Winny 天才プログラマー金子勇との7年半 (NextPublishing) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • Winny、報道当時は怪しいソフトを開発した技術者という印象でしかなかったが、同世代で実は天才プログラマー、この裁判のせいで日本のIT技術が遅れてしまったことに驚愕。弁護団の壇さんが著者とのことで、映画を観る前に予習として手に取った。
    IT専門用語や法律用語について詳しい解説付き、壇弁護士の親しみやすい語り口で物語が進んでゆく。2ちゃんねる開設者ひろゆき氏との交流も笑えた。
    著作権違反幇助としての意図、開発者の責任について問われる裁判。メディア側の情報偏重体質はずっと変わらないのか。
    警察側の執拗な取り調べと有罪にどうしてもしたい検察側とそれに対峙する弁護側との攻防に、疑うことを知らない人柄の金子氏のプログラム愛が織り交ぜられている。7年半も裁判が長引くなんて、気が遠くなる時間。無罪を勝ち取って復帰できた時間の短さに悔しい以外に何とも言いようがない。
    被告人「は」無罪である。被告人「を」有罪とする。被告の後に続く助詞で無罪か有罪かわかるという。

    映画では、学童期の金子氏が電器屋でマイコンを触っている場面、2ちゃんねるの支援者の応援メッセージの部分や、姉との写真を眺める場面、最後の場面は胸を打たれた。復習としてもう一度読もうと思う。

  • 「Winny事件」弁護団の事務局長をしていた著者が、事件の顛末を綴ったノンフィクション小説。

    当時、この事件が世間を賑わせたことを思い出す。確か、創作者の金子氏は悪者扱いだったよなあ。

    裁判では、著作権侵害を幇助する意図があったのかどうかが争点になったようだが、高裁、最高裁で最終的に勝てた要因としては、警察捜査の杜撰さが暴かれたこともさることながら、金子氏が「そこに山があったから登ったんだ」的な純粋な「プログラム馬鹿」だったことが大きかったようだ。勝訴確定後、金子氏が研究活動に復帰できた期間はたった半年だけだったという(その後病気で亡くなっている)。天才プログラマーを7年半もの間裁判に拘束してしまったことの損失は計り知れないな。

    著者は、「日本の刑事司法はテレビで見る世界とは全く異なった、とてもとてもアンフェアな世界である。裁判所は「令状の自動販売機」とも呼ばれるくらいに、簡単に逮捕・勾留を認めている。警察・検察が請求すれば、まず 23日間の身柄拘束は避けられない」とか、「裁判所は相当不合理な内容の自白調書でも自ら認めたから信用できるという理由で、自白の信用性を認めて有罪にする。多くのえん罪は、このような日本の悪しき取り調べが生んだのである」とか、裁判所の訴訟指揮が(まるでできレースのように)思いきり検察寄りであるなど、日本の刑事司法の問題点を痛烈に批判している。こんなことが未だに行われているのかな? 思うに、関係者間に、本当に悪いやつを罰するためには、多少行きすぎた捜査やバイアスのかかった司法判断があってもやむを得ない、というような暗黙の了解があるんじゃないかな。功利主義的というか、全体主義的というか。

    技術者のために闘う、弁護士としての著者の熱い思いが伝わってくる、良書だった。

  • プログラム的なところは難しくて入ってこなかったけど、裁判のやりとりや金子さんとのやり取りが軽快な描き口で面白かった。難しい話はわからないけど、もっと早く活用できるはずだった技術がその機会を失われてしまったなら非常に残念。そして金子さんも。RIP。
    僕たちはもっと知らなきゃ行けない、こういう歴史。

  • 技術的なことは難しかったが読み物としてとても面白かった。
    Winny事件当時は中学生だったのでウイルス感染の危険のあるソフト、というようなぼんやりとした記憶しかなかったが、実際のところは日本がIT後進国になりつつある要因の一つであったかもしれないと思うととても残念。
    相手方の警察官や検事などが実名で書かれていることに驚いたし著者である壇弁護士の強い思いを感じた。
    日本の、簡単に容疑者を勾留できてしまう司法制度も怖いと思った。
    検察警察の闇も。
    映画も観てみたくなった。

  • 映画で話題になっていたので、PrimeReadingで読めたのは嬉しい。

    Winnyが話題になっていた当時、IT音痴が極まっている私の頭では、WinnyにアップロードされたウイルスとWinnyが混同されていたが、裏でこんな理不尽な裁判があったとは。

    概ね治安が良いので、日本の警察組織や司法機関に文句はは出ないが、こういう7年半無駄な時間を使い、誰も幸せにならない結果しか生まない制度の見直しは必要だと思いました。

  • Winnyの開発に関連して逮捕と刑事告訴された金子勇を担当された弁護士が、弁護活動と金子さんの人となりを記したのが本書だ。

    語り口が軽いうえに、弁護の難しい部分をわかりやすく書いてあるため短時間で読むことが出来る。しかし実際の裁判は7年半もかかっており、本書の裏側では多くの人が膨大な時間を投入したことを忘れてはならない。

    刑事被告人の弁護士という観点から書かれているため、当然のことながら検察側や裁判所への目線は厳しいものがあり、そこは割り引かなければならない。
    しかしそれでも、同時代にこのような事件があったこと、裁判の進め方が工学的な知見を十分に反映せずに進められたということは、驚くべきことだと感じる。

  • 「私も無罪になったらうれしいんですが、私が有罪になって世の中が良くなるのなら、それを最優先にしてください。遠慮無く有罪にしてもらってよいですから」
    そんなセリフも言ってしまう、純朴な被告人と、一度動き出したらメンツをかけて引くに引けない検察と警察。
    技術の話と思いきや、時代遅れで自分で理性的に考えることを放棄した警察や検察や裁判所といった官僚組織に対する強い批判が多く、共感できる部分も多い。
    金子氏と著書の壇氏の人柄が伝わってくる良書。

  • Winnyって使ったこと無いけど、有名でしたね。作成したプログラマーが逮捕され、夭折したのは知っていましたが、これは彼の弁護を頑張った弁護士さんが著者。金子氏の素顔が丹念に描かれているけど、これまたある意味ステレオタイプ的な世間知らずの天才さんで笑えたり。裁判では地裁で無罪、高裁で逆転有罪、最高裁で無罪。高裁って時々頭おかしいことするよなと。
    しかしプラットフォームの開発者を逮捕しちゃうなら、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツはどうなるのよ、という話。

  • 文章力は正直いまいち。
    映画見た方がおもしろいのかも。

    金子さんとホリエモンの立件は本当に日本社会の汚点だと思う。この才能を活かせなかったのが、今の停滞を生んでいる。
    残念でならない。

  • 天才の足を引っ張る検察のやり口か腹立たしい。
    金子の天才ぶりが面白い。

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