あの日、君は何をした (小学館文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • なんとも言葉で表現しにくい内容になっている。
    自己満足や承認欲求。自己嫌悪と現実逃避への流れ。愛が増大した末に、罪の意識、憎悪、執着へと変貌を遂げる様子。人はどこまで狂ってしまうのだろうか。どこか他人事とは思えない暗い感情が湧き上がってきてしまう作品だ。

    登場人物たちが抱える闇にフォーカスすることで、一見関係のなかったはずの出来事が、少しずつ重なってくる。過去に囚われ、今起きていることに意識が縛られ、妄信が狂気を生む様子などは、読者の私に家族を想わせるし、偏見を植え付けるに十分な内容となっている。

    特にいづみの感情を表現している部分はずっと読んでいられそう。


    以下、ネタバレ有り(備忘録)。


    スッキリとした終わり方はしないが、ちゃんと真犯人もわかり良い感じ。結局大樹くんは最初から狂っていたようだ。サイコパスというのが妥当なのだろうか。
    なんでまたこんな悲劇的な物語を思いついちゃうのかな。いづみの気が狂っていく様や、家族から捨てられ、大樹の幻と生きているところなどは気持ちがブルーになる。
    当たり前の幸せがなくなると人は終わるんだろう。

    物語は終盤、一気に15年とういう歳月がリンクする。
    三ツ矢の15年前の気持ちは、少しは清算されたのだろうか。
    彼は自身の背負う過去に、まだ理由を探している。

    少し三ツ矢刑事の勘が良すぎたり、キャラが濃すぎる部分が気になったが、三ツ矢刑事シリーズのようなので、次も楽しんで読んでみようと思う。

    読了。

  • 2004年に起こった「宇都宮女性連続殺人事件」。逮捕・勾留された犯人が警察署を脱走。その捜査警戒にあたる警官に深夜職質を受けた中学生男子(水野大樹)が自転車で逃走し、挙げ句事故死した。息子に有り余る愛情を注いでいた母親は、ショックのあまり気がふれ、常軌を逸した行動に出てしまう。

    その15年後に起こった新宿女性殺人事件。失踪した不倫相手が容疑者として浮上するが、捜査にあたった三ツ矢刑事は、15年前の事件との関連に気づき、真相に迫っていく。こちらの事件でも、容疑者の母親の精神が病み、常軌を逸した行動を起こしてしまう。

    息子を失った母親の過剰な愛情が、周りを更なる不幸へと突き落とし、時に凶器ともなり得ることを描いたイヤミス、かな。

    自らも母親を殺されたトラウマを抱えた三ツ矢刑事。感情を表に出さず飄々としていて、遠慮なく強引に捜査していく異端キャラだか、実は被疑者への深い思いやりを秘めているところが本作の救いかな。

    オチ(大樹があの夜一体何をしたのか)はいまいちだった。

  • 初めて読む作家さん。
    私の大好きな未来屋書店さんで新品を購入。
    未来屋書店さんは、いつも新しい作家さんに出会わせてくれる素敵な書店(*^-^*)

    入口付近のオススメコーナーに、装丁を表に向けて何冊か並べてあり、思わず手に取ってしまった。
    私の好きなミステリのにおいがプンプンする(*^-^*)


    綺麗な容姿とも言えない平凡な女性 水野いづみは、結婚し、二人の子供に恵まれ、
    華美ではなく、質素な普通の生活、平凡な毎日だったが、誰よりも幸せであると自負していた。

    上の姉は第一志望の大学に合格し、下の弟は第一志望の高校に合格し、合格祝いをしていた。
    翌朝、大樹が連続殺人事件の容疑者と間違われ、夜中に自転車に乗っていたところパトカーに追われ、トラックに突っ込み死亡したことを聞かされる。

    そこから水野いづみの生活は一転してしまった。
    大樹が夜家を抜け出したのは、自分が母親として至らなかったからなのか!?
    自分を責めるいづみ。いづみの精神は壊れて行き、娘を責め、夫を責め、幸せな生活は破綻していく。


    それから場面は15年後に変わる。

    若い女性の絞殺死体が発見され、不倫相手だった百井辰彦が行方不明になる。
    夫が行方不明になったが、妻の野々子は取り乱すことなく、無関心のように見えた辰彦の母親は一人で辰彦を探そうとする。

    この事件を担当した刑事が三ツ矢。
    最初の事件に登場する、連続殺人犯を取り押さえた警察官だった。

    無関係に見えるこの二つの事件、次第に事件を繋ぐ鍵が見えてくる。


    文章は全く難しくなくて、どちらかというと東野圭吾さんのように、物語がサクサク進んでいくような、そんな作家さんだった。
    物語が面白いし、進みが早いからあっという間に読めてしまう。
    常に、何で?どうなるの?誰が???もう頭の中は疑問だらけ。
    これがミステリの良いところ。

    最後はしっかり落ち着くところに落ち着いてスッキリ♪♪
    サクっと楽しく読ませて頂きました~(*´▽`*)

  • Audibleにて。
    長編ミステリー小説!
    驚きや、納得の得られる読後感でした。
    幸せな家庭で暮らす、ある母親の人生が一変する悲劇から始まります。
    息子の死と15年後の殺人事件が絡み合うという、謎に引き込まれていきました。
    母親の深い愛情と、その愛が及ぼす狂気の描写があり、そのリアルさには震えます。
    彼女の苦悩に共感し、一気に引き込まれました。
    事件の真相が明かされるまでのドキドキ感。
    この真相は、おそらく誰にも予想できないかと思います。
    子供を失った母親の深い悲しみが胸に迫る作品でした。

  • 二部構成になっていて、最初の話では、中学生の男の子の連続殺人犯に間違われて事故死する。
    なぜ少年は深夜に家を抜け出し、職務質問から逃れようとしたのか。
    そしてその事件から十五年後、若い女性が自宅で殺され、容疑者の不倫相手の男性は行方不明となる。
    なんのつながりもないように見えるこの事件に関連はあるのか。
    何しろ二部構成なのだから、何かがあるはず。そう思って読んでも全然つながりが見えない。
    調べる警察官は変わりもので淡々としていて感情が読めない。
    先が全く読めないまま終盤に来て、一気に真相へとまくっていくスピード感がすごい。どんどんピースがハマっていく。そしてザラザラと苦いものが残る。
    完全なイヤミス。これは次回作も続けて読みたい。

  • 平凡な主婦であるいづみの息子、大樹は連続殺人事件の容疑者に間違われ逃亡したことで事故死する。彼は深夜に家を抜け出し何をしようとしていたのか。十五年後、新宿で女性が殺害され、重要参考人である百井が行方不明に。
    ・・・・・・と、全く関係のないような二つの物語が視点を変えながら語られていく本作。もちろん二つの出来事と視点にはミッシングリンクがあると思われるのだが、読者になかなかその全貌を捉えさせない。
    謎を追う刑事のバディものとしても熱く、謎が紐解かれていく様には読み応えがある。最後の謎が解かれる時には天を仰ぐ。

  • 神よ。三ツ矢と岳斗の関係に、ちょっと腐った想像をしたことを懺悔いたします。
    正直なところ、親子の心温まる物語とかいうのは苦手なんだが、そういうのではなかった。
    歪んでいるとも言える母親に辟易した挙句、やっと至った結末。…の後のどんでん返し。驚いたが、納得もした。

  • 前知識なしに読んでいくと全く別々の話に見えながら

    それを刑事三ツ矢が少しずつ紐づけていき、ラストには

    え、こんな結末が・・・・という展開に驚かされます。

    そして、もう一つは平凡な家庭が1つの事件によって

    大きく崩されていく、そんな儚さも感じさせられます。



    「あの日、君は何をした?」

    と何度も問いかけ、その答えを探す者と諦める者。



    これは確かに至極のミステリー。3時間であっという間に読み切れました。

    一度読み始めたら止まらない。その前評判、確かに。

  • 何だろ、モヤモヤゾワゾワ感。
    息子のダークサイドの部分に不快感が残るのは、作者の意図なのかしら。

  • 終盤で2つの事件がつながり出して、小気味よく話が進んで面白かった。

    ミステリーでありながら、母親の狂気の物語。正気にみえる母親もなにかが欠けていて、親子関係の難しさを感じた。

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著者プロフィール

1965年東京都生まれ。北海道札幌市育ち。1994年『パーティしようよ』が第28回北海道新聞文学賞佳作に選ばれる。2007年「散る咲く巡る」で第41回北海道新聞文学賞(創作・評論部門)を受賞。
著書に『熊金家のひとり娘』『完璧な母親』『大人になれない』『いちばん悲しい』『ある女の証明』『祝福の子供』『あの日、君は何をした』『彼女が最後に見たものは』などがあり、近刊に『レッドクローバー』がある。

「2022年 『屑の結晶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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