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本 ・雑誌 / ISBN・EAN: 4910077070607
感想・レビュー・書評
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連載横尾忠則「原郷の森」創作石原燃「赤い砂を蹴る」劇作家の方のデビュー小説とな。ふつふつと熱いお話。
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○石原燃「赤い砂を蹴る」
「でも、あの人はあの人なりに、ユリのことのかわいがってたのよ。」
「しょうがないよ。子どもには親を嫌う権利があるんだから。」
小学生の頃に弟が死に、最近母親が癌で死んでしまった千夏と、夫と義母が死んだ芽衣子。2人はそれぞれに異なる「家族」の中で生きてきた。
そんな2人が芽衣子の故郷であるブラジルの共同体ヤマに戻ることで物語は進む。
故郷に戻った先では芽衣子の辛い過去に千夏のそれも重なっていく。出来事は違えど抱いた感情には似通ったものがあるのではないか。そう感じさせる物語だがしかし、千夏は母親に自身の苦しみを重ねる芽衣子を拒否したりもする。
物語中盤、ヤマで芽衣子の兄弟が亡くなり、そのことで物語は更に2人を結び付けることへと繋がる。そして物語は千夏の母の死のシーンに戻るが、このシーンは圧巻。静かで、しかし画家であり自由に生きた千夏の母親の力強さを感じさせる。そしてまた、親子というものがどういうものかを考えさせられた。
13歳で両親が離婚し、様々な場所を転々としていた自身の母親に対しての「嫌い」という端的な感情。それが段々と変容せざるを得ない環境に差し掛かってきていることを感じる。親子とは何か、改めて考えたい。 -
「赤い砂を蹴る」
ある女性が、ブラジルの日系農場へと向かうところから始まる。芽衣子さんという友人がおり、その友人の生まれ故郷に一緒に向かっているのである。芽衣子さんは母の友人であったというから、60代くらいで、主人公の女性とは数十年の年齢差があるはずだが、あまりそれを感じさせないほど親しいようだ。
主人公と芽衣子さんにはそれぞれの過去がある。主人公の母は二度離婚していて、それぞれの元夫との子どもと暮らしていた画家であった。下に異父弟がいたが、小学生ごろに心臓発作でなくなってしまう。そして、シングルマザーだった母も直近に癌で亡くしている。芽衣子さんは、ブラジルの封建的な農場社会から飛び出して東京で暮らしていたが、夫は晩年アル中になるし、義母は苛烈な性格だったようだ。それでもこの芽衣子さんはいずれも献身的に、かつ淡々と支え、看取っているが、その原動力は何なのか。
母を、家族を理解するということ、それが遅すぎたこと。実の娘に遠慮する主人公の母と、芽衣子さんの義母。
複数の家族の様子が、時代と国境を越えて多層的に登場するので、構成は面白いと感じた。
ただ、ブラジルである必要はどんなところにあったのかは、読み込みが不足していたのか、良くわからなかった。また、過去にこれだけ色々あった人たちが、過去にとらわれないというのは無理な話である。たくさんの家族やその歴史などの要素があり、重層的であった一方で、もう少し主人公の家族にフォーカスしても良いのかなと感じた。 -
第165回芥川賞候補「赤い砂を蹴る」
母を亡くした千夏が母の友人であり、日系二世の芽衣子と共に、故郷のブラジルへと旅する物語。
たくさんの亡くなった人の思い出が語られる。
千夏の母親、幼くして亡くなった弟、芽衣子のアル中の夫、その夫の母親。
娘と母親との和解の物語、いや死者との和解の物語?
「結局、誰も助けられなかった。」
「だから、それは。」
わかってるんだけどね、芽衣子さんがもどかしげな声を出す。
太宰の孫ということで今回の芥川賞の話題枠、ということではなく、かなりの筆力。もともと劇団主催者なのね。
芥川賞予想○対抗
松浦理英子と濱野ちひろの対談「動物と人間は愛しあえるか?」がぶっ飛んでいた。トランスピーシーズって!!
文藝春秋の作品





