文藝 2020年秋季号

  • 河出書房新社
3.83
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・雑誌 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 4910078210804

感想・レビュー・書評

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  • 王谷晶「ババヤガの夜」
    笑ってしまうほど面白かった。
    力などないと決めてかかってくる奴らに、支配される筋合いはない。
    刺し違えてでもやってやる!って最強の気持ちになれた。

    宇佐美りん「推し、燃ゆ」
    今村夏子「むらさきのスカートの女」に近いものを感じた。
    ままならない生活の中、自分のことはそっちのけで他者の観察に熱中する主人公。
    多分、自分の人生に可能性を見出せなくて、絶望をやり過ごすためにそうしてるんだと思う。
    一秒でも自分自身を直視してしまったら、生きていられない。
    なんで宇佐美さんも今村さんも、この惨めな気持ちが分かるんだ。
    小説の中に自分がいっぱいいる。


    町屋良平「死亡のメソッド」
    はじめて町屋さんの小説を読んだ。不思議な文章だった。
    いつの話で誰の台詞なのか、時々分からない。
    流れのままに流さてれる感覚。鳥井みたいに。
    やけに行動力があって自論を展開するのも得意なのに、意思がどこにあるのか全く掴めない、鳥井という人物。
    人生のどこかに意思を丸ごと捨ててきた感じさえする。
    宇佐美さんや今村さんの小説とはまた違う不穏さがあった。

  • 特集「覚醒するシスターフッド」。
    驚いた。エロも美も百合もなく、女が主人公なのに理由がなくてもいい。
    それだけで面白く、カッコいい女達の物語。
    こういう特集が大手文芸誌で組まれ、当たり前に読める時代になってたんだ。

    今までSFや特撮で物語的に好きでも、女の扱いには引っかかることもあった。
    女達の共闘をすぐに百合と呼ぶのも、エンタメ化してただ消費する感があり嫌だった。
    でも物語が好きだから、気にしないふりをして楽しむことを優先していた。

    でも時代は変わってきてる。もう違和感に気付かないふりをしなくてもいいんだ。
    ありがとう文藝。

  • これまで文芸誌を買って読む習慣はなかったのだけれど、おもしろそうな特集にひかれて一冊買ったら、次の号も、次の号も、でこのところついつい買ってしまっている「文藝」(←別冊のほうはけっこう気軽に買っちゃうんだけど)。今回も「覚醒するシスターフッド」+「非常時の日常」という2大特集は気になるし、宇佐見りん「推し、燃ゆ」が、推し活にハマる次女におもしろいかも?(わたしもちょっと読んでみたい)ということで。

    推しは背骨だと言い切る「推し、燃ゆ」、推し色が同じブルーの次女を重ねずにはいられず…。高校生の主人公と仲良しの子の通学途中やスマホを介しての会話(必要最低限という感じ)が、まんま娘たちの会話を聞くようでもあった。かんじんの次女は推し活と高校(部活)でいっぱいいっぱいの日々で手に取る暇もなさそうだけれど、夫や長女は興味深く読んだらしい。

    シスターフッド文学といえば、長女にとってはなんといっても『ののはな通信』とのこと。それもいいね、と共感しつつ、わたしの場合は『幻の朱い実』や『ピエタ』かな…
    ふだんバイオレンスものやアクションはあまり好んで読まないけれど、特集に寄せた書き下ろし中編、王谷晶「ババヤガの夜」は壮絶おもしろかった。守り人シリーズのバルサのをさらに無敵にした感じの主人公すごかった。

    追記:
    ネッ友さんにすすめられたといって高1次女がようやく「文藝」を手に取り読み始めたが、一行目からいきなりつらすぎる、とのこと。細かいところまでリアルでわかりすぎて感情入っちゃってたいへんそう。

  • 初めての文芸誌
    本屋大賞の「推し、燃ゆ」目当てで借りてみた
    私に推しがいないからかうまく入り込めなかった…
    いたら楽しめるのかな…?

  • 宇佐見りん「推し、燃ゆ」
    オタク活動では解釈ブログのページビューを稼ぐような高校生の主人公が、生きづらく、社会から逸れてゆく。推しの炎上から話が始まり、火葬を想起させるラストを迎えるのがおしゃれ。

    特集にも興味があったが未読。

  • 宇佐美りん『推し、燃ゆ』のみ読了。

    ネット社会。推しという概念。 
    あかりは、推しを心の拠り所として生きてた。推しに自分を投影してたんかなぁなんてぼんやり考えた。
    にしても、高校中退したとして、両親や姉の反応が冷たくかんじたなぁ。好きなことをしているように見える人を周りが正しいと信じている道に戻したがったりするのどうにかならなあかな?ほっといてくれないかな?なんて考えたりした。人は同じでないものをきらうんやなぁ。一文か長く、リズムがあるようなかんじです。

  • ままならない人生を引きずり、祈るようにアイドル上野真幸を推すあかり。ある日、真幸がファンを殴って炎上し…。デビュー作「かか」が三島賞候補になった21歳の第2作。

    20年下期芥川賞作「推し、燃ゆ」を読んでみた。技巧を凝らした文章だけれど、私には読み辛かった。中身もスカスカで、「女子大生作家誕生!」という話題作りの受賞かと思った。
    (D)

  • 19.

    「推し、燃ゆ」掲載目当てで図書館で借りた
    アイドルオタクなので「分かる」がいっぱいで泣きながら読んだ
    助けられながら幸せも苦しみも一緒に感じるのが推すということ
    アイドルが「私たちのために全てを捧げないでほしい、あなたはあなたの幸せな人生を生きてほしい、そのために私たちを上手に利用してほしい」と言っていて、本当にそうだと思ったと同時に泣けた
    推しってなんなんだろう
    考え始めるとぐるぐるする

  • y

  • 芥川賞の宇佐見りん「推し、燃ゆ」を目当てに。特集の「覚醒するシスターフッド」も面白かった。男性性に支配された社会を諦めないでいたいし、知らぬ間に自分も加担していないか厳しくいきたい。

    「推し、燃ゆ」推しのために生きている、いや、推しがいるから生きていられる。まさに、文字通りに。推しがいなければ、どうして生きていけよう。あかりの必死さに、一気に読んでしまった。推す行為がそのまま生存の意味になるなんて、わからない人もいるだろう。自分としては、あかりほど推しに寄り切った生活はしていないので、若干距離を感じてしまうこともあるが、あかりのような心情なのだろうか、と何人かの周囲の人を想像した。推すことは生きることなのだ。それを羨ましいと思うし、危ういとも思う。推しはいつかいなくなってしまう。よほどの地下アイドルや地域密着型や若手でもない限り、自分が積極的に関与できる存在ではない。けれど、そんな物理的には隔たりがあっても身近に感じる推しを推すことと、物理的に身近にいる誰かを愛することと、リアルにしろネット上にしろ人間関係の中で自分を保って社会生活を続けていくこと、それらに上下があるだろうか。どれも生きることではないか。

    柚木麻子「パティオ8」柚木さんらしい、妙に強い女性たちの物語。各人の個性と活躍の仕方ににっこり。

    ヘレン・オイェイェミ「ケンブリッジ大学地味子団」地味とは。桜庭一樹の『青年のための読書クラブ』を思い出す、したたかで楽しい集まり。

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