三体Ⅱ 黒暗森林(上) [Kindle]

  • 早川書房
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感想・レビュー・書評

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  • 恐るべき宇宙からの来訪者”三体文明”とその協力者であるETO。
    第一巻のラストではETOの”降臨派”を殲滅させるに近い攻撃を与え、三体文明との交信記録を手にした人類。
    第二巻では地球側が四百年後に来訪が予見される恐るべき宇宙文明といかに対抗していくか、の頭脳戦が繰り広げられる。

    多くの課題を驚異的な科学の発達で解決してきた人類ですが、高度な知能を持った粒子”智子”の妨害で、素粒子物理に基づいた研究はストップしている。
    古典物理学をベースにした範囲でいかに対抗できるのか?
    その中心となるのが、「面壁者計画」。高度な文明を持つ三体文明であるが、彼らに”欺く”という概念や”思考を隠す”ということはなかった。
    超法規的な権力を与えられた4人の面壁者。
    米国の国務長官を務めた、タイラー、ベネズエラの社会主義革命の独裁者、レイ・ディアス、脳科学研究の第一人者、ハインズ、
    そして本巻の主人公といえる、羅輯(ルオ・ジー)。一見何も持たない快楽主義的な羅輯だが、葉文潔から宇宙文明の公理を授けられた、「宇宙社会学者」。
    当惑する羅は結局開き直って自分の心の中の「理想の恋人」を追いかけ、絶対的権力を使って史強の助けを借り、その理想は現実となる。
    世間を離れた理想郷といえる場所で恋人の壮顔との生活を続けたのち、彼はひとつの行動を起こす。
    それは「呪文」を宇宙の遠く離れた惑星に送る、という実験であった。

    本作のもう一人の主人公は章北海。元海軍将校であり、宇宙軍を率いる立場に異動する。彼は盲目的ではないが熱烈な勝利主義者であり、かつ敗北主義の蔓延を極めて強く懸念していた。そのために、盟友とも言える呉岳を追放するほどに。
    強い決意で多くの障害を排しながら、そんな彼は未来で、三体文明との直接の会合を望む。

    一巻からの話の流れで、驚異を発見し、それを歓迎するもの、反発するものが出て、反発する勢力が結集し対抗案を考え、という流れはまあ想定通り。
    面壁者による対策立案の過程は一気に現代的かつ政治的。

    多くの虐殺と殺戮の歴史の中で、”思想を偽る”ことで生きながらえてきた人類。
    ”思想を偽る”ことこそが、高度文明と対峙するための最も人間らしい武器というのは皮肉のようだが、
    一巻で出てきた、文化大革命でも思想を曲げず、物理法則の崩壊に絶望し自殺した、ある意味で正直すぎる科学者たちの多くの場面と表裏で点が繋がる。

    上巻は一人の面壁者が”破壁人”に対面・敗北し、残る面壁者たちと章北海は人工冬眠により未来へ向かう、という展開。続きは下巻へ。

  • 新型コロナウィルス対策のための緊急事態宣言。

    出勤は週の半分。
    出勤日もラッシュを避けた時短通勤。

    かといって、家に居場所があるわけでもない。
    巣ごもりばかりでは、太る一方。

    ならば、歩こう。
    その散歩の友には音楽も良いが、「聞く読書」のアマゾンaudibleが良い。

    去年の春先に聞いた現代中国初のSF超大作の続編に挑戦した。

    地球文明の存在を知った三体人は、自らの存亡をかけ地球を滅ぼすべく艦隊を派遣。

    国連惑星防衛理事会が面壁計画(ウォールフェイサープロジェクト)を決断するところから物語は再開。

    「嘘がつけない」「相手のことを慮ることができない」三体人に対して、地球の運命を託された4人の「面壁者」(ウオールフェイサー)。

    物語の主人公はそのひとりの羅輯(ルオ・ジー)。
    「宇宙社会学者」だ。

    人間は究極の状況に追い込まれた時、自分の境涯を超える使命を託されてた時、どのように振る舞うのだろうか。

    時間と空間を無限大に使った舞台のなかで、人間の本質に迫る大作。

  • ひとつひとつのSF的ギミックは目新しさがナイの抱けども、その構成力が素晴らしい。
    あははは。中国人作家が特攻を高く評価するキャラを登場させるのは、なんとも複雑な気分ではあるのだけども。
    プロジェクトの動きがなぜ智子に知られないのか?
    この点は、もう少し説明必要かなとザラツキを感じてしまうかもしれない。
    SF小説としては、軍事、社会的な動きの考察が国内のSF作家(林譲治先生、 上田早夕里先生とか)よりは大雑把な気はする。

  • 遠い星から三体人がやって来るが地球到達まで400年間まだ時間がある人類の対応策の話。相手は智子と言う素粒子を使って人類を監視する。その対抗方法を壁面人で対抗する。その駆け引きの話ちょっとくどくて、化学物理学の話も出るので読むのはちょっとしんどい。が今下巻を読破中。

  • 前作『三体』が非常に面白かったが、まさかまた違ったアプローチでこんな面白さを感じさせてくれるとは思わなかった。4世紀以上先に三体星人が、攻め込んでくるという人間のスケールで考えると果てしない未来に必ず訪れる終末に対して、人類は何ができるのか。唯一の対抗策、面壁計画を実行することにより、ある種禅の境地のような状態に達した人間が救世主となり得るのか。後半に向かうにつれ高揚感が加速してゆく感覚は久しぶりに味わった。前作に比べて、詩的で、叙情豊かな描写も多く、美しい場面も多かった。下巻が非常に楽しみ。

  • 三体Ⅱ 黒暗森林(上) 2020

    黒暗森林(こくあんしんりん)と読む
    2020年6月25日電子書籍版発行
    著者 劉慈欣(りゅうじきん)
    訳者 大森望 立原透耶 上原 かおり 泊 功
    扉イラスト 富安健一郎

    劉慈欣(りゅう じきん、リウ・ツーシン、1963年6月23日 - )は、中華人民共和国のSF作家。山西省陽泉出身。本業はエンジニアで、発電所のコンピュータ管理を担当している。
    中学生のころから創作を開始。1999年、中国のSF雑誌『科幻世界(中国語版)』でデビュー。その後、銀河賞に連続して入選。2010年、第1回中国星雲賞(世界華人SF協会主催)で作家賞を受賞(韓松と同時受賞)。2015年、アジア人初のヒューゴー賞受賞者となった。
    SFに興味を持つきっかけになったのはジュール・ヴェルヌ『地底旅行』で、その後アーサー・C・クラークの『2001年宇宙の旅』で本格的にSFにのめり込むようになった。

    『三体II 黒暗森林』(さんたい に こくあんしんりん)は、劉慈欣による小説である。中国のSF、地球往事三部作(中国語版)の第二弾であり、2008年5月に重慶出版社より出版された。プロローグと3つの章(面壁者・呪文・黒暗森林)より構成される。
    2020年には早川書房より日本語版が出版された。

    以上のようにWikipediaで紹介される中国SF作品。
    前作三体の続編となる。
    上下巻に分かれていて前作よりも長編であることを伺わせる。
    今回はSF的要素がいよいよ本格化してくる。
    主人公羅輯(ルージオ)がヘタレ主人公っぽくて(とはいえども理系分野の天才でもあるか)なぜ国連の面壁者4人の内の1人に選ばれたのかと思えてしまう。
    とはいえ三体からはこの上巻冒頭の付近で交通事故を装った暗殺未遂にあっており、ずっとこの主人公を警戒していた。(にしても徹底度が悪い。下巻でも語られるけれども地球三体協会の崩壊を手助けしないなど三体人の仕事の甘さが目立つ)

    途中、小説を書く事にハマり脳内(=妄想)の彼女とドライブデートに出かける下りはちょっと何やってるんやと思ってしまうだろう。
    家でときめきメモリアルでもやっとけ。
    結局、史強さん最強説を提唱せざるを得ない。
    もう史強が主人公でええやん!ってなる。
    前作三体も史強が実質主人公やんと。
    まあ、良き相棒キャラなんやろなと。
    血液の白血病を治す為に史強さんも冬眠する。
    未来の医療技術でちゃっかり全快。
    生き方上手=史強 である。

    もう一人の主人公は章北海。
    海軍軍人からいきなり宇宙軍に異動させられる。
    ただ軍内のモチベーション低下、敗北主義への警告とも言えるメッセージはなるほどと思わされた。
    この上巻では彼が宇宙船のエンジン技術の方向性を放射ドライヴ船へ向かわせる為に3人ほど宇宙空間で暗殺するのだが・・・行動力がすごい。
    暗殺用のピストル弾丸も隕石岩を使用し、暗殺と悟られないようにするとは・・・。

    地球三体協会の何人かも未来へ向かうべく冬眠すると語る場面が上巻の終わり頃あるのだけど出てきたか???というか相手がどれだけ冬眠するか分からないしどうしようもない気もする。


    葉文潔は羅輯に宇宙社会学の二つの公理を授けた。

    1. 文明は生き残ることを最優先とする。
    2. 文明は成長し拡大するが、宇宙の総質量は一定である


    印象に残った部分

    章北海が言った。「司令官、自分が無神論者であることをいまはじめて残念に思っています。そうでなければ、いつかどこかでまた会えるという希望を抱けたのに」

    「武器?金銭?いいや、われわれに必要なものは、それよりはるかに貴重だ。(テロ)組織が存在するゆえんは、セルダンのように野心的な目標ではない。理性を有する正気の人間が、そんな目標を信奉し、そのために死ぬことなどありえない。なぜ組織が存在しうるかと言えば、それは、組織にとって空気となり血液となるものを有しているからだ。それがなければ組織はたちまち息絶えてしまう」
    「それとはなんですか?」
    「憎しみだ」
    タイラーは二の句が継げなかった。
    「一方では、共通の敵が出現したおかげで、西側に対する憎しみが薄れた。他方では、三体人が滅ぼそうとしている地球人類には憎むべき西側が含まれているから、ともに滅びることはわれらの喜びとなる。そのため、われらは三体人を憎んでいない」老人は両手を広げた。
    「わかるだろう。憎しみは、黄金やダイヤモンドよりも貴重な宝物だ。この世界でもっとも鋭い武器ともなるが、それはもう、消えてなくなった。きみらの力をもってしても、それをわれらに取り戻すことはできない。だから、この組織も、わたしと同様、もう長くはないのだよ」

    文学が人物を描く過程には、最高の状態がある。その状態になると、作中人物は作家の思考の中で生命を得て、作家は彼らをコントロールできなくなる。しまいには彼らの次の行動が予測不能になる。作家はただ、好奇心にかられて彼らのあとをついていき、彼らの生活の細部を除き魔みたいに観察して記録する。それが名作になるのよ。

    2023/01/08(日)記述

  • 個人的には三体Ⅰは何が面白いのかピンと来なくて、黒暗森林の2部から漸く面白いと感じるようになってきた。噂のダーシーがメンタルイケメンだというのも理解したし、ルオジーについても名前だけは聞いていたのだが、何故ルオジーなのか理解した。三体全体にとつとつとした地味な美しい語り口があるのだが、ルオジーとあと何人かが出てないと本当に面白くないシーンもあるし、ルオジーが出てくると文章が良くなるので面白いルオジーの夢の恋人が性格も美人なのが良い。続いて下巻を読もうと思う。

  • 面白すぎた…。Ⅰに引き続き更にスケールが広がる。遥か彼方の文明、三体世界が移住の地を求めて地球へと飛び立つ。到着は400年後。人類も対抗すべく技術開発をしようとするが三体世界より智子(ソフォン)と呼ばれる11次元の極小コンピュータに基礎研究を阻害され、おまけに人類の監視を行う。しかし智子をもってしても個人の頭の中までは覗けず、人類に唯一残された手は三体文明に対する作戦を個人の思考の中に閉じ込めるという作戦であった。そこで4人の人間が面壁者として選ばれそれぞれの作戦を練ることになる…。三体文明と人類はどうなっていくのか? 空間、時間のスケールがとんでもない。SF好きなら是非手に取ってもらいたい。

  • “わたしがおまえを滅ぼすとして、
    それがおまえとなんの関係がある?”

    恒星の灯に照らされて、
    一人ぼっちの惑星は踊る。

    暗黒の壇上で45億年。
    孤独な円舞が続く。

    いつか友達が欲しいと願った。
    遙か遠くにいるはずの。

    向こうはどう思ってるのかな。

    /////

    「減速するな」

    中国発・弩級の化け物SF三体SF三部作〈発動編〉。
    暗黒の世界観…いや宇宙観に触れて未知の興奮を味わう!

    惑星破壊兵器並みの超展開の応酬に、もはや腰が立たない!殲滅的ディストピアに燦然と輝く妄想・希望・絶望…

    3作目が待ち遠しい!

    登場人物表の栞が結構役に立ちました。


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著者プロフィール

1963年、山西省陽泉生まれ。発電所でエンジニアとして働くかたわら、SF短篇を執筆。2008年に刊行された『三体』で人気に火が付き、“三体”三部作(『三体』『黒暗森林』『死神永生』)は中国で2100万部以上を売り上げた。2014年にはケン・リュウ訳の英訳版が刊行され、2015年、アジア人作家として初めてSF最大の賞であるヒューゴー賞を受賞。2019年には日本語訳版が刊行され、11万部を超える大ヒット。

「2023年 『神様の介護係』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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