ゲームの王国 下 (ハヤカワ文庫JA) [Kindle]

著者 :
  • 早川書房
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レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (372ページ)

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  • 小川哲天才。前作『ユートロニカのこちら側』を読んだ時、これは伊藤計劃の再来か?と思った記憶があるけど、それが確信に変わった。

    日本のSF史における新たな時代の到来よ、おめでとう。

  • 「嘘と正典」で虜になった小川哲作品をもう少し、と思い手に取った。上巻は、カンボジアがポル・ポト支配の闇へと落ちていく過程で、田舎の村にあって聡明で風変わりな少年として育つムイタック、養父母を殺され育ての父とは国籍の違いで引き裂かれ、国のなかで高い地位を得て理想の国家を作ろうと邁進するソリヤの視点ですすめられる。ふたりは一瞬の邂逅で、ムイタックの兄ティウンも含めてゲームをし、はじめて総力を尽くして勝負のできる相手を得たと深い喜びを得るが、のちにソリヤも関わる形でムイタックの故郷ロベーブレソンの住民のほとんどが虐殺されたことで、たもとをわかつことに。「泥」と呼ばれる村民が殺し屋13人を向こうにまわして、土を武器に戦うところは、SFというより南米のマジックリアリズムのような趣を感じ。下巻はいっきに半世紀近くの時が経ち、ムイタックやソリヤの次世代の人物もあらわれ。脳波の測定から記憶の改ざんの示唆などが含まれるゲームが登場し、物語で大きな役割を果たしていく。大学教授として脳波の研究につとめるムイタック。野党の議長となり政権まであと一歩のところまできたソリヤ。事業を起こし富豪となったティウン。ムイタックの村の友人の息子とソリヤの養女が、ムイタックの研究室に入り、ゲームをつくりあげていき、そこにムイタックの研究ももりこまれ、それをソリヤが手にすることで…。究極的にはふたりとも、あの一瞬の邂逅を生涯大切に思っていて、最高の理解者とともにゲームをすることをのぞんでいた、その結果はおそらく次の世に持ち越され…と。これだけの群像劇とそう来たかという発想の飛躍、重苦しい血と統制のはびこる圧政の描写、ルールがルールとして守られる美しいゲームの王国を作ろうとしたソリヤの理想。大きなスケールと力でぐいぐいと引き込まれた。

  • 上巻の終わりは1978年、ソリヤとムイタックの決別で幕を閉じましたが、下巻では一気に2023年に飛び、野党第一党の党首となったソリヤが演説を行うシーンから始まります。上巻と違って下巻では時系列が入り組んでいますが、おおむね2022年以降の近未来が描かれており、カンボジアを「ゲームの王国」に生まれ変わらせるべく権力の頂点を目指すソリヤと、村の大虐殺から生き残って大学教授となり、開発した対戦型ゲーム「チャンドゥク」で世界を変えようとするムイタックを中心に描かれています。
    時系列の構成だけでなく、下巻では物語の色合いが上巻と比べて大きく変わっています。下巻は完全に「ゲーム」を軸としたSFの世界で、ポル・ポトっていう強烈な時代背景に乗っかっていた上巻に比べると、正直迫力不足の感は否めないかなあと思いました。相変わらず国家警察や殺し屋といった分かりやすいヒール役も出てくるし、すっとぼけた精神科医のシーンなんかも笑えるんだけど、何しろ上巻が凄すぎたので期待値が高くなりすぎたかも。でもまあ、ゲームと人生を巡るリアスメイとムイタックのやり取りは面白かったですし、上巻のちょっと不思議な出来事が下巻の伏線になっている点なんかも興味深く、もろもろを含めた全体としての満足度は高いです。直木賞候補作になった『嘘と正典』もなかなか良かったので、次の作品も楽しみになりました。

  • 上巻のクメール・ルージュ時代から大きく飛び、2023年のカンボジア近未来を主な舞台にした下巻。フンセンが「元首相」として扱われているのが意味深。勿論、実際には本書刊行後の2018年の選挙でも、直前に野党を解党して勝利しており、2023年でも本書のような事態にはならなそう。下巻で漸く「ゲームの王国」の意味が明らかになる。個人的には上巻の方が面白い。下巻はだんだんと意味が掴みにくくなるし、カンボジアが舞台であることと結びつき難い。ただ、大作で、秀作で、読み応えがあった。

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