コロナ後の世界 (文春新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 欧米の各界のトップクラスの学者、思想家6人へのインタビューにより構成されている本。
    ウィズコロナ、アフターコロナが主要テーマ。
    深い思索による、味わいのあるインタビューが多い。当たり前であるが、何かについて、アフターコロナの世界はこうなる、と明快に断言する人はいない。まだ、分からないのだ。
    コロナ以前から、世界に変化をもたらすであろうと言われていた要因は多くあった。それらの要因は、コロナによって消えたわけではない。むしろ、コロナは世の中の変化のスピードを促進する役割を担うのではないか。予想できたとしても、そのようなメタ的なもの。

    そういった言説を含めて、印象に残った部分を下記に引用しておきたい。

    ジャレド・ダイヤモンド
    ■未知の感染症はSARSやエイズ、新型コロナに限らず、人類の中で自然に発生するものではない。動物が持っているウィルスが人間にも感染するように変異する。その多くが野生の哺乳類。
    ■感染症がこれほどの脅威になるのは、あまり実例がない。黒死病やペストも特定地域での流行。
    第二次大戦後では、天然痘。1958年にWHOで根絶決議が可決され、1980年に根絶宣言。
    その前は、1918年のスペイン風邪。死者4,000万人。これが一番今回に近いか。

    マックス・デグマーク
    ■これからの時代に生きる人は、一度職に就いたら四十年間同じことをやり続ければよいという考えをまず捨てなければなりません。今の段階で2060年の労働市場がどうなっているかを考えるのは全く馬鹿げたことです。それよりも常に何が起きているかを把握し、新しいことを必要に応じて、学習し続けることが重要になるのです。

    リンダ・グラットン
    ■「どの分野のスキルを身につければ、将来的に役に立つのか」
    無形資産の重要性について説くと、このような質問を受けることが多いです。実は、何を学ぶかはそれほど重要ではなく、人生を通して絶え間なく学び続ける姿勢が必要なのです。

    スティーブン・ピンカー
    ■新型コロナウィルスからの教訓
    1)サイエンス、公衆衛生、責任あるメディアといった健全な諸制度の必要性が改めて強調された。また、医療などの専門的な技能と組織の重要性の確認
    2)ナショナリズムが再燃する中にあっても、グローバルな国際協力が評価されていること
    ■この惨事が起きたことによって、科学、公衆衛生、適切なガバナンスの強化が求められるだろうという希望もあります
    ■楽観主義も悲観主義も自己予言的です。ならば、我々は楽観主義になるべきでしょう。人類はそうして危機を乗り越え、進歩してきたのですから。

    スコット・ギャロウェイ
    ■新型コロナウィルスが経済面に及ぼす影響は、「変化の担い手」というよりも、「促進剤」としての側面が強いようです。例えば、もともと苦境に陥っていた映画館やデパートは、もう臨終寸前にまで追い込まれました。

    ポール・クルーグマン
    ■スペイン風邪の流行後、経済的に比較的早く立ち直った地域の特徴がわかっています。それは流行当初に経済的な打撃を大きく受けたものの、ソーシャル・ディスタンスをきちんと守った所であり、結果的に死亡者数も少なかったのです。
    ■このパンデミックからの回復には、かなり長期間かかることを覚悟すべきです。景気回復のカーブは、ナイキのロゴマークのカーブのような、スウッシュ型になるでしょう。

  • 最もな意見だが、そんなに記憶に残っていない。無理やり読了したこの本。
    これから記憶に残るほど何度も読み返したいと思う。

  • 猛威を振るっている新型コロナウイルス。世界の知識人たちはコロナ後の世界についてどのように考えているのか。興味がわいて読んでみた。

    いつか終わりがやってくるであろうコロナ。
    働き方も変わるであろう。考え方。生活も変わるであろう。その時に大事なのは、自分の軸をもつこと。情報に惑わされず、一喜一憂せずに、自分の頭で考えること。そういったことが大切であり、それができる人間がこれからの世の中は必要になってくると思う

  • 現代の知識人6人によるコロナ社会の分析、及びアフターコロナの展望が述べられている。彼らであっても未来を正しく予測できるわけではないだろうが、現代の知性が今の社会をどのように考えているのか、その頭の中が分かるという点で面白かった。著者間で共通する意見も幾つか見られた。それらを簡単にまとめると以下のような内容。

    ・政治の二極化やナショナリズムの台頭などの懸念があった中で、国際社会の団結が評価されている。諦観に陥った人々の目には独裁国家がうまく感染症に対応していて魅力的であるように見えるかもしれないが、実際はそうではなく、民主主義は崩壊しないと思われる。コロナへの対策という点で生まれた国際協力をもとに、コロナ以前から叫ばれている様々な問題(環境問題、核兵器、AI、etc)の議論を進めるべき。

    ・今回のパンデミックを通して、社会や人々にレジリエンスが欠けていることが明るみに出た。これからは同じ職種やスキルに安寧していられるような時代ではなく、常に最新の知識、技術にアップデートし学習し続ける姿勢が欠かせない(特にテクノロジーの進化)。また、社会全体でも定年退職などの働き方の見直し、高齢化社会への対応、女性の労働力の解放といった固定観念に囚われない変化が求められる。

    ・テクノロジー、高齢化社会、感染症対策といった様々な観点から、今後の社会では健康、ヘルスケアへの投資が鍵となるだろう。

    ・GAFAの支配するデジタル社会やジャーナリズムが不合理な恐怖、フェイクニュースを生み出している。これらに立ち向かう上では、データを正しく理解する能力、統計学的思考が欠かせない。

    ・深い思考を持って未来を見据え、ポジティブなビジョンをもとに行動を起こしていくことが重要。

  • 6人の著者の論文集 ストーリーが判りにくい

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  • 世界の著名学者が見るコロナ後の世界。ピューリッツァ賞受賞地理学者のジャレド・ダイヤモンド、移民受入と女性差別解消で日本の少子高齢化は解決。ノーベル経済学者のポール・クルーグマン、未だに解決できない人種差別が、アメリカが国民皆保険にならない理由だし、トランプにうまく利用されて社会の分断が今までになく進んだと。

  • コロナ禍によって何が変わったのか、変わったものは果たしてコロナによるものなのか、それ以前より存在していた問題が顕現されたものなのか。世界の著名な知識人と呼ばれる方々による、日本の読者に向けて語られるインタビュー集です。働き方など、コロナによって大きく変わることとなるものもあります。AIの未来など、コロナに寄らずとも課題であり、今後も考えていかなければならない問題があります。経済など、今まで見え辛かった問題が、このコロナで現れたものもあります。コロナの最初の衝撃により、立ち現れた上記の物事について説明されています。そのうえでどうするかというところまでは、まだ見えている段階ではない時でしたが、考えるための知識の整理として、またコロナ禍の振り返りとして読ませていただきました。

  • 母君が購入したが、まだ読んでいなかったので先に読ませてもらったシリーズ

    まあなんというか1年前の大変な時にパパっとこういうの取材して本にしちゃうのすごいよね。偉い。みんな何が何だかわからんってレベルの段階で自分の専門分野の知見をもとにポジション・トークしてるのも偉い。

    個人的にクルーグマンの本なんか読んでみようかなというのと、ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」を読んでみたいと思いました(小並感)

  • 世界の賢人たちのコロナが世界に与える影響について語った本。
    【ジャレド・ダイアモンド】
    黒死病等過去にウィルスが蔓延した事象はあったが、あくまで局所的な「エピデミック」だった。現在は飛行機が発達し、世界各地で感染しうる「パンデミック」となっている。コロナを収束させるには、たった一つの国であっても感染者がいない状況を作る必要がある。一見独裁国家はコロナに対して、迅速で的確に対応ができると思われるが、それは誤りを含む。独裁国家で一つも誤りがなく政治を遂行できることは無いためだ。中国は共産主義であるが、コロナを隠蔽し感染拡大の原因になっている。一方民主主義国家では誤った判断は決して許されない。日本はコロナ危機以外に「定年退職制度」「女性解放」というもっと根本的な問題があり、その対応を進める必要がある。
    ※致死率が低いほど感染力は高くなる。細菌は「人の中で増殖し」「嘔吐や咳等で拡散」することで繁栄しており、保菌者が死んでしまうとそのスパイラルが途切れてします。
    【マックス・テグマーク】
    コロナは現代社会が案外「レジリエント」では無い、という事実を浮き彫りにした。コロナ禍、コロナ後の社会はAIを用いた対策を用いる必要がある。汎用型AIAGIの開発は今後進められていくであろう。AGIによって様々な実験はシュミレーションで代替され、ワクチンの開発もAGIによって実現できるであろう。テクノロジーはゆっくりではあるが確実に進歩し、AGIは様々なタスクを代替することになるだろう。AiphaZeroのような、ビッグデータを用いず、「データを生成」し学習する知能が生まれる。地球上における最高知能という座をAGIに受け渡すことになるが、人類はAGIと共存するためには、「安全工学的」観点から、AGIが超えてはならない一線を定義することが必要になるだろう。
    【リンダ・グラットン】
    コロナにより、デジタル技術を駆使した働き方が推進された。1年前までは考えられなかった在宅勤務が標準化し、コロナ後も引き続き在宅を押し進める向きもある。東京一局集中が問題視されてきたが、これを機に地方に分散するよう政治をする必要があるのかもしれない。コロナによって「人生100年時代」が変わることは無い想定。日本は高齢社会のフロントランナーであり、積極的に高齢者という人的資源を活用していくべきである。寿命が延びることによって、人生のマルチステージ化が進むであろう。(現在は「教育」「仕事」「引退」)また、女性の有効活用も進めるべきである。女性が男性に従属するステレオタイプ(結婚したら女性は家庭を守り、男性は金を稼ぐもの)を打破し、共働きの過程を築いていく必要がある。
    【スティーブン・ピンカー】
    コロナは「基準率的思考(Base-rate thinking)」と「指数関数的思考(Exponential thinking)」で考える必要があり、コロナは後者である可能性が高い。前者はスペイン風邪等過去の経験から対応策を考える思考であり、後者は感染症は指数関数的に増加するものであり、対策は不可能であるという考え方である。パンデミックによって得られた功績を考えると、科学と公衆衛生、メディアの重要性が改めて見直されたことがある。また、医療・公衆衛生・医学の専門的分野の重要性が高まった。アメリカファーストをはじめとするナショナリズムにあっても、グローバルな協力体制が評価されたのは喜ばしいことである。パンデミックによって民主主義国家の脆弱性が明らかに成った、とする論調もあるが、実はそうでは無い。中国は独裁国家であるが、独裁であるが故に、自国の正当性を優先し、コロナ感染を黙殺、結果世界的パンデミックの引き金となっている。2002年にSAASの原因となった中国の野生動物市場は経済を優先して黙認され、結果コロナの原因にもなっている。人間には認知バイアスがある。現在メディアはいいニュースは流さず、悪いニュースばかり流している、そのため、人間は「利用可能性バイアス」により、物事を悪い方向で考えがちになってしまう。人間は必ずと言っていいほどバイアスにかかっているため、データに根拠を求める思考が大切になってくる。パンデミックによって不安にかられるのはしょうがないが、科学・公衆衛生・ガバナンスと言った部門の強化が求められるようになったのは良い点でもある。楽観主義で希望を持って生活していくことで希望が見出せるのでは無いだろうか。
    ※人は富の分配が「公正」である限り「不平等」であることを好むという研究結果がある。

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著者プロフィール

1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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