- Amazon.co.jp ・電子書籍 (341ページ)
感想・レビュー・書評
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6月-15。4.0点。
醤油蔵の一家。主人公の父親は後を継がずに絵描きに。
祖父が亡くなり、急遽蔵を継ぐことに。
面白い、一気読みした。主人公の成長物語だが、この作家らしく、人物描写が上手い。母親の頼りなさ、一歳違いの叔母の激しさが的確に描写されている。
直木賞候補。初の候補だから難しいかもしれないが、とってもおかしくない気がした。 -
読み始めたら、やめられないお話でした。
暖かくて、辛いこともそのうち良い方に転がるんじゃないか、という希望がうまれる。
あ、違う。
良い音を鳴らしながら土鈴のように転がりながら、食を楽しみながらならば、よい結果が来る。
読後に胸にポッポと灯りが灯り、勇気が湧きます。 -
橿原市にある小さな醤油蔵の当主になる銀花の半生を描いた作品。昭和の臭いがプンプンする、家族とは何かを考えさせてくれる作品。血の繋がりだけが家族ではない。人を殺し少年院送りになった男と結婚し、蔵を継ぐ覚悟をした銀花だが、当主だけが見ることができる座敷童のいる蔵には、隠された忌まわしい歴史があった。
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奈良県橿原市で200年以上続く老舗の醤油蔵。その老朽化に伴う蔵の改築の最中、蔵の床下から古い木箱に入った子供の遺骨が発見された。「やっと会えた。こんなところにいたんやね・・・」《雀醤油》の当主・銀花の胸に去来する山尾家の家族にまつわる哀しく辛い過去。座敷童が出るという言い伝えを持つ蔵を舞台に、1968年から現在まで50年に亘る一族の物語が始まる・・・・・・。
地方の名家、古い蔵、座敷童の言い伝え、家のための縁組、外腹の子、不倫、人殺し、盗癖・・・・・・まさに遠田小説ここにありの設定にワクワク。
大阪万博に沸く地元、仲雅美の「ポーリュシュカ・ポーレ」、石油ショックのトイレットペーパー買い溜め騒動、内藤やす子の「弟よ」、小椋佳の「シクラメンのかほり」などその時々の風物詩も盛り込み、昭和から平成の終わりまでを描く”大河小説”の様相を呈するも、その割には300頁余りとボリューム感はなく、物語の展開もさらさらと流れるようで、期待したドロドロと重苦しい愛憎劇は鳴りを潜める。
それでも、次の展開を期待して寝る間も惜しんで読んだ作品は久しぶり。さすがのストーリーテラーです。
家族のそれぞれが過去の秘密を抱え、大人の事情のしわ寄せが全て子供である主人公の銀花に向けられる展開は歯がゆくてならない。それでも、”ふくら雀”の土鈴のように転がった先で前向きに生きていくという、銀花の生きざまには強さを感じるし、最後には家業をたて直し、愛情に恵まれた人生を手にする銀花の姿には感動し、鼻の奥がツンとした。
「ドライブインまほろば」「廃墟の白墨」と同じく、”悲惨な境遇を織り込みながらも、常に薄日が差すような展開”にシフトしていくのかな~。その方が多くの読者に受け入れられやすいのかもしれないけど、やっぱり初期の頃のような重くてドロドロで救いのない展開を望んでしまうのよね~ -
男女関係なく、その仕事をやりたいという人間に任せてくれれば厄介事も減りそうな気がする。血縁にそれほどこだわらなければならないのだろうか?
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遠田さんの4冊目は163回直木賞候補作。座敷童が出るという古くから続く醤油蔵で暮らす山尾銀花の人生。事故か自殺か不明のまま亡くなった父、窃盗癖を押さえられない母、銀花のため殺人を犯した剛、醤油蔵を一人で護り厳格に生きる祖母、いろいろな事情があろうとも家族になることができる。 へらへらと笑う銀花は強いな。。。最後の家族全員で楽しむシーンが印象深い。とてもとても良い作品で、気持ちの良い時間でした。お勧めします。