戦略的思考とは何か 改版 (中公新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  •  日本の国家戦略を語る場合、日本人は難しい状態にあるときに限って「どうにかなるんじゃないか?」と思っていることが多い。
     いつか神風が吹き、勝利する。それが日本の歴史が教えてくれることだからだ。

     私も学校で歴史を学んだ時、元寇の話で神風が二度吹き日本が助かったという話を聴いて、それはすごいなと思った記憶がある。
     だがその可能性を信じ楽観主義に嵌るようでは馬鹿だ。筆者は中国やロシアと日本の軍事バランスを各国の歴史から抽出し、日本はいつの時代であってもアジア民族主義を持ち出せるような力を握ったことはないと打破する。
     その主な理由こそ戦略の欠如にあるというのが筆者の考えです。これは日本の戦略が弱いということではなく、過去の戦争で培われた情報が残っていないということを指します。日本は戦略的白痴になってしまった。
     だから戦略的思考を持ち直すことが必要だ、というのがこの本のはしりです。正直余りにも広く深く明治以降の歴史が述べられている為、一読では把握しきれなかった。近い内に再読したい一冊。

  • 初版は1983年と、今からほぼ40年前ですが、改版され未だに読み継がれる中公新書の名著と呼んでよい1冊です。「戦略的思考」と書名にありますが、本書が扱うのは国家の安全保障、外交戦略がメインです。本書前半は日清戦争から太平洋戦争までの時代を振り返り、戦後の冷戦構造を扱うのは本書後半からです。現代の国際情勢を扱っているわけではないですが、国と国との駆け引き、地政学的な見方とか、現代の国際情勢を理解したり分析したりするときに役立つ視点や考え方が列挙されており、40年も増刷され続けられているのも納得の内容でした。
    「ソ連、中国という膨張主義の大国が大陸に存在しつつも、朝鮮半島と日本海がバッファーとなっているため、陸続きの欧州ほどに危機感が日本では醸成されなかった」、「帝国主義時代の列強国の考え方は、それぞれの国の利益本位の徹底した利己主義で、それがどの程度表面に出てくるかという程度の問題」、「領土についてのロシアの考え方は、一度でもロシア国旗が掲げられた場所は、決して失ってはならないという原則に基づく」、「防衛の問題というのは一朝有事の事であり、たとえ100年間戦争がなくても、自衛官が毎日訓練に励み、万一の場合に備えて戦略を考えるのは当然」、などなど、今の時代にあてはめても説得力のある理論が次々と展開されています。
    著者は外交官として外交の最前線に身を置いておられただけあって、日本人にありがちな”お人好し”な状況分析は皆無ですし、最近よく目にする極端な右傾化、あるいは左傾化もなく、冷徹な外交の現場を経験した人だからこその説得力だと感じました。
    前半部分は近代史の知識が乏しい私にはちょっと難解でしたが、冷戦以降を扱った後半部分などは今の時代に読んでも古さを感じない内容でした。

  • 40年前の本。戦術で勝っても戦略で負ける。戦略的思考を持たない日本。なぜ戦略が重要かを実際の戦争や当時の状況を用いて解説。後半にいくほど現実的で面白く感じる。日本国民が平均的に戦略的思考を働かさなくても生きてきた歴史があるのだろう。感情論に振り回されたりするのもこれが原因か。振り返れば,自分にも戦略的思考は欠けている。個人レベルでも戦略的に考える練習(実践)をしてみよう。個人レベル,組織レベル,国家レベルでのパワーバランス,その状況は結果的に誰を利するかを吟味する思考の癖をつけてみよう。

  • 私生活が忙しかったので少しずつしか読めず、かなり時間がかかってしまった。本書は1983年に書かれたもので、ソ連とアメリカの二極構造を重要視しており、現在の感覚とは少し状況が変わっているように思える。しかし、現在の日本を取り巻く安全保障環境、国内世論でよくある言説に対する反論は今でも通用する議論である。多極化という用語を使いたくなる昨今であるが、結局根本的には二極構造である考えは納得させられた。

  • 大事なことなので最初に書きます。
    右派・中道・左派問わず日本人の必読書です。

    昭和58年出版の改版でNOWのことではないが、国の名前を読み替えるなどすれば十分今でも通じる内容です。
    著者のプロフィールを見ると、岡崎研究所の所長をしていた(故人)。
    岡崎研究所と聞いて、あ~あの岡崎研究所か。
    Wedgeに良く投稿されているので、何度も読んだことがあります。客観性を重視する所長の精神が引き継がれているようで、客観性のない記述を見た記憶がない。
    著者も草葉のかげで喜んでいるでしょうね。
    まあ、客観的なものから導出される主張に対して、異論・反論はあるだろうけど、それは大いに議論を戦わせれば良い。
    https://seisenudoku.seesaa.net/article/472426135.html

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著者プロフィール

岡崎久彦

1930年(昭和5年)、大連に生まれる。1952年、外交官試験合格と同時に東京大学法学部中退、外務省入省。1955年、ケンブリッジ大学経済学部卒業。1982年より外務省調査企画部長、つづいて初代の情報調査局長。サウジアラビア大使、タイ大使を経て、岡崎研究所所長。2014年10月、逝去。著書に『隣の国で考えたこと』(中央公論社、日本エッセイスト・クラブ賞)、『国家と情報』(文藝春秋、サントリー学芸賞)など多数。

「2019年 『戦略的思考とは何か 改版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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