エンド・オブ・ライフ (集英社インターナショナル) [Kindle]

  • 集英社 (2020年2月10日発売)
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  • 本 ・電子書籍 (262ページ)

感想・レビュー・書評

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  • 印象に残った章は、「二〇一三年 今から六年前のこと」である。
    患者さんに同行し「潮干狩り」にいくことがとても印象的だった。それは、患者さんが末期がんの女性であるからだ。末期がんの患者さんはホスピスなどで余生を過ごすことが一般的だと考えていた。渡辺西賀茂診療所の患者たちの、最後の希望を叶えるボランティアがとても素晴らしい取り組みであり、実現することがとても難しいことからどのように実際にボランティアが実施されているのかとても興味を持ちながら読み進めることができた。
    当日の体調が優れなくても患者さんとご家族が覚悟を決めて、潮干狩りに踏み切っている姿や看護師さんの酸素ボンベの減りを予測し酸素ボンベを調達している姿などがみられ、すべては患者さん本人とそのご家族のために、看護されていたと思った。

  • 私の父は言う。人はただ地球の物質から造られ、地球の物質に還っていくだけだと。

    これも父の言葉。人生は芝居だと。人により主役を演じたり、裏方のプロデューサーになったりもする。何らかの役割を与えられて泡沫の人生を演じるのだと。

  • 入院中、読みました。
    大したことない入院でしたが、弱っていたのは確かです。
    しっかり生きなくちゃと空回りしている自覚も、ちょっぴりありました。
    半生を、信じたかった人に全否定された時期でもあります。
    そんなときだったから、本当は、このタイトルの本を読まないほうがいいのかもとも、思っていました。
    でも読んじゃった。
    読んでよかったです。
    地続きの自分の人生を、ここからも丁寧に紡ごうと思えました。歩いた土の中に、子どもたちが受けとれる何かを一粒だけでも贈れるように。
    誰に否定されても、自分まで自分を否定することがないように。受け入れて、楽しく、気持ちよく、時間を重ねていこうと思います。
    死について語られているけれど、生について問いかけてくる本でした。

  • 看取りに携わる医師、看護師の終末期の人への関わり、終末期の人の心情が書かれたノンフィクション。何人かの余命を言い渡された人の亡くなるまでの様子がズシンと心にくる。余命を宣告された人のほとんどが健康な時は「受け入れられる」と断念していても受け入れられず苦悩するという。自分の命の時間がわかってしまった時、その人の本質が出てくるんだろう。在宅で過ごすことができて連絡すれば30分で来てくれる、そんな訪問医療。これからどんどん普及してほしい。というか必要な時代になってくる、間違いなく。

  • 人が死を受け入れるのには段階が
    あるのだそう。まずは否認して、
    怒って、抑鬱になって、、、。

    私にとっては、今後親が死を迎えるのが
    身近なテーマと思われる。

    近くで見守る上で、
    どのようにサポートできるだろうか。
    どんな環境であれ、
    元気に死を迎えられるように、
    支えてあげたい。

  •  
    ── 佐々 涼子《エンド・オブ・ライフ 20200210 集英社インターナショナル》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/B08746HKK1
     
     在宅看取りの光と影を書いたノンフィクションです。
     
    ── 長尾 和宏《痛い在宅医 20171221 ブックマン社》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4893088947
     
    (20240910)
     
     在宅医の立場から書いた拙著とはまた違い、本書は、多くの人に丁寧
    に取材をし、人生の最期の在り方を俯瞰的に問うた力作でした。この本
    以外にも、東日本大震災後の石巻の製紙工場を取材した本。
     
    ── 佐々 涼子《紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 20140620 早川書房》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4152094605
     
    (20240910)
     
    ── 佐々 涼子《エンジェルフライト 国際霊柩送還士 20141120 集英社》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4087452522
    米倉 涼子・主演で話題となったドラマ原作

    ♀Sassa, Ryouko 作家 196810220 神奈川 横浜 20240901 56 /悪性脳腫瘍
    /ノンフィクション/籍=渡辺 有美子
     
     202211‥ 激しい頭痛を覚え、病院で検査を受けたところ、悪性脳腫瘍
    の一つである「神経膠種」(別名グリオーマ)と診断されました。脳腫
    瘍は10万人あたり10~12人に発症、さらに神経膠種となると10万人に一
    人いわれる大変稀な病気で、その原因はいまだ解明されていません。
     40~50代に多く発症することがわかっています。
     
     脳や髄膜から発生した原発性のものと、肺がんや乳がんなどからの転
    移性のものとの大きく二つに分けられます。他のがんのようにステージ
    分類はせずに、悪性度を表すグレードで表現されます。基本的にグレー
    ド1であれば良性腫瘍、グレード2~4 は悪性腫瘍と判断されます。良性
    腫瘍の場合は、ゆっくり増殖しますが、悪性腫瘍の場合は、増殖のスピ
    ードが非常に速いです。また、腫瘍ができた場所によって、その症状は
    多様です。佐々さんのように激しい頭痛を訴える人もいれば、めまい、
    嘔吐、手足の感覚障害、呂律が回らないなどの言語障害、記憶障害など
    が起こる場合もあります。

    このような症状が続く場合は、すぐに脳神経外科などでMRI検査を受け
    てください。
    佐々さんが昨年11月に出版されたエッセイ&ルポルタージュ集
    ── 佐々 涼子《夜明けを待つ 202311‥ 集英社インターナショナル》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/

    を読みました。「あとがき」では、こんなことを書かれています。
    >>
    「五五歳の私は、人よりだいぶ短い生涯の幕を、間もなく閉じることに
    なる。(中略)取材をしていた時には、まだピンとこなかった。だが、
    その時わからなかったことも、今ならわかる。私たちは、その瞬間を生
    き、輝き、全力で愉しむのだ。そして満足をして帰っていく。(中略)
    だから、今日は私も次の約束をせず、こう言って別れることにしよう。
    『ああ、楽しかった』と」
    <<

    多くの死を見つめてきた作家が最期に辿り着いた境地に、心からの共
    感を覚えました(長尾 和宏)。
     
    (20240910)

  • 人生は長さよりも内容だというのは、余命わずかな末期だけを考えても同じこと。ただ数日延命することよりも、少しでも幸せ寄りで終わりたい。
    「病気はくじ引き。何をしたか、しなかったかではない」。あ〜、私はどんなふうに終わるんだろ。これから見送ることになる人、そして見送られることになる自分… 漠然と考えているよりも現実は大変そうだと思いました。
    在宅医療の良さと対照的に、ちょこっと出てくるのが作者のお母さんの入院先のひどさ。えー、怖い!ひどい!鬼!  でも私はやっぱり家族に負担をかけるより、病院でお仕事として扱われたい。

  • みんなができるわけではないが、家で家族に看取られながら旅立つことができるのは、きっと幸せだろうと思う
    どれくらいの人がそんな旅立ちができるのだろうか
    自分はどうだろう?
    決められるものなら自分の最後は自分で選びたいと思う

  • 住宅ローンの団体信用生命保険で、死について健康について考えることが多くなり、この本を手にした。

    ガンは最後の1週間前までは動けることを知り、3階建て住宅に対する悲観論が消えた。

    逆に、認知症・ALS・胃ろう等で長期看護を受けると、在宅は大変、病院は悲惨、という現実を知った。
    病院は忙しさのあまりあまり見てもらえず、唇は黄色い痰で覆われ、目尻には目やにが溜まる、鼻からは鼻血が出ている。
    認知症・ALS・胃ろう等は意思疎通はできないが、たいていの場合、感情が残っていて凌辱され続けている。(顔がひきつっている)

    ガンになると、民間療法など何かを信じるというより、なんとか信じようと懸命になっている場合がある。

    抗がん剤によって肝不全になり、ひどいかゆみに襲われることがある。
    痛みは緩和する薬があるが、かゆみを緩和する薬はない

    医療の進歩で、助かるための選択肢が増えたが、反面可能性にすがることで選択することの過酷さが増している。家族や金銭の協力により、家を失ったり、離婚したりするケースがある。

    病気は運命的な部分が大きい。
    どれだけ努力をしても、個人の力でどうすることもできない、目に見えない潮目はある。
    私たちはそれでも、そんな海をひたすら泳いでいる。

    医療というのは、究極のところ、すべて延命措置。
    どこまでやるか、やめるかは、医師次第。

    近づく死を前に、その恐怖で何もできなくなるのが普通。
    主人公は、病人だからベッドに寝て、病院食を食べるのではなく、ディズニーシーに行き、キャンプに行き、寝袋で寝た。小学生のように今を楽しみ尽くした。

    危ないから不便だから、と自ら行動を制限しがちだが、死の1週間前までは階段の上り下りだってできる。

    死が遠ざけられて、子供達が死を学ぶ機会を逃している。

    出棺のあいさつでは、拍手が鳴りやまなかった。
    心をこめて、仕事し、遊んだ人間は惜しまれる。

    死んでる様に生きていては人生の無駄使いだなと痛感した。

  • 人は生きてきたように死ぬ。老人ホームの施設長さんにも言われた言葉だが、この本でも在宅ケアチームの人達が言っている。看取った人との時間を思い出し、噛み締める。
    もう一つ、死ぬ人は自分にも周りの人にも一番良い時間を選んで亡くなる、とあった。そうなのかもな、とうなづく。父は一緒に厳しい時間を過ごした後、私がちょっと自宅に帰った間に、もういいよ、先に行くわ、という感じで穏やかに一人で旅立った。母は私が来るのを待ちかねたように亡くなった。それぞれに合った逝き方だったと思う。
    奥深い本だ。手元に置いて何度も読み返すと良いかもしれない。

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著者プロフィール

ノンフィクション作家。著書に『エンジェルフライト』『紙つなげ!』など。

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