かか [Kindle]

  • 河出書房新社
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感想・レビュー・書評

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  • ・子どもたちのかみさまは、成長するにしたがって小言を言い、なぐって、くるって、そのうち老いて、淋しさを残していく。うーちゃんのかみさまは、かみさまだったはずのかかは、うーちゃんを産んでかみさまじゃなくなった。もともとかみさまじゃなかったんです。
     ずっと思っていたことがあるんよ。人間が信仰を捨てることはままある、そいでも信仰を取り戻すことなんてできるんでしょうか。何かをふたたび信仰することはできるんでしょうか。

    ・はっきょうまえのかかの顔がこれから一生見られなくなることをわかっていたんでしょう、かかの顔をもうすぐ会えんくなるときのために記録しておきたいと思いました。明子が夕子ちゃんの棺の小窓を覗いたまま動かなくなったわけがようやく本当にわかったような気いしました。明子は決して放心していたわけではないんです。記録として焼き付けておこうとしたんです。垂れた目尻が裂けんばかりにおしひろげられふだん青みがかっている白目は充血してあかるい虹彩が微細にゆれうごいている、鼻のてっぺんの毛孔はひらいて乾燥した頬は産毛で毛羽立っているように見えます。すでに幾すじかの叫びを混じらした声が、うーちゃん、かかのこつ好き、と聞きました。

    ・うーちゃんたちのありふれた淋しい未来を誰も悲しまないでしょう。誰も憐れまないでしょう。みんなが淋しいかんです、みんなそれぞれに、べつべつに淋しいかんです。いっしょに淋しがってくれるかみさまがいないなら、うーちゃん自身がうーちゃんたちのかみさまになるしかもう道は残されていないんでした。

    ・しかしながら、すこ、と彼女が示した方向がうーちゃんの地図のさしている寺の方向と同じであったと気づいて不気味に思いました。調べた限り本尊はしまわれているはずでしたが、入口に辿り着いて見ると靴が何足か脱ぎ捨ててあります。その奥で、ずうっと、まるでうーちゃんを待っていたかのように寺の住職と思しき住職が手招きするんです。不気味でした。こん寺にゆかりのある方のご家族が横浜からこの日に来ているというんです、そいで秘仏のはずの、無論うーちゃんも拝む気などなかった千手観音さんを拝めたんでした。

  • 「うまれおちるということは、ひとりの処女を傷つけるということなのでした」

    血で繋がった母娘。
    大好きな、かか。

    元から狂っていた歯車。
    血への畏怖と嫌悪と、
    海より深い親愛の念。

    狂った歯車に、かかに、
    肉の呻き声に慈雨を乞う。

    娘の、命の祈りの旅。

    /////

    『推し、燃ゆ』の衝撃を実は軽く凌駕していた宇佐見りんさん21歳デビュー作。内臓の厭な所に直接触れてくる様な文体が新鮮で、懐かしくて、吐きそう。

  • どこから投げられているかわからん消える魔球…え?え?ド直球だった??な受胎、出産。性行為、出産をディストピアに描く小説に慣れたせいかとても新鮮。ひらがなの刺激。最後の一文、強烈に腑にきた。

  • 時間の感じとか、SNSの書き方とか。一気に読んだ。体のしんどさの感覚とか。うまい。

  • 家から、生殖から離れられるはずのSNSも結局はドロドロしていて、アイデンティティとしてはあまりに脆いという皮肉があるが、それは作中のホモソーシャルなSNSも、実在の俳優を推すのも、結局は生殖と不幸自慢の構図から離れられないからだ。
    いまこそ生殖から立ち去り、虚構とともに死ぬときだ。そう思わされる作品であったが、私の性別が有する身体的疎外の構造や、他人が有している「ままならなさ」のなかで私が有していないものもある(vice versa)ことを自覚すれば、簡単に身体性から離れられないということがいかに苦しいことか、わかった気にはなりたくないと思わされた。

  • ちょっと理解するのが難しい文章。独特の語り口で良くわからない部分もあったけど、全体的に待ったりした雰囲気を醸し出していた。娘のお母さんに対する気持ちの起伏がありありと表現されていた。

  • 母親のことを持て余して、もう逆にこの人が自分の娘だったらいいのにって思うことは、あるあるなんだろうか。
    この作家さんの本って、すっごい上手いケータイ小説って感じ。

  • 環太平洋大学附属図書館の所蔵情報はこちら⇒
    http://library.ipu-japan.ac.jp/Main/Book?book_id=TS00085702

  • 独特な文体だったけど、10ページもすればスラスラと読めるようになった。『推し、燃ゆ』から先に読んだので書き振りの違いに驚いたが、これはこれですごく良い。完全に宇佐美りんにハマった。

  • ごめんなさいだけど、本当に無理だった。久々に本屋に行って本を買って楽しみにしていたのに最悪でした。途中で読むのを辞めたし、今の芥川賞ってこんななのって驚きました。稀に見る無理な文章。蛇にピアスとかのが全然まし。

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著者プロフィール

1999年生まれ。2019年、『かか』で文藝賞を受賞しデビュー。同作は史上最年少で三島由紀夫賞受賞。第二作『推し、燃ゆ』は21年1月、芥川賞を受賞。同作は現在、世界14か国/地域で翻訳が決定している。

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