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感想・レビュー・書評
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枯れた技術の活用次第で課題解決につながる可能性がある。
闇雲に新技術を追い求めるだけが戦略ではない。
これには心から賛同する。
世界の中で日本という国の立ち位置を改めて考えてみると、我々は何か不毛な戦いに巻き込まれていないだろうか。
そもそも世界のルールを日本が主体となって策定することはほとんどない。
すべてアメリカ発だったり欧州発だったり、最近は中国が自国の主張を強めて自分たちの都合のよいルールを既成事実化していたりする。
そんな中を搔い潜って日本がプレゼンスを発揮すれば、世界は平気でルールそのものを更に変更する。
これはビジネスでも然り、スポーツなどでも然りだ。
だからこそ日本は「考え抜かれた戦略」こそが生き残る道だと思うのだ。
王道でなくていい。ニッチでいい。
しかも更に言うと「ビジネス的に大儲け」でなくていい。
大国は他国に対して平気で騙したり嘘をついたりのパワーゲームを行う。
そこに日本はどうやって巻き込まれずにいくか。
そしてあくまでも誠実に課題を解決することを粛々と行う。
武士のように志を高く。
これこそ日本に合った戦い方のような気がするのは、あくまでも私の個人的意見だが、本書の主張もまさに根本は同じだと思うのだ。
綺麗事を言うつもりはないのだが、何となくこの戦い方は日本に合っているような気がする。
真面目にコツコツと積み上げてきた先人たちの技術。
これらを寝かせておく理由もないし、活用できるものは絶対に活用した方がいい。
これからの時代、アジアとアフリカの人口増加に伴い世界勢力図は大きく書き換わっていく。
その中で日本の存在感を見せるには、ディープテックを活用しこれから発展していく国々に対して協力することは必ずプラスに働くだろう。
どうしても我々は先進国目線で、アメリカ・ヨーロッパ・中国などの経済的な大国だけを見てしまう。
しかしほとんどの先進国は日本も含め、今後人口減少に陥っていく。
逆に人口爆発に向かうのが、アジア・アフリカ。
近い将来である2050年頃の世界人口は100億人近くまで達するらしい。
全人口の約40~50%がアジア人、約20~30%がサハラ以南のアフリカ人との試算も出ている。
勢力図も当然に変化していくが、それよりもそんなに増える人口に対して、供給は本当は追い着くのか。
食料然り、インフラも然りだ。
先進国が発展に伴って解決していった課題を、もう一度順番に繰り返していくのはどう考えても無理がある。
使える技術、眠れる技術を使って課題解決を加速させるのは必ず必要なはずなのだ。
2050年って実はそんなに遠い未来ではない。
私はその頃は確実に老人の年齢であるが、おそらく健康的に生きていることはほぼ間違いない。
そう考えると私が経験してきたことを、アジアやアフリカの若者たちのために役立てられるかもしれない。
そんなことが出来たら、これほど素晴らしいことはないではないか。
よく「ある外国を発展させるために、昔の名もなき日本人が活躍した。今でも現地で感謝されている」なんて話が沢山ある。
案外と日本人はそういう気質なのかもしれない。
日本人たるもの、諦める必要はない。
世界の平和のために、身を粉にして働くべし。
本当にそういうことが実現出来たら素晴らしいと思っている。
(2022/3/14)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
これからのスタートアップのあり方を考えることができる本です。技術革新だけがイノベーションではありません。これからの課題を解決したいという情熱を持って、信頼できる仲間と諦めずに試行錯誤を繰り返していけば、既存の技術の組み合わせでも、イノベーションを起こせる地域や分野が、世界のどこかに必ずあります。事例も紹介されていますので、スタートアップを考えているが、どう進めていけばいいかを悩んでいる方などが読まれると、新たな気づきを得られる1冊ではないでしょうか。
【特に覚えておきたいフレーズ】
「PDCAサイクルは決して悪いわけではないが、『これからの課題』を解決し、それを「サステナブルなビジネス」へとつなげるなら、プランよりパッションが必要。質(Quality)の高い問題(Question)に対し、個人(Person)が崇高なまでの情熱(Passion)を傾け、信頼できる仲間たち(Member)と共存できる目的(Mission)に変え、解決する。諦めずに試行錯誤を続けていけば、革新(Innovation)や発明(Invention)を起こすことができるという、QPMIサイクルで考える。」
「日本人はこれまで技術革新こそがイノベーションだと考えてきた節があり、枯れた技術の応用が苦手。既存の技術を組み合わせて新しいものを生みだすことに否定的な部分がある。スマホは、技術的には日本が始めに作れたはずだが、アップルに先を越された。」
「テクノロジーとディープイシューの双方を行き来する視点を日本の企業は持つべき。枯れた技術、眠っている技術こそ役立つかもしれない。基本的な技術は得てして汎用性が高い。日本が持つ強みは、そうした基盤技術を持つこと。」
【もう少し詳しい内容の抽出】
・PDCAサイクルは決して悪いわけではないが、「これからの課題」を解決し、それを「サステナブルなビジネス」へとつなげるなら、プランよりパッションが必要。質(Quality)の高い問題(Question)に対し、個人(Person)が崇高なまでの情熱(Passion)を傾け、信頼できる仲間たち(Member)と共存できる目的(Mission)に変え、解決する。諦めずに試行錯誤を続けていけば、革新(Innovation)や発明(Invention)を起こすことができるという、QPMIサイクルで考える。
・地球サイズの価値を残すなら、いま日本の企業が足を運ぶべきは、ディープイシューの宝庫である東南アジア。
・ディープイシューに出会う方法は、①自分たちの常識を捨てる、②目の前の売上や利益の概念を捨てる、③長期的視点と短期(一年先)の具体的イメージを持つ、④「初めて」を連続してやる、⑤ ①~④までを持ったうえで、現場の若いベンチャーと話す、という5つの方法がある。
〇ディープテックとは
・定義を①社会的インパクトが大きく、②ラボから市場に実装するまでに、根本的な研究開発を要し、③上市までに時間を要し、相当の資本投入が必要で、④知財だけでなく情熱、ストーリー性、知識の組合せ、チームといった観点から参入障壁が高く、⑤社会的もしくは環境的な地球規模の課題に着目し、その解決のあり方を変えるもの、としたい。
・古ぼけていたり眠っていたりする既存技術でも、大いに役立つケースはある。人口爆発国を抱える東南アジアは、今後、外部不経済を確実に起こすが、日本の「眠れる技術」を応用できれば、ソーシャルバリディティの考え方に根差した企業活動を展開できる余地がある。
・日本企業が活躍する類型は、3つのパターンが考えられる。①エマージングマーケットにおいてディープイシューを解決しようとする人々に対しスケールアップ(事業拡大)させる役割、②優れた特性を持つプロダクトを作り出すテクノロジーを持ち得ているにもかかわらず、時代の変遷とともにビジネスの形態が変化して輝けていないテクノロジーをエマージングマーケットのフィールドで再び生かす方法、③日本が抱えるディープイシューを解決しようとしているスターチオアップ企業が、そのままエマージングマーケットに飛び込む。
・ディープテックの課題は、短期間での投資の回収が難しいこと。
〇ディープテックの系譜
・日本は地理的に、アメリカとイギリスのほぼ中間で、東南アジアに近い。ニーズ発掘地域である東南アジアとともに課題解決のために知識のハブ・集約点になり、新たな仕組みを作りだし、実装までの一連を担う「知識製造」を担うポテンシャルがある。欧米圏からのシーズを東南アジアに導入する上で補助的な立ち位置にもいる。
・東南アジアのニーズは、現地に行かなければ発掘できない。母国語でクローズなやりとりをしており、インターネットに情報が上がってこない。日本はこれまでも、アメリカやイギリスから輸入した技術を母国語で組みなおし、解釈しなおし、さらに新しいテクノロジーと自国のニーズを組み合わせる国民性を養ってきた。東南アジアでも同様のことができる可能性がある。
・スタートアップは本来、当事者が解決したい課題を持ち、それを解決することが社会への貢献になると信じるところに根差す。東南アジアには、解決すべき社会課題を持つ当事者が多く、彼らの熱意がスタートアップの進化を加速させている。
〇海外で湧きおこるディープテック旋風
・課題を可視化すると、アイデアが集まる。課題をわかりやすく顕在化させると、人々の「気づき」が広がるケースは多い。
・テクノロジーの進化やコストの低下により、これまでなら不可能だったことが新興国でも可能になった。結果として、ユーザー、メーカー、地球環境にとって「三方よし」の循環を目指せるようになった。
・日本人はこれまで技術革新こそがイノベーションだと考えてきた節があり、枯れた技術の応用が苦手。既存の技術を組み合わせて新しいものを生みだすことに否定的な部分がある。スマホは、技術的には日本が始めに作れたはずだが、アップルに先を越された。
〇日本の潜在力がディープテックで開花する
・従来の経済活動(エコノミー)が「資源の採取→製造→廃棄」という一方通行のリニアエコノミー(直線的経済)だったのに対し、生産・消費・廃棄という各ステージにおいて資源を循環させることで、持続可能な社会な実現とともに経済成長も見据える「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」という考え方を持ったスタートアップが出現している。
・常識や慣習を壊していくことはイノベーションを起こすための重要なトリガーだが、サスティナブルグロースの観点からも、従来の常識を疑ってみる必要がある。
・テクノロジーとディープイシューの双方を行き来する視点を日本の企業は持つべき。枯れた技術、眠っている技術こそ役立つかもしれない。基本的な技術は得てして汎用性が高い。日本が持つ強みは、そうした基盤技術を持つこと。
・他の国が持たない感性や概念、いわゆる東洋思想によって世界と戦ってきた日本が、いつの間にか西洋的な感覚によるビジネスが浸透し、グローバルで勝てなくなった。いま再び、その感性をビジネスの現場に呼び戻す必要がある。偶然を見つけに行き、偶然を楽しむ心が長期的に必要。好奇心がなければならない。 -
眠っている開発プレジェクトを支援し、ビジネスしていくようなモデルを日本だけでなくグローバルに考えた内容でした。SDGs的な健全な表現を使わず、あくまでも「楽しくビジネスしていこう」的な、いつもの尾原さんの優しさもポジティブになれる本です。
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たしかに!新興国のディープなイシュー(根深い課題)と先進国ではフィットする先がなかったかもしれない枯れた技術が出会うことで大きな社会課題の解決が実現できるというコンセプトは理解できる。特に化学・素材系の企業にとって、副産物の利活用は非常に可能性のある領域なんだな、と強く感じました。一方で、それって枯れた技術っていうか、実は最先端の研究分野なのでは?という気もしてちょっと違和感も感じた。
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凝り固まった頭に新しい考えをぶち込まれた感じ。
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2019年11月②