正義を振りかざす「極端な人」の正体 (光文社新書) [Kindle]

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  • 女子レスラーK(22歳)が、ネット上の誹謗中傷と避難に耐えられず自死した。ネットには、「早く消えろ」「ブス」「メスゴリラ」「邪魔や」「全日本人はあなたの敵です」といったメッセージが1日数百件近くあった。そのフジテレビの番組では「演出指示に従うこと」という誓約書があったという。フジテレビはリアリティ番組で人気を得るために、視聴者の批判を煽ることが常習化していた。「弱い私でごめんなさい」「愛してる。楽しく長生きしてね。ごめんね」という最後の投稿で、自死した。痛ましいことだ。誹謗中傷している人は、多くはなくごく一部で、一人で100件以上送った人もいたという。そのような「極端な人」によって自殺させられる事件が、多発している。
    そのような「極端な人」は、なぜ生まれるのか?
    フィルターバブルという現象があって、自由に発信できる環境から、自分の知りたいことや馴染みのあることだけの情報をとることで、その中の一部の人が「極端な人」になってしまう。また、「怒り」は、拡散しやすく、「楽しい・嬉しい・悲しい・好き」は拡散しない。社会に対して、攻撃的で、不寛容で、否定的な人などの極端な考え方を持っている人がネットでは成長する。
    つまり、ネットが極端な人を生み出し、非対面であることで攻撃しやすくなる。その極端な意見は拡散されやすい。コロナ感染者を、ネットでは特定して攻撃するというのもその現象の一つとなる。
    ネットに書き込まれた内容は、投稿者が消さない限り残るという持続性があり、可視性がある。そこから、野次馬的便乗批判が増幅していくことになる。
    「不謹慎」という言葉がネット上で形成され、「不謹慎狩り」が行われるようになる。
    しかし、そのネット上の誹謗中傷や不謹慎狩りは、その話題がマスメディアで取り上げられると、さらに激しくなるのである。テレビは視聴率至上主義で、話題に飛びつき、怒りを増幅し、さらにネットで拡散させることになる。「極端な人」をマスメディアが取り上げ、さらに増幅させる。
    コロナによって、自宅での生活時間が長くなって、SNSに触れる時間が多くなることによって、自分が不快と感じる情報に接することで、批判や誹謗中傷が書き込まれやすくなってしまう。それは、コロナによる先行きの見えない不安や実害も生じた社会不安が自粛警察を発生しやすくする。
    政府が自粛を要請しているという大義名分で、SNS自粛警察は、正義の旗をかかげることができ、自己理由の正当性が組み立てられることになる。
    「極端な人」は、低学歴の引きこもりや学生ではなく、男性が多く、年収が高く、主任・係長クラス以上というアンケート調査の結果が出た。サザエさんの番組が、コロナ自粛中に旅行に出ようとしたことが不謹慎と思われ、「許せない」と思い、正義感から「罰を与えよう」という極端な人から、一人で100回以上書き込むひと「超極端な人」によって、炎上が巻き起こる。次から次へ、「不謹慎」探しをして、攻撃して鬱憤を晴らすことになる。批判した対象が社会的な制裁を受け、正義中毒に陥っていく。正義中毒によって、不満を解消する。酔っ払いが自分は酔ってないと思ったりするが、「自分が正しい」と思ったら、一番の危険な兆候かもしれない。正義の人ほど怪しい。
    極端な人にならないための5ケ条①情報の偏りを知る。②自分の正義感に敏感になる。③自分を客観的に見る。④情報から一度距離をとって見る。⑤他者を尊重する。
    結局は、「イラッ」とした時に、どう冷静に対処できるかということが一番の分かれ目なんだね。
    さて、今日も イラってしないように、心穏やかに生きよう。でも、すぐに人のミスを探してしまうんだよね。困ったもんだ。

  • 自分の正義を絶対と思い込み、他人を執拗に攻撃してくる「極端な人」につてデータ分析をもとに考察した本。

    SNSでの誹謗中傷に不謹慎狩り、自粛警察、悪質クレーマー。こういったことを行う「極端な人」とはどんな人なのか。そして、炎上はどういったメカニズムになっているのかを、本書はデータに基づいて読み解いています。

    「極端な人」にならないようにするには、自分の正義に酔わないこと。正義にこだわりすぎると悪酔いして取り返しのつかないことになります。

  • 不謹慎だとかとにかく正義を振り翳すことが多い気がしていた。
    ノイジーマイノリティとかラウドマイノリティなどと表現されてごく一部だとはいうことはなんとなく理解はしていたけれど、研究データをもとに示されていて納得しやすかった。
    とはいえ、こういった一部の正義感が他の人を萎縮させ、失敗を許せない空気感にしているような気がしてならない。
    そう思う一方で、自分の正義感をぶつけているだけじゃないのかと反省もした。

    結局、いろんな人の意見を聞いてバランスを保つことが大事なのだろう

  • SNSをやっているけれど炎上が怖いと思っている方、SNSを始めたばかりの方へ

    ( オンラインコミュニティ「Book Bar for Leaders」内で紹介 https://www.bizmentor.jp/bookbar )

  • ネットでよく見る極論について理解したくて手に取った。

  • 最近、SNSでの心無い発言をきっかけにした社会問題が相次いでいる。最たるものに至っては、多額の損害賠償に発展したり、あるいは痛ましい結末となって今うことも多い。本書では、そういったSNS上での誹謗中傷や行き過ぎた批判の実態や、それが起こってしまう原因を分析し、我々はそれにどう向き合い、SNSと付き合っていくべきなのかについて検討を加えている。

    本書の良いところは、SNS上での情報や「極端な人」の特徴について、多くの実証研究の結果をふまえて、データを通じて検討を加えているところである。その取組を通じ、例えば「誹謗中傷を繰り返す人は社会的地位がそこそこ高い傾向が強い」「実名制による抑止効果は大きくない」といった、俗説や我々の直感に反する研究も紹介されていたりと、非常に興味深い。

    ただやはり、一朝一夕にこのような誹謗中傷や炎上問題を解決する手段はなく、本書の結論部分からも、特効薬的な解決策を提示できない筆者のもどかしさが伝わってくる。SNSとの付き合い方を考える、よいきっかけとなる本である。ぜひ多くの人に手に取ってもらいたい。

  • 「自分は分かっている」と考えている事でも、こうしてまとまって読むと「ちょっと考えが甘かったな」と感じる とりあえず……
    今手に持っているスマートフォンを手放す時間を増やそう
    PCに向かう時間も減らそう、まずはそこから始めよう

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著者プロフィール

山口 真一(やまぐち しんいち) 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授。1986年生まれ。博士(経済学・慶應義塾大学)。2020年より現職。専門は計量経済学。研究分野は,ネットメディア論,情報経済論,情報社会のビジネスなど。「あさイチ」「クローズアップ現代+」(NHK)や「日本経済新聞」をはじめ,メディアにも多数出演・掲載。KDDI Foundation Award 貢献賞,組織学会高宮賞,情報通信学会論文賞(2 回),電気通信普及財団賞などを受賞。主な著作に『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社),『なぜ,それは儲かるのか』(草思社),『炎上とクチコミの経済学』(朝日新聞出版),『ネット炎上の研究』(勁草書房)などがある。他に,東京大学客員連携研究員,早稲田大学兼任講師,株式会社エコノミクスデザインシニアエコノミスト,日本リスクコミュニケーション協会理事,シエンプレ株式会社顧問,日本経済新聞Think! エキスパート,Yahoo! ニュースオーサー,総務省・厚生労働省の検討会委員などを務める。

「2022年 『ソーシャルメディア解体全書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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