[「解説」以降]
読了。訳者の渋谷豊さんによる「解説」がとても面白かった。読みどころも興味深いのだけど、テキストの変遷についての流れも面白い。遺作に周囲の人たちが手を入れて発表するということと、その結果、生み出されるものについて考える。ラディゲの享年が二十歳というのは知らなかった。若くして後世に残る文章が書ける才があり、けれどもそれが短い期間であったということ。
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[ドルジェル伯の舞踏会]
解説を参照するためのリンクが本文に施されていることに途中で気づいたが、とりあえずは解説に目を通さずに、がつがつと本文を読み進めることにした。
読んでいる最中の雰囲気としては、なんとなく『赤と黒』を読んでいたときの妙な苛々感と似ているものがあって、通底するものがあったりするのだろうかと思っていたのだけど、それどころではなかった。アンヌとフランソワとマオとのあいだの気持ちの向け合い方が、かたちとしてはわからなくはないのだけれども、どうにも気持ち悪くてならない。これはすごい。
ところどころにコミカルなエピソードが挟んである。笑っていいところなんだろうか、これ。
「コンマ収集家というのは、要するに、ダンテの作品のしかじかの版に現れるコンマ(,)の数を数える人のことだ」とか。
「これほど他人の話をよく聞く若者が、まさかただの怠け者だとは誰も思っていなかった」とか。