アメリカン・ブッダ (ハヤカワ文庫JA) [Kindle]

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  • 早川書房
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感想・レビュー・書評

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  • 2020-09-13 柴田勝家「アメリカン・ブッダ」読了

    実は、「ニルヤの島」はよくわからなかった。硬質な文体と内容に齟齬を感じたのだ。無意識に神話的なモノを期待していたせいかもしれない。
    だが本短編集はどれも面白かった。特に表題作は思索の果てに神話の域に達している。必読。

  • 表題作はスケールがでかくてよく意味が分からないなりにおもしろかった。宇宙を作ったら結局は同じ地球ができちゃうみたいな入れ子構造みたいな世界観はそれだけでわくわくするし、どんなにテクノロジーが発展しても恋人とうまくいかないというのもとても人間的でよい。
    VRの話も興味深かったけどいささか淡々としすぎていた。
    南方熊楠の話はSFというよりは奇譚という感じ?熊楠が主人公だと色々許せてしまう感じない?
    タイムリープ物も好きだった。記憶子という要素と、過去に起こった出来事の取り戻せなさは、叙情的だった。
    著者の作品は長篇2つを過去に途中で放り出していた、初めて読了できた。

  • 民族的?な視点がある変わったSF
    癖があるけど、興味深く読める

  • 「アメリカン・ブッダ」(柴田勝家)を読んだ。
    『こういう物語を語れる人がいたんだな。』
    それが読み終わって最初に思ったこと。
    収録された六篇の中では「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」が出色である。
    この先の柴田勝家氏の動向をウォッチしていきたい。
    きっと何かやってくれそうだ。

  • 表題作を含む6編。一生をVRを装着して暮らす山岳民族、仏教を信奉するネイティブ・アメリカン。SFと民俗学が融合した不思議な世界が展開する。最も心を打ったのは素粒子研究施設で女の子が未来の自分と出会ってしまう「鏡石異譚」。自分ってどこにいるんだろう。

  • 初・柴田勝家作品。面白かった!これは存命国内SF作家で追う対象が一人増えたという嬉しさ。『ヒト夜の永い夢』と『走馬灯のセトリは考えておいて』を購入する。(同一作者と思われる表紙のイラスト、好みすぎる)

    作品はライトにエンターテインメントで面白かったのだけど、柴田勝家…?に対しては解説できちんと回収してくれているのでそれも有難かった笑。検索して柴田…勝家…だなご本人となったので笑、「ハイライトを失った目で「はい、柴田勝家でした」って言う」という文章にそれな?ってなってました笑。一人称が「ワシ」で、編集部から「殿」と呼ばれているの面白すぎるし、そもそも柴田勝家とかってペンネームにしていいんだという驚き。早川からSF武将作家って呼ばれているのもウケる。

    さて本編である。
    「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」相手が本当に存在しているのか、イメージの中にしかいない相手なのか、究極を突き詰めれば判断できないという話をSF×民俗学で著したもの。第49回星雲賞【日本短編部門】を受賞した作品とあってテンポもいいし、アプローチもユニークだし面白かった。最後の「私は自作した籐座に腰掛けながら、文字列だけの世界に夢を見て、見も知らぬ学生達の実存に思いを馳せた」

    「鏡石異譚」さわやかな(?)タイムトラベルもの。実際に建設中の国際リニアコライダーと遠野物語を組み合わせるというもの。面白かった

    「邪義の壁」これはSFではなくホラーですね。"ウワヌリ"の意味が分かってぞっとする。夏にぴったり。

    「一八九七年:龍動幕の内」熊楠と孫文のミステリちっくなドタバタ劇、楽しかったので『ヒト夜の永い夢』が楽しみなのだ。
    「僕が唯一、神仏として崇めるとしたら、それは華厳経なんかで説かれる大日如来だ。これは仏ではない。釈迦が至った悟りの境地そのもの、いわば全宇宙の真理だ」…「あらゆる神格は真理という光によって生まれた、個人あるいは民衆の精神の影だ。影に実体はないが、だからといって存在していない訳じゃないからな」

    「検疫官」思い出すはブラッドベリの『華氏451度』

    「アメリカン・ブッダ」私はこの表題作が一番好きだったなあ。
    そもそもの設定も、その中で生まれる争いや対立などの話も納得しやすかったし、主人公である彼が(ミラクルマンの語る幼馴染と分かったときの驚き!)宇宙の開闢からやり直し最後にたどり着いた結論というのも、今の21世紀を生きる、日本人には、腑に落ちやすかったというのもある。最後の「君の、本当の名前はミロクだ」は少し千と千尋っぽいんだけど、エンディングという感じで好きでした笑

  • 『雲南省スー族におけるVR技術の使用例』

     複数のSF小説傑作選的な本にも収録された(私も最初は『2010年代SF傑作選』で読んだ)短編。山奥の少数民族についての研究論文的なアプローチで、一生VRを嵌めたまま、VRの世界で生きる部族を描く。
     最初から最後まで結構私はぶるぶる衝撃に打ち震えながら読んだんだけど、一番ガーンと来たのが、村が停電になった時のエピソード。

    『鏡石異譚』

     時間は前にだけすすむのか。マイナス方向に進むものがあるのじゃないか、それが宇宙の大半を満たしているけれど、人間は前に進む時間しか認識できないから「見えない」んじゃないのか……という話を、女の子の成長とタイムトラベルと、さらに民俗学に絡めて来てしかもストーリーが良いってどういうことだ!

    『邪義の壁』

     これはホラーだった。
     最後の到達点からお話の最初をそおっと振り返ると、つぅんと恐さが鼻に抜ける。

    『一八九七年:龍動幕の内』

     柴田さんは山田風太郎がお好きなんじゃないだろうか。私は山田風太郎大好きなので、そこまで「柴田さん面白いな」とは思っていたけれど、この話で「面白い→好き」になった。これは、性癖の話なので、個人差あるカモとは思う。でも、これ読んで、柴田さんの他の本も買いあさりスイッチ入った。この現象、数年前の野崎まど以来(あれ、宮内悠介さんと小川哲さんもあったよね……?)

    『検疫官』

     ものがたりが疫病。この設定で展開していく世界が、検疫官の視点でするっと入って来る。この検疫官、「良い人」なのだ。だから、ラストが沁みる。本当に沁みる。最後の1文で、気持ちをすべて書き切ってあって、これも好き。

    『アメリカン・ブッダ』

     柴田さんは仏教の布教をしたらいいと思う。経典はこの本で好いと思う。大乗よりもさらにたくさんの人が救える。超大乗ってことで、どう。
     スケールの大きさもカッコイイんだけど、Mアメリカとリアル世界の時間差の話がもっとも萌えた。

    最後に、『そして、池澤春奈さんの後書きが面白い!』

     最初の『スー族』を電子で購入して、同時期に図書館で借りたSF傑作選に載ってたのにのけぞり、さらに図書館で借りたこの本にもあったけど、面白すぎてやっぱり自分で持ってたいと単行本購入。
     つまり、要約すると、私はこの本で柴田勝家にハマりました!

  • アメリカンブッダ
    インディアン
    仏陀の教え
    未来 過去
    弥勒菩薩
    救い

  • 短編集。どの作品も一定以上の面白さがあり、外れなしの民俗学×SF小説だった。
    目の前の事象に対して、巨視的な枠でもう一度見つめ直す発想の作品が多かった。
    奇妙な風習や民俗学的な謎がSFで理屈付けられて解明すような作りではなく、むしろSFガジェットは人間が巨視的なものの見方をするための(あるいはさせないための)ツールとして使われており、この距離感は現代的だなと感じた。

  • 六篇のSF×民俗(どちらかというと文化人類学?)短編集。

    ・VR空間に生きる少数民族についてのレポート(雲南省スー族におけるVR技術の使用例)
    …個人的にもうちょっとがっちりレポート形式にしても良かったのかなと思う。

    ・東北のリニア・コライダーの坑内に転落した事を契機に未来の/過去の自分に会うようになった件(鏡石異譚)
    …遠野物語──が、個人的に頭の底に引っ掛かり続けて素直に読むことが出来なかったので、他の方の評に譲ります。鏡石は地名? それとも遠野物語の原型となる話を柳田に語った佐々木鏡石?  遠野物語は本文中にも登場するほか、章立てにもオシラサマ、山女、神隠し等が登場。鏡石の語り/柳田の文体、過去を語る今、という二重性を意図してのタイトルか。とはいえ、河童回りの話の生臭さや陰惨さ、何よりある種のリアルさが大分減殺されており、綺麗だけど教科書的な優秀さが拭えない。遠野物語が好きすぎるせいだとおもうので、他の方の評も是非。

    ・実家の壁の中から次々に出て来る人骨と信仰の歴史(邪義の壁)
    …どんどん出て来る淫祠邪教! ただし全員死んでいる。死んでいるので生身の人間が怖いなどつまらない話には落ちず(生身の人間も怖いけど)、物言わぬが遺骨であり、ぼろぼろになった漆喰の壁であるのが妙な凄みになっている。

    ・熊楠、ロンドンで孫文と天使の謎を解くの巻(一八九七:龍動幕の内)
    …熊楠を主人公にしたらそりゃあ面白くなるわ、間違いない。一番楽しく読めた短編。

    ・テクストだけが物語だと思う勿れ(検疫官)、
    …物語の所持・持ち込みを禁じられた国の検疫官を主人公が、少年:アップステアーとの束の間の交流を経て墜落して行くまでを描く。華氏451を思わせる世界観だが、物語がないはずの世界でいかに物語が語りえるか・語らさざるを得ないかという観点がユニークで絶望的。

    ・メタ世界とインディアンの間で語られる宇宙の歴史(アメリカン・ブッダ)
    …表題作にして一番スケールが大きく、読み応えがある。丁寧に人類の(主にアメリカ大陸の)歴史がなぞられて行く様が見事。

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著者プロフィール

SF作家。ペンネームは戦国武将の柴田勝家にちなんだもの。1987年、東京都生まれ。成城大学大学院(文学研究科日本常民文化専攻)在学中にハヤカワSFコンテスト・大賞を受賞し、『ニルヤの島』で2014年にデビュー。このほか著作に、『ワールド・インシュランス』(星海社FICTIONS)、星雲賞日本短編部門を受賞した表題作を収録する『アメリカン・ブッダ』(ハヤカワ文庫JA)などがある。

「2022年 『メイド喫茶探偵黒苺フガシの事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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