食の歴史――人類はこれまで何を食べてきたのか [Kindle]

  • プレジデント社
3.29
  • (1)
  • (5)
  • (9)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 100
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (343ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 古代からの人類の食の歴史を紐解くと共に、悲観的な近未来像を描き出し、未来を変えるために我々が今やるべきことを提言した書。

    著者は、二〇五〇年には九〇億人に達するであろう人類を地球は養えるのか、という食糧需給の根本問題と共に、「食べることは、これからも会話、創造、反逆、社会的な制御の場であり続けるのか。それとも、われわれはいたるところで静かに加工食品を個食する、自己の殻に閉じこもった他者と無関心なナルシストになるのか。」と食文化の未来を問うている。

    そして、伝統的な食文化を破壊した諸悪の根源は、生産性向上を図るべく大衆に「食卓で無駄な時間をすごすべきではない」と訴えてファストフードを生み出したアメリカ型の資本主義にあると看破。今日「世界各国の中間層はアメリカ型の暮らしぶりを模倣し」、個食の文化は世界中に広がりつつある、という。

    料理を囲む家族団欒が消失し、「孤独で自己愛に満ち、必然的に他者と争いを起こす(あるいはそうならないために引きこもる)ノマド」と化した人類は、孤独を癒すために糖分を過剰摂取するようになる。健康問題が社会問題化すると食生活をAIに監視される超監視型社会、「長寿を約束する独裁者に身を委ねる」沈黙の監視型社会が到来する、という恐ろしい未来の出現まで予想している。

    著者は、「民主主義にとって、より多くのモノを売らんとして、資本主義が人々を沈黙に追い込むのを放置すること以上に危険な行為はない」と言い、われわれの食生活、食糧生産の方式、議論の形態を見直すべき、と警鐘を鳴らす。

    我々が今後なすべきことのポイントは、健全な食生活を取り戻すこと、そして先進国では肉食を控え、植物性のタンパク質の摂取を心がけること(「今日、西側諸国ではタンパク質の摂取量の比率は、動物性が三分の二、植物性が三分の一だが、二〇五〇年には動物性が五分の四になるように変革しなければならない」)だという。

    グローバルな食品メーカーに対する規制強化、少肉多菜、少糖、地産地消、ゆっくり食べる、自分たちの食を知る、食育、節食(断食)、会話の弾む食卓という喜びを見出す、等々も提言している。


    新型コロナウイルスの流行で会食の機会が激減してしまい、ながら飯、ジャンクフードが横行する昨今。家籠りしていてもネットを駆使すればそれほどの不便は感じないし、加工食品をツマミにしたオンライン飲み会にもそれなりに満足できる。集団感染が起こりやすい夜の街にわざわざ繰り出す人達の気が知れないし迷惑、と批判的に考えていたのだが、このような生活を常態化させるのは危険なのだろうか。本書を読んで、食を囲む日常的なコミュニケーションの大切さについて、改めて考えさせられた。

    あるべき食生活について言えば、自分は(厳密なベジタリアンではないが)牛肉や豚肉、鶏肉を基本的に食べないので、その意味で未来志向の食生活を既に実践していると言えるのかな。

    本書、大量の知識が詰め込まれていて盛り沢山過ぎるためか、全体の流れは今一つ。ストーリー的にはやや物足りなさを感じた。食糧需給問題の解決策についても目新しさはなかったし。なので星三つかな。

  • 三省堂でずっと気になっていて、図書館にあるとのことだったので数か月くらい待つのを覚悟で予約したら結構早く手元に届いた。

    食の歴史ということで、有史以来の人類が何を食べていたいのか、また、食事とはそもそもどのような役割を果たしていたのかということを、人類の生物としての進化や、社会・コミュニティの発展との関連で議論していくといった内容。

    若干フランス贔屓、アメリカ落としな感じの内容ではあるが、まあまあ概ね面白く読める内容であった。この人あんまり食の専門家でもなさそうだが、内容は正しいのだろうかという一握の不安はあるがまあそれは置いておく。

    何を食べるのかということから、飽食になるにつれて、だれと、いつ、どのように食べるのかということが重要になるといったようなことに対するこの人の考えが述べられるといった感じですね。面白かったです。

  • つまらなかった

  • 『絶滅危惧職』と内容は結構似ているが、こちらは特定の食物などに言及しているわけではなく、歴史から現代、未来に至るまでの幅広い話がある。

    特にここ200年くらいの近代から急激にフードシステムが変わってきたこと(人口増加や地政学の影響が大きい)や、食べることに対する意識の変化がとても興味深いと思う(自分が今その時代に生きているという点も含めて)。そして今はそれを見直したりする揺り戻しの時代に突入するか、まださらに今の延長線上の世界線を進むかの分水嶺だと思う。

    第11章だけでも読むと自分の食生活やフードシステムについて再考するきっかけになるかもしれない。

  • 人間は食べなければ、生きていけない。
    そして、食べることそのものにも、楽しみや期待を感じる。

    そんな「食」について、人類史に沿って書かれた本だということで、読んでみることにしました。

    本書は全九章で構成されています。
    第一章、第二章は人類の誕生から紀元前までの期間について。

    第三章、第四章は、紀元後から18世紀までの、世界各地域の食事事情について、ヨーロッパを中心に書かれています。

    第五章、第六章はそれぞれ、19世紀、20世紀の食事について。
    アメリカの食文化、そして巨大食品企業への辛口な批評、フランス食文化への高評価は、著者がフランス人であることを踏まえて読む必要があるかな、と思いました。

    第七章は、現在の食に関する問題について。
    飢餓で苦しむ人がいるいっぽうで、大量の食料が廃棄されていること。
    一部の食品の過剰な摂食により、自らの命を縮める可能性があること。
    さらには食料供給のために、地球環境が大きく、損なわれていること。
    これらの問題が示されている中で、対策がなかなか進んでいない状況に、暗い気持ちになりました。

    第八章は、食の未来について。
    第九章は、食事の持つコミュニケーションの側面と、人々の自由の行く末について。
    増加する人口と、それに反するかのように減少する、健全な食料の供給。
    正しい知識を吸収して、少しでも悪い影響を減らせるようにしたいと思いました。

    乱暴にまとめると、前半は世界各国の食事に関する記録やエピソード、後半は著者の視点での、現在そして未来の、食に関する問題と改善策の提言、ということになるでしょうか。
    著者の知識量には驚くばかりですね。

    読む前は、前半の歴史の部分に興味があったのですが、後半部分の記述が、より印象に残りました。
    食の問題については、食品メーカーが提示する情報を鵜呑みにしてはいけないと、学ばせていただきました。

    食について網羅的な知識を得たい人、知識を整理したい人は、読んで損はない、一冊だと思います。

    同じ著者の本;
    『アタリ文明論講義: 未来は予測できるか』
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/4480097511

  • 食の歴史の変遷を徹底的に調べらげられていて、過去・現代・未来の食がこれでもかというくらいの調査量で論じられている素晴らしい本。ファクトの物量が多く、何度か読み直したい。

    詳細は下記
    https://note.com/t06901ky/n/ndd743f7388cc

  • 人類がこれまで食べきた物と、どのように食べてきたかを紹介した本。対象範囲は1,000万年前から現代まで。当然、配分は現代に近くなるにつれて増えてくる。本書は96%まで本文がある。現代に入るのが58%からであり、本当に著者が書きたいのは歴史ではなく、現在の食文化に対する警鐘だと思われる。それからフランスは特別。

    おそらく著者にとって人が何を食べてきたかは重要ではない。重要視しているのは会食である。人にとっての食事はエネルギー補給だけでなく、コミュニケーションツールでもある。権力者たちは食事を使って権力を拡大し、維持してきた。家庭でも食事の重要性は変わらない。だから現代のような個人で行う「ながら食べ」はコミュニケーションの機会が失われ、繋がりが断たれるのでよくないというわけだ。

    新型コロナが蔓延する今だからこそ、本書を読むとニヤニヤできる。感染に繋がるから人と会うなと言われているのに、なぜ政治家たちは懲りずに会食を続けるのか。それは会食こそが世界中で何千年間と続けられてきた、支配するための第一手段であるからだ。この最も原始的で強力な武器を今になって手放すことなど、権力者ほど難しいに決まっている。

  • ふむ

  • 増え続ける世界人口と生活モデルを維持するためには、食糧生産量を70%引き上げなければならない。

    昆虫食や代用肉が続々と登場し
    2030年には魚市場に占める天然物の割合は3分の1に
    2050年には世界人口の3分の1は菜食主義者に
    という未来を予見しているが、

    現在の菜食主義者は肉を忌避している印象が強いが「自らの意思によってあるいは仕方なく」菜食主義者になるという考え方は新鮮だった。

    富裕層は肉や魚を食べ、貧困層は昆虫食や代用肉を仕方なく食べる世の中になるのかもしれないと想像した。

全10件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

ジャック・アタリ(Jaques Attali)
1943年アルジェリア生まれ。パリ理工科学校を卒業、1981年大統領特別顧問、1991年欧州復興開発銀行初代総裁。1998年に発展途上国支援のNPOを創設。邦訳著書に『アンチ・エコノミクス』『ノイズ』『カニバリスムの秩序』『21世紀の歴史』『1492 西欧文明の世界支配』など多数。

「2022年 『時間の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジャック・アタリの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
岸見 一郎
マシュー・サイド
マシュー・サイド
シーナ・アイエン...
マルコム・グラッ...
稲盛和夫
リチャード P....
クリス・アンダー...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×