AIに負けない子どもを育てる [Kindle]

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  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (290ページ)

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」の続篇にして、著者自身が考案し、自ら立ち上げた「教育のための科学研究所」にて有償実施している読解力テスト(RST)の効用を説いたPR本。Kindle Unlimited。

    本書に含まれる28の例題、やってみた。集中力と緻密さ(というかミスのなさ)を問う問題だったな。えらく疲れた。クイズや知能テストに近い感じかな。(自分を含め)早とちりやケアレスミスの多い人は結構取りこぼすんじゃないかな。

    いくつかの設問は、前提条件が足りないと感じた。例えばQ12は、正の電荷を持つのが陽子だけ、負の電荷を持つのは電子だけ、そして両者の電荷の大きさは等しい、という常識を加味すれば「①同じである」が正解でいいはず。

    Q21は、①学生が大学に通って教育を受けること、②出張に行ってビジネスホテルに泊まること、が「人間が欲望を満たすため」という定義に当てはまるかどうか疑問を感じた。欲望を広義に解釈するか狭義に解釈するかで答えが変わってくると思う。ちなみにこの問題は間違えた(トホホ)。

    Q26とQ27も正解できなかった。焦れてきて問題をじっくり精査しなかったためか、前提条件を一つ見落としてしまった。まさか、前提条件を満たさない選択肢が含まれていたとは(笑)。引っ掛け問題にまんまとやられた感じ。

    本作で著者が力説しているのは、小中の教育改革。穴埋めでキーワードを答えさせる「プリント・ワークシートの多用がかえって生徒の学力に悪影響を与えているのではないか」とのこと。知識を詰め込む暗記偏重教育が、読解力習得機会を奪っている、という指摘。ナルホドナルホド、そうかもしれないな。

    著者は、読解力を向上させるための万能薬はない、と言い切る。その上で、教育現場に対し、穴埋め式のプリントを廃するとか、黒板の内容をノートに板書させるようにする等の授業のやり方についての提案や、オセロ実況中継、言葉とおりに図形を並べる、偽定理を探せ、などの授業内容の提案を行っている。

    「いつの間にか、一語一語の関係を正しく解析しながら読むのではなく、単語を眺めて適当に読み進めるといった誤った読み方が定着して」しまい、「無意識のうちにすでに自分が獲得している知識から回答しようと」する習慣のついてしまった大人に対しては、「普段の生活の中で、ゆっくりでも正確に意味を理解しようと心がけることがまず第一歩になる」と書いている(著者のお弟子さんの体験談)。この点、自分も心しておきたい。慌てずじっくり丁寧に読み、意味を正確に把握する癖をつける。当たり前のことだが実は出来ていないのかもしれないから。

    本書、結構いいことが書いてあった。が、前著同様、著者の考え方の偏りや強引な物言いには違和感(というか不快感)を感じた。むしろ、内容よりこの点が気になった。「私が」とか「私は」という文章がとても多いし、自分は正しい、教育現場や役所は間違っている、と言い切る傾向も強い。著者や著者の友人が塾にも行かず暗記にも力を入れず一流大学に合格できたからといって、大学受験に暗記が不要かのように言ってしまっていいんだろうか(記憶力も読解力もずば抜けた秀才だから言えるセリフじゃないかな)。旧帝大以外にはろくな大学じゃないかのようなカテゴライズも気になった。エリート思考が強いのかな。自分の教え子に対して「手塩にかけて指導して博士号を取得させた」なんて上から目線の言い方、普通するかな? という訳で、内容的には星三つ以上なのだが、星二つにしといた。

    あれ、アマゾンのレビューはかなり高評価だな。何でだろう。自分が変なのかな?

  •  筆者は、事実について書かれた短文を正確に読むスキルを検証するために6つの分野からなるリーディングスキルテスト(RST)を考案。本来、このテストは長文読解が苦手なAIのスキルを図るために考案されたのだが、多くの中高生や大人もRSTの成績が芳しくない、つまり読めていないということが判明した。その事実を危惧した著者は、本書で読解力向上のためにできることを提言している。

     まず、なるほどと思ったのは、読解力が低いとされている子どもは長文読解ができないどころかツイッターほどの短い文でさえも正確に読めていない可能性が高いということ。それゆえに抽象概念を扱うことが増える中学校以降の教科書を読んで内容を理解することが難しい。著者いわく、本来なら日本の大学入試は教科書さえ読めれば突破できるようになっているので、国語では小説や古文を扱うばかりでなく理科や社会といった他教科の教科書を読める力をつけさせることが重要とのこと。
     読解力が低い人の特徴として、キーワードだけを拾って修飾語や文節の繋がりを正確に捉えきれていないAI読みに陥っているという指摘もあった。これは学校にパソコンやコピー機が導入されて、先生たちがよかれと思って穴埋め式のワークシートを作成して授業で使っていることがどうやら原因となってしまっているらしい。一コマの授業の中で板書をノートに写す能力を鍛えなければならない。スマホの普及もそうだが、私達は便利さの代償として自らの能力を退化させてしまっているということだ。
     筆者は読解力を養うための算数の授業案も紹介している。これも大変ためになったのだが、できれば国語の授業案も提示してほしかった。まあこれは自分で考えろということか。
     
     文明の進化を憂う必要はないけれど、本来は身につけられるはずだった技術を知らず知らずのうちに手放してしまっていることが恐ろしい。写真や動画で今を共有できるSNSの時代に生きる私たちは「イイネ」のボタン一つで他者との繋がりを見いだしてしまう。そういったツールに満足することなく、自分の興味関心に応じて新聞や書籍からも積極的に情報を得られる人を育てるための授業作りに励んでいきたい。

  • 日本における最先端AI研究者による続編。
    前作では、AIの限界(AIに東大合格は不可能)、現代人の読解力の危機的状況を網羅した内容だった。
    本書では一歩踏み込んで、現在の小中学校における読解力の実態の調査、改善のための工夫などを紹介している。しかし、読解力向上のための特効薬はないと著者は指摘する。なぜなら「読解力がない」「文章を読めない」原因は複雑に絡み合っていて、これさえやれば読解力が上がるというものはないからだと。

    本筋とは関係ないが、北陸地方(富山・石川・福井)及び秋田県の学力テストの成績が東京よりも高いというのは驚き。これら地域は所得も高いから、やはり所得の高さと学力の高さは比例するのではないかと思う。

    読解力向上の特効薬はないが、低下の原因になっているものを著者は発見する。それは、生徒に黒板を板書させずに穴埋め式のプリントとドリルを沢山やらせること。特に穴埋め式のプリントは、出来上がった文章に単語を埋め込むだけのため、文章力が上がらない。

    プリント、コピー機、パワーポイント、勉学が便利になった反面、文章力という大きな力を失いつつある。
    そして、スマートフォン、SNSの普及により、子供が大人同士の会話を聞く機会、大人が子供に話しかける機会が激減した。

    また、著者が開発したRSTテストを何回も受けるというのもナンセンス。このテストは読解力を計るためのものであって、向上を目指したものではない。視力を上げるために視力検査を何回も受けるようなもの。

    そもそも文字が読めることと、文章を読めて意味が分かることは全くの別問題。
    語彙の種類や量は、家庭環境によって大きく異なる。アメリカの調査では、3歳までの子供で高学歴家庭と貧困家庭で育った子供では、3000万語もの語彙の差があることが分かっている。
    そして、日本でも就学援助率(貧困家庭)と学力・読解力の低下に負の相関関係があることが分かっている。

    文字がなかなか読めない子供でも、小学2-3年生でだいたい揃ってくる。むしろ心配すべきはその後の教科書を読めない問題。
    単語を拾うだけで、なんとなく意味を理解しようとするのは、AI読みという。
    こういう読み方をしている限り、文章の意味を理解せず単語の羅列だけで覚えようとするから、安易な暗記に走ってしまう。

    人間がコンピューターと本質的に異なり優れている点は、意味が分かること、欲求があること、全力で怠けようとすること。

    そもそも、中学高校の国語の教科書の内容は、ここ60年間ほとんど変更がない。時代にそぐわない内容も多い。それなのになぜ更新されないのか。それは、現場の教員がこれまでと同じものを教えるほうが楽だからである。

    子どもたちの読解力、ひいては学力を上げるために必要なことは、①全ての幼児は0歳から保育園に通う権利がある②全ての小学生は学童に通う権利がある。と法律で定めることと、著者は指摘する。

    そして、家庭でできることは以下のとおり
    【幼児期において】
    身近な大人同士の長い会話を聞く機会を増やす。絵本を繰り返し読み聞かせる。信頼できる大人に自分は守られているという実感を持たせる。ごっこ遊びをする。貨幣で何かを買わせる。お手伝いの経験をさせる。日々の生活の中で自然に触れさせる。子供が何でもいいから自分の時間に集中できる時間を確保する。同世代の子供たちと接する機会を確保する。

    【小学校低学年】
    読めても書くことができない子がこの年代では多い。叱りつけたりドリルを沢山やらせずに、粘り強く分かるまで指導する。短い文章を書く練習をさせる。生活が乱れていないか注意する。睡眠、食事、排便がしっかりできていないと集中力を欠く。逆に言うとこれら生活がしっかりできていれば、あとは家庭で出来ることはそんなにない。子供の落ち着きがなくても大らかに構えてよし。
    この時期の発達の早い遅いはその後の成績に左右しないことが分かっている。他の生徒に危害を加えない限りはでんと構えてOK。

    昔は、首都圏の有名大学に地方高校からの出身者が一定数いたが、今は激減していると著者は指摘する。
    その原因は、学びの基礎的スキル自学自習する能力が全国で低下したため、塾や家庭教師に資金をつぎ込むことが可能で、都会の私学に通わせることができる家庭層のみが大学受験レースに勝利することになったからだと著者は考える。
    こんなことではますます格差は広がる一方であり、日本の未来にとって決していいことはない。

    本書では、ある時期から急激に読解力が上がった経験をもつ人が何人か紹介されているが、その中でも文章の要約をするようになったら、読解力が上がったという体験談が印象的だった。

    それにしても著者のバイタリティには感服する。
    当初はAIの限界を広く知らしめるために東ロボの開発に着手したが、その中で現代人の読解力が低下していることに気付き、RSTというソフトを開発した。
    そして、読解力指導の中で小中学校におけるサーバーシステムの遅れに気付き、今度は無償で学校にサーバーを提供するシステムを開発した。

    3人のお子さんを育てながら、本業は別にある中でのこの行動力。なかなか出来ることではない。

  • うちの子、それなりに勉強しているのですができるようにならない…薄々感づいてはいたけれど…。この本を読んで原因がよく分かった。何となく分かっていたことが体系立てて整理された。
    原因は分かったが…親が付きっ切りで勉強をみるわけにも行かず、結局どうやったら自立的に本質的な学習ができるようになるのかが最も難しい。

  • Kindle Unlimitedにて。前作の「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」に続く本。
    リーディングスキルテストのサンプル問題があったことと、読解力向上のヒントになる説明がなされていて、良かった。前著では、読書好きを自称する人でも読解力が低いこともある、と書かれていて、じゃあどうしろと?という気持ちになったのを覚えている。

    会社の後輩や上司に、RSTを解かせてみたい。
    私自身は絵に描いたような前高後低で、具体例同定問題だけは辞書も理数もボロボロだった。物理とか数学とかに苦手意識があるのはこの辺のせいか、と納得。

  • (電子書籍ではありません)
    貸出状況はこちらから確認してください↓
    https://libopac.kamakura-u.ac.jp/webopac/BB00293103

  • 前著「AIvs教科書が読めない子どもたち」の続編というか発展編というか。前半がおさらい含みのリーディングスキルテストと解説、後半がタイトル通りの対策案。

    良かった点
    ・RST(実践)をやってみて、自分がどんなもんなのか一応把握できたこと。タイプ別傾向がギクリとするくらい当たってて、あ~典型例ってやつなんだ~と思った。

    ・子どもへの提言について、当たり前ではあるがなかなか面倒臭くて、学問に王道なしだなぁーと思った。ただし親の多忙と教師不足の現状で、相当の愛と忍耐と第三者フォローと報償がなければ難しそう。

    ・「おわりに」に書いてあったedumapなる、著者の新たな注力について知れたこと。ほしいカタチのものがないなら作ってしまえ!の行動力がすごいなーと思う。(これ立ち上げ奮闘記だけで本が1冊書けそう)。

    よくなかった点
    「大人の読解力は上がらないのか」について、まぁタイトルから外れるんでそれを望むのは的外れかもだけど、子どもへの提言に比べて経験則しかないのがちょっと物足りなくはあった。(大人のカテゴリが条件色々で難しいのかもしれない。子どもより学習に充てられる時間も集中力もなさそうだし。また第3弾書く時のネタになるのかもしれない)。

    総評
    自分の実力を知れるとともに、勢い込んだ文章が面白かった。自分が受けた時の教育ってどんなんだっけ?とつらつら思い出すとともに、人間のAIとの相違点「全力で怠けようとすること」の良しあしを考えさせられたかなあと思う。また続き本が出たら読むかな。(きちんと読めているかどうかはまた別にして!)

  • 子育て世帯の人に限らず、全ての人に読んで欲しい1冊。字が読めると文章の構造が理解できるは別。前著「AI vs 教科書が読めない子供たち」の待望の続編です。

    前著は問題提起とその背景にページが多分に割かれていましたが、今回は読解力を測る方法・観点・向上のさせ方にフォーカスされています。
    文体は読みやすく、著者のエッセイ的な要素も入っており、吸い寄せられるように読み切れるでしょう。

  • 本書内にあるRST体験版はぜひとも読んでほしい。今度正式なRSTを受験してしっかりした診断を受けたいと思う。子どもにも読解力がつくように教えていきたい。

  • 前作『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』を読んだ人は皆思ったであろう感想。「自分の読解力も測定してみたいなあ……でも簡単にパソコンから申し込んでできるわけではないし測定はできないかあ」「読解力が大切なのはわかったけど、読解力をつけるにはどうしたらよいの?」という2つ。これに応えたのが本書。
    まず、本書で簡易的な読解力の診断ができる。
    そして2つめの読解力をあげる方法……これに正解はない、としながらも、小学校の授業例や、読解力があがった人の話などを取り上げて、作者の試行錯誤を見ることができ、参考になる。
    しかし、著者の多くの提案の中のひとつに「読書(新聞を読むこと含む)」をあげている。けれど一方で「読書量や読書が好きか否かは読解力の高低に影響がなかった」という著者があげている分析結果を繰り返している。これの理由がよくわからなかった。
    最後に、学校での連絡手段の電子化について触れているのが大変興味深かった。大震災発生時の現場で、災害後連絡がとれた学校ととれなかった学校を比較し、具体的な対策を国に提案している。それだけでもすごいのだか、国が動かないと知ると、自分が動く、という、その行動力もすごい。
    社会には様々な問題があると思うのだが、その問題をみつけ、解決策をみつける。それができる人は本当にすごいと思う。

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著者プロフィール

国立情報学研究所情報社会相関研究系・教授

「2021年 『増補新版 生き抜くための数学入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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