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感想・レビュー・書評
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ディックの代表的なテーマである「現実とは何か」という問いに挑んだ12の短編集。それぞれの物語は、現実が崩壊したり、別の現実に置き換わったり、現実と幻想が入り混じったりするという、ディックらしい展開を見せてくれます。
今回は、収録されている短編より、表題作の『地図にない町』について紹介します。
あらすじは、とある鉄道駅で働くペインという男が、メイコン・ハイツという町への切符を求める客に出会うところから始まります。ところが、メイコン・ハイツという町は、地図にも載っておらず、存在しないはずの場所なのです。ペインは、客の言うことが本当かどうか確かめるために、自らその列車に乗り込みます。すると、驚くことに、列車はメイコン・ハイツに到着したのでした。メイコン・ハイツには、灰色の霞がかかった不気味な町が広がっています。ペインは、この町が何故存在するのか、そして自分の世界とどう関係しているのかを探ることになります。
この作品のテーマは、現実と虚構の境界、そして過去と現在の影響です。詳細はネタバレになるのでぼかしますが、ディックはメイコン・ハイツという街を、自分たちの住む世界とは違う可能性の世界として表現しています。このようにして、現実と虚構の境界が曖昧になっていく様子が本書の見どころと言えましょう。
ディックは、メイコン・ハイツという町を、現実とは違う可能性の世界として描きましたが、その世界は、現実とは違うだけでなく、現実に影響を及ぼすという設定でした。これは、ディックのならではイマジネーションが強く表れている部分だと感じました。
総評として、この作品は、ディックの初期の傑作であり、SFというよりは幻想的な雰囲気が強いものです。それ故に、想像力と幻想力と感情表現の妙を思う存分堪能できるはずです。詳細をみるコメント0件をすべて表示