣を触って「目立たなくなるといいね」と言い、イボは切除出来る事も提案してくれた。
    幼い頃は友達にも痣やイボの事は聞かれたし、触らせてと言われていた事を思い出した。全然嫌じゃなかったのだ。

    この物語の主人公アイコの痣は目立つ顔だし、私と比べてはいけないし、性格の違いもあると思う。
    でも、人が思うよりも本人は気にしていないというか、違う感覚があるのではなかろうか…と思ってしまったのだ。
    たとえ、痣を消して本人の本質は変わらなくても、周りの目が変わり、勝手に「痣を消して明るくなったね」と思われるのだろう。

    アイコは、地味な人生を歩んでいるように描いていたけれど、研究という、しっかりと自分の得意なことを生かした選択をして、そこでいじめられるわけでもなく、教授やミュウ先輩をはじめとする仲間達と出会い、幼い頃からの信用できる友人もいる。
    家族仲も良い。そんな人生は豊かである。
    それが出来なくて悩んでいる人の方が多いのではないだろうか…。

    痣があってもなくても、飛坂さんに会えた人生だったら良いな。
    結末は同じだろうか。変わるのだろうか。
    でもきっとその出会いはお互いに無駄ではないと思う。この2人なら無駄にはしないと思いたい。

    余談ですが、私の好きな小説「流浪の月」。
    最近映画の予告を観て、『更紗の人生は更紗のもの』という台詞とアイコが重なってみえた。
    当然だけど、自分の人生は自分のものなのだ。
    自分が納得できれば良いのだ。…と改めて思いました。

  • 顔にあざのある女の子がコンプレックスから少しずつ脱却していく話。
    読みやすい文体

  • 生まれつき顔にアザのある女性の物語。自分の体の一部としてなんとも思ってなかったのに、クラスメイトにからかわれた時、叱った先生の言葉で一気にアザを意識する。自分のアザは酷いものなのか、かわいそうなのか、コンプレックス。他人に期待せず俯いて過ごす。そんな中自分の字を題材にした書籍の映画化が決まり、監督の飛坂さんと出会う。甘ったるい恋物語ではない。寄せては引いて行く波のような恋。

    20200610

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2001年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。03年『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を受賞。15年『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞。18年『ファーストラヴ』で第159回直木賞を受賞。その他の著書に『ナラタージュ』『アンダスタンド・メイビー』『七緒のために』『よだかの片想い』『2020年の恋人たち』『星のように離れて雨のように散った』など多数。

「2022年 『夜はおしまい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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