みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」 [Kindle]

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  • 日経コンピュータ取材陣が描く「みずほFGにおけるシステムの刷新と統合に関わる「苦闘」の十九年史」。2020年2月刊行。

    第一勧銀、富士、興銀が(対等な形で)経営統合して2002年に誕生したみずほ銀行。そのみずほ銀行で繰り返された、大規模なシステムトラブル。そして、開発スケジュールを何度も後ろ倒しし「IT業界のサグラダファミリア」と揶揄されながら、経営統合が発表されて19年にしてやっと実現した「勘定系システム」の刷新と統合(新勘定系システムの名前は「MINORI」)。「三十五万人月という銀行のシステム開発プロジェクトとしては前代未聞の労力と、四千億円台半ばという巨費」(東京スカイツリー7本分)が投じられたという。

    本書は、「みずほFGの経営トップは勘定系システムの刷新を現場任せにして、情報システムのことを理解せず、必要な資金や人員を投入する決断ができなかった。情報システムの開発に際して業務部門が情報システム部門に全面的に協力したり、関係各所の利害を調整したりできるようリーダーシップを発揮することも怠った。経営陣のIT軽視、IT理解不足が、大規模システム障害の根本的な原因だった」と言い切る。まあ、それはそうなんだろうなあ。

    気がつけば、世の中ITシステムなしでは何も出来なくなってしまっている。あらゆる組織にとってITシステムの出来/不出来や安定稼働が致命的に重要にであることには、もはや疑問を差し挟む余地すらない。なので、経営陣の理解もさることながら、ITシステム担当部門にこそエース級の人材を当てないと、ホントダメだな。「新サービスの投入や法制度対応など部分的な修正を繰り返したことで、システム内部の構造を把握しきれない「ブラックボックス」に陥ってい」るという高リスク漏れず大抵の組織が抱えているはず。みずほのケース、全く他人事ではない。

    本書には、経営統合を巡って迷走するシステム担当者達の姿や、2度にわたる大規模システムトラブル対応の修羅場が、臨場感をもって描かれている。読んでいて肝を冷やした。

    なお本書、(俺たちには失敗することが見えていたし、ちゃんと警鐘を鳴らしたじゃないか的な)ジャーナリズムの傲慢さのような部分がちょっと鼻についた。もう少し当事者目線で苦闘する姿を描いた方が、読み物としては面白いのだが…。

    それと、本書はシステムベンダー側の問題(多層下請け構造になっていて高コスト・低品質)には全く触れていないが、銀行のシステムはグループ子会社が中心となってITシステムの開発・運用を行うので、一般企業のシステム開発とは状況が異なるのかな? この辺りはよくわからなかった。

  • 後輩から「読んでないんですか?!」とか言われて、いつか読もうと思っていたものを、この度のみずほ銀行3度目の大障害(MINORI の最初の大規模障害)を機に読んでみる。MINORI リリース直後の高揚した雰囲気を伝える第一部と、東日本大震災時の大トラブルを扱った第二部、統合直後の障害を扱った第三部から成る。

    ここ20年ほどのコンピューター・システムの進化の一側面は、「障害を起こさないために堅牢性を高める。障害は起きない」という思想から、「障害は起きる。障害が起きても大丈夫な復元力を備える」という思想への転換であったろう。障害が起きたときに、サービスへの影響範囲・影響量を極小化するために、システムはどう動くべきで、人間は何をすべきかという運用の磨き込みが、高度な IT 化社会を支えていると言える。MINORI 構築という大事業に手一杯になるあまり、この堅牢性から復元力へという流れから一人取り残されてしまったのが、みずほ銀行だという見方はできないだろうか。

  • 「IT業界のサグラダ・ファミリア」という言葉は聞いたことがあったし、IT業界では有名な事例だったため、一冊読んでおきたいと思って手に取った。

    大前提としてこの失敗の背景にあるのは、
    ・銀行統廃合のたびにシステムはどちらかに片寄せしてきた
    ・経営層が初めて実施するシステム刷新を甘く見ていた
    ・システム部門が縦割りされていた
    ・枝葉末節の機能の修正を繰り返すことで、根幹となる処理部分がブラックボックス化していた。
    という部分にあると感じた。

    また、こういった部分に関して解決が出来なかった遠因としては銀行同士の政治的な利害関係にあると思われ、システムとは関係がない経営部分の判断に現場のシステム担当がふりまわされる、というあるあるが発生したというのが大きそうだ。

    特にシステムを刷新する場合、オペレーション部分を根本から見直した上でシステムを設計するというのが肝であるにも関わらず、これを強引に形成していく役割を担えた人材がいなかった。
    これは、異なるセクションを横断して改革を推進する等広い意味で、プロジェクト失敗あるあるだろう。

    理想的な形では、このような会社間をまたぐようなプロジェクトの場合、3社の社長がPMにかなり強い権限を与えない限りPMが3社それぞれに忖度し振り回される形になるが、それがまさに実現してしまった形と言える。

    実際じゃあどうすればうまくいったの?というところだが、会社のトップの誰か一人でもIT系プロジェクトの炎上事例に通じていれば、こうならなかったかもしれない。

  • 2021年現在、ATMからキャッシュカードを取り出せない、予定振込が実行されないなど、みずほシステムトラブルのニュースは定期的に繰り返される。そのたびに読みたくなるのが本書。

    2000年に第一勧業銀行をはじめとする3銀行が合併し、みずほ銀行が誕生する。そのときに一番の問題と考えられたのが、銀行の勘定系システム統合だ。日本全国の支店、ATMを管理するシステムゆえに長期間の停止、トラブルは許されない。計画では2002年に新勘定系システムが開発されて、運用開始するはずだったが、トラブルの連続で遅れに遅れて2019年にようやく完成。費やされたコストは4000億円を超える。

    本書は、雑誌「日経コンピュータ」スタッフがそんなシステム統合19年史を追いかけた取材記録。前半はみずほのシステム完成への努力と苦労を称え、後半は2002年と2011年の大トラブルを批判するという賛否2部構成。

    当然、注目はなぜそんなにトラブルが起きるのか、どうして19年もかかったのかというシステムの負の部分。責任者不在、3銀行の足の引っ張り合い、利益を生まないシステムコストへのうしろめたさ、など要因は複雑だ。そして、どの理由も日本巨大組織なら、なるほどと思うことばかり。日本巨大組織の「あるある」事例の詰め合わせだ。

  • 本来は、IT統合による強化が目的だった三行合併。第一勧銀、富士銀、興銀及び、紐付くシステムパートナーの対立・主導権争いによる、初期システム構築の過ちが、およそ20年弱の時間とスカイツリー7本分のコストと言うとてつもない代償を払う事となる。 私自身のメイン口座も「みずほ」で、ユーザーとして体験した度重なる大規模障害の記憶も風化されつつある処、平成を振り返る上で、語り継ぐべき実録史の傑作と言うべき内容。

  • ・メチャメチャ面白い。ニュースで「みずほ銀行のATMがトラブった」みたいなのは見聞きしてたけど、具体的な内容が分かると、とてつもなく興味深い。
    ・どれだけシステムの規模が大きくても、結局、使ってるのも作ってるのも人間なので、原因は全て人に起因する。
    ・「バッチ処理が完了しなかった時の動きを誰も知らなかった」「システムの処理限界をテストしていなかった」とか、自分の仕事と重ね合わせて、背筋が凍るような話の連続で、読んでて怖くなった。

  • 図書館から借りた本
    1999年の3行経営統合発表から2019年の「MINORI」リリースまでの記録
    といったところ。

    元金融系システムエンジニアとしては、非常に興味がある本だった。
    読む限り、2002年春と2011年の東日本大震災後のシステム障害は「人災」だと思う。
    ITは万能じゃない。
    いつも想定通りに動かない。
    が、想定通りに動かなかったときにどうするかが大事。
    自分も、運用をやってた頃は、翌夜中に会社に呼び出されたっけな。
    みずほ銀行の場合、システムが古くて巨大すぎて誰も把握できていなかったと言ったところか。

    「MINORI」の開発もリリースも容易ではなかったことがわかる。
    ただ、この作業に伴い新たにキャリアを作った行員も少なくなかろう。
    それはいい資産。

    が、2021年に入ってからまたシステム障害が頻発する。
    そのあたりは別な本に記録されているようなので、いずれそっちも読んでみたい。

  • この本を書いた時点では成功裏に終わったことになっていて、現在の時点では社長辞任に追い込まれてしまっている。システムは長期間運用できる仕組みであるべきこと、様々なパターンを経験して初めて成功といえる、ということを痛感させられる一冊。

  • 今となっては、”こんな時代も、あったのね・・・”と言いたくなってまうが、みずほ銀行のシステムも終わったつ直後は本書のような本が出るほどに成功ムードが漂っていたんだよね・・・。

    2022年2月現在では、残念ながらポンコツシステムの代表のような扱いがされてしまっているが、ベンダーはどこの銀行も大体一緒なわけで、おそらく発注側(この場合はみずほ側)に問題があるんだろう。いずれ続編が出たりしないかしら。

  • みずほのドタバタに関しては仕事の関係でずっと横目では見てきた。最近、近い業種で仕事をし始めたし、今関わってる仕事のヒントにもなるかなと思って読んでみた。
    2002年、2011年の2回の大事故を乗り越えて会社の体質を改善して2019年7月に勘定系システムが無事完了したことを称えるプロジェクトX的な内容だった。
    2020年4月に発売された本なのでそんな感じだけど、実際は2021年にも重大問題が何回も発生している状況であり、その後の分析が知りたいので日経コンピュータの記事を読んでみます。

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