星の子 (朝日文庫) [Kindle]

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.43
  • (29)
  • (103)
  • (123)
  • (27)
  • (5)
本棚登録 : 1022
感想 : 136
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (198ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 新興宗教に嵌まった父と母。姉は反発するが妹の私は従順に受け入れた。周りから引かれ、時に白眼視され、傷ついたりするが、両親の愛情と数少ない友人のフォローで何とかバランスを保ってきた私。だが、成長とともにそれも徐々に限界を迎えつつある。

    特に事件が起こるわけではなく、淡々と日常が描かれていく(日常の中に怖さ・不気味さが潜んでいる)。ラストにも特にオチのようなものはない(ただ、かなり不気味な終わり方ではあった)。流れ星を見ようと寒空の中家族3人で丘に繰り出すが、なかなか3人同時に見ることができない。すっかり身体が冷えきってしまったというのに、流れ星を一緒に見るまで居ようと両親に執拗に粘られる。この執拗さ、宗教へののめり込み方と相通ずるものがある。

    巻末の対談の中で、本作の解説がされていて参考になった。

    こういう淡々とした作品もいいな。

  • 実写映画を先に見て、小説も気になったので
    南先生がほんとデリカシーないしクソなんだけどこういう先生いるいるってなってしまった
    最後の流れ星のやりとりは色々考察できそう

  • 他の人たちから見れば奇妙な家族、下手すれば親戚からをも後ろ指を差されてしまうような家族。ちーちゃんにとってはそれも全て不可抗力。まーちゃんはそれに耐えられなくて自身の選択を強行突破したのかな。宗教って、難しい問題だよね。

  • 自分の病気が原因で新興宗教にのめり込む両親、それに反発する姉、苦言を呈する叔父、通う中学校の同級生や先生との関係、そして宗教団体の人たち。そんな中で主人公が翻弄されてゆく世界。
    なんとなく不穏なモヤモヤした状況を描くのがうまい著者だと思うが、今回は空振りのような気がする。
    特にラストが気に入らない。著者の小説はラストで将来の破滅を予感させるような余韻を残すのが好きだったが、本書ではそれが無い。
    主人公が宗教団体に取り込まれてしまいそうな結末が破滅的といえるかもしれないが。

  • 幼少期に体が弱かった主人公ちひろのために、両親は知り合いに勧められた水を試し、徐々に宗教にハマっていく。

    自分が宗教2世になってしまった場合、どうすればいいのか。子供の頃から違和感を持ち、すぐ親元を離れるか。良し悪しが分からず、ただ親に従うか。

    この物語ではハッキリとは宗教の負の部分には触れられていない。家族は風邪ひとつ引かずに健康体になり、家族仲も見た感じ良好。

    しかし、引っ越しするたびに小さくなる家、食事にも困っている様子であった。それは、仕事がうまくいっていないのか、それとも多額の献金をしているのか。

    今村夏子さん特有のハッキリしない終わり方にも、どのように自分で捉えるのか考えるのが面白い。

  • 両親が信じている宗教。
    それに入ったのは 自分の皮膚炎がきっかけ。
    だけど 姉は その宗教を信じていなくて
    家を飛び出してしまう。

    知り合いでも 宗教にはまってしまった兄弟とは
    連絡をとっていないとか という話を聞いた事がある。

    この本の中でも そうである。

    宗教って いうか 何かを信じるのは良いとは思うけど
    エスカレートしすぎるのは どうかと思うし
    この本では 段々 家が小さくなると 表現されている。
    父親の職場が変わり 収入が下がっていったのだろう。

    そして 子供は 考える余地もなく
    一緒に集会に連れて行かれるので そのまま信者になる。

    この主人公の女の子は 学校に友達もいるし
    お姉さんが いなくなってしまって 親戚付き合いがなくなったという寂しい事もあるけど
    両親や 同じ宗教のメンバーと 楽しい時を過ごしている。

    外から見ると 可哀想とか 思えても
    中にいて幸せならば それもいいのかもしれませんね。

  • リアルだった。
    子供視点、それも宗教を信仰してる家族の子供視点だから自分の生活してる世界が普通と思ってるところがリアルだった。ちひろはいつもお腹を空かせていたり、両親はいつもみどりのジャージを着て外見に気を遣わなかったり、法要で食べるお弁当を楽しみにしていたり、ちひろ視点でかかれる文の中でも信仰のせいで家庭が貧しくなっていく様子が窺えた。ちひろは小さい頃から素直に思った事を言えて、思春期に入っても自分の事や家庭を何も恥ずかしいとは思ってない点が、ちひろがいる世界をちひろ自身が何も疑わなかった事なんだと思った。
    ただ、先生に送ってもらった時の両親をみてから変わり始めてそこから圧倒的に何かが変わるわけでもない所が現実的だった。また、教室で先に怒られるシーンは居た堪れない気持ちになった。好きな人から嫌われている事、人目に晒されて浴びる自分を否定される言葉は中学生の女の子にしてみたら相当なトラウマになりそうだと思った。
    上っ面だけの人気者の先生の性格の悪さを感じて、こんな先生がどこの学校でもいるんじゃないかと思わせた。
    反面、ちひろのまわりのキャラクターは、わりと実直な人が多くて好きだと思った。例えば、なべちゃんはちひろの家庭のこともわかった上で付き合っていて、一口貰った水を不味いって言うところが好きだ。なべちゃんの彼氏の林田くんも両親をみてかっぱだと思ったと素直に謝るところが可愛らしい。ちひろの姉のまーちゃんとちひろが夜中にパンを食べながら話をするシーンも好きだと思った。
    ちひろの両親も決して悪い人ではないし、ちひろの周りの集会にくる子達も悪い人ではない。
    ただ、ちひろの両親は心の拠り所がそこしかなかっただけ。わかっててもやめられるものでもないのだと思った。
    最後のシーンはとても泣けた。見えてるはずの流れ星を見えないフリをして時間を稼ぐ。
    宗教の粗を見えないフリをしている両親とリンクした。
    会報と同じポーズでちーちゃんを抱きしめる両親。
    なにを考えているのだろう

    • 子熊さん
      エンディングの解釈が秀逸です!勉強になりました。
      エンディングの解釈が秀逸です!勉強になりました。
      2021/01/19
  • Kindle Unlimitedで読みました。今話題の宗教2世の子が主人公。主人公自体は全然悪い子じゃなくて辛い。可哀想すぎて泣いてしまったシーンもありました。全体的にはとても重い話なんですが、主人公の両親も悪い人ではなくて、主人公への愛情があり、友人にも優しい子がいる。周りから辛く当たられるから、内部の友達付き合いで救われてるところもあるなど、救いと言うほどのものではないけど、人の優しさが感じられる場面もあり、切なかったです。あまり書きすぎておらず、余白が多くて私好みの小説でした。今村さん読んだことなかったけど、流行作家さんですし、この作品でとても興味出ました。

  • 何となく不憫に感じてしまった

  • あっという間に読み終えました。
    最後は…なんだろ…ちひろと両親の噛み合わなさを
    描いたのか、ちひろにICチップを埋め込む時間を設ける為両親がちひろを引き止めていたのか…
    なんだろ…
    信仰心の始まりは大切にする何かを守るため…
    自分を守るためなのかな…人は1人じゃいきられない、何かにすがりたい生き物。それが信仰心なのかな。

全136件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1980年広島県生まれ。2010年『あたらしい娘』で「太宰治賞」を受賞。『こちらあみ子』と改題し、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で、11年に「三島由紀夫賞」受賞する。17年『あひる』で「河合隼雄物語賞」、『星の子』で「野間文芸新人賞」、19年『むらさきのスカートの女』で「芥川賞」を受賞する。

今村夏子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×