文學界 (2020年6月号)

  • 文藝春秋
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  • / ISBN・EAN: 4910077070607

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  • 第165回芥川賞候補「赤い砂を蹴る」
    母を亡くした千夏が母の友人であり、日系二世の芽衣子と共に、故郷のブラジルへと旅する物語。
    たくさんの亡くなった人の思い出が語られる。
    千夏の母親、幼くして亡くなった弟、芽衣子のアル中の夫、その夫の母親。
    娘と母親との和解の物語、いや死者との和解の物語?

    「結局、誰も助けられなかった。」
    「だから、それは。」
    わかってるんだけどね、芽衣子さんがもどかしげな声を出す。

    太宰の孫ということで今回の芥川賞の話題枠、ということではなく、かなりの筆力。もともと劇団主催者なのね。
    芥川賞予想○対抗

    松浦理英子と濱野ちひろの対談「動物と人間は愛しあえるか?」がぶっ飛んでいた。トランスピーシーズって!!

  • ○石原燃「赤い砂を蹴る」
    「でも、あの人はあの人なりに、ユリのことのかわいがってたのよ。」
    「しょうがないよ。子どもには親を嫌う権利があるんだから。」

    小学生の頃に弟が死に、最近母親が癌で死んでしまった千夏と、夫と義母が死んだ芽衣子。2人はそれぞれに異なる「家族」の中で生きてきた。
    そんな2人が芽衣子の故郷であるブラジルの共同体ヤマに戻ることで物語は進む。
    故郷に戻った先では芽衣子の辛い過去に千夏のそれも重なっていく。出来事は違えど抱いた感情には似通ったものがあるのではないか。そう感じさせる物語だがしかし、千夏は母親に自身の苦しみを重ねる芽衣子を拒否したりもする。
    物語中盤、ヤマで芽衣子の兄弟が亡くなり、そのことで物語は更に2人を結び付けることへと繋がる。そして物語は千夏の母の死のシーンに戻るが、このシーンは圧巻。静かで、しかし画家であり自由に生きた千夏の母親の力強さを感じさせる。そしてまた、親子というものがどういうものかを考えさせられた。
    13歳で両親が離婚し、様々な場所を転々としていた自身の母親に対しての「嫌い」という端的な感情。それが段々と変容せざるを得ない環境に差し掛かってきていることを感じる。親子とは何か、改めて考えたい。

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