- Amazon.co.jp ・電子書籍 (351ページ)
感想・レビュー・書評
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染井為人さんによる、生活保護受給者、社会保険事務所のケースワーカー、ヤクザなどを絡めた社会派サスペンス。
盛っているところも多いだろうが、ケースワーカーの仕事ぶり、不正受給者の心の闇が詳細に描かれていて勉強になる。
クライマックスにかけて負の連鎖が続いていき、大きな事件が起き、エンディングを迎える。
染井さんの作品は『正体』に続き2作目となったが、リアリティがすごく、物語に没頭できていい。
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身につまされる感じがして、とても恐ろしかった。歯車が悪い方、悪い方に回り、ケースである山田や愛美、ケースワーカーである高野や佐々木が、どっぷりと泥沼に浸かってゆく過程から目が離せなかった。中でも、佐々木の転落する様やその後の絶望には、胸がいっぱいになった。嫌な気分になるのに面白すぎて読まずにはいられなかった。
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クズとワルしか出てこない。
救いがない。
結局怖いのは人間だよね、ってありきたりの感想しか出てこないが、怖いもの見たさでサクサク読んでしまった。
繰り返して読む本ではないが、映画化を楽しみにしている自分がいたりする。 -
王子様なんていない。
読み終わった感想は、まずこれ。
毒親や貧困から抜け出した人のノンフィクションやエッセイ、自伝がもてはやされる中、この小説は終始、残酷なフィクションであり続けた。
だが体感、現実に近いのはこの作品だろう。
「王子様」「理解のある彼くん」「親よりも親身になってくれる大人」が現れるのは、実存的(精神的)貧困・経済的貧困にあえいでいる人々にとって、ごくひとつまみのケースにすぎない。
大抵の貧困者は、この小説のように何の救いもなく終わっていく。
よしんば「理解のある彼くん」的存在が現れても、まともな人間に縁のなかった者は、どう接していいのか分からず、共倒れになるか逃げられるかする。
この小説の愛美のように。
はたから見れば「素直になればいい」のだろうが、実存的貧困者は「素直」な自分が分からないのだ。
あとがきにあったように、これが他人事である以上、見る者にとっては喜劇的なドミノに思えるだろう。
だが、貧困者自身や、彼らの身近にいる者にとっては、ノンフィクションよりも心に迫るフィクションに違いない。
そんな中に砂粒のように希望が散りばめられている点も、この作品と現実との共通点だと思う。 -
Kindle Unlimitedにて読了。
生活保護不正受給者と、保険福祉事務所のケースワーカーとの戦いにとどまらず、ケースワーカーが受給者を強請ったり、やくざが生活保護受給者を使って不正に金儲けしたり、ケースワーカーが受給者に恋愛感情を抱いたり、、、さらに複雑に絡み合っていく話。
本当に救いのない話なので、読んでて気分悪くなること請け合いです。負のスパイラルって本当に回転が早いんだなあと思います。いったんダメになると、さらにダメになるのが早すぎる。 -
救い用の無い話でした。
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底辺を巡る地獄絵図。
生活保護の不正受給とそれに寄生するものたちの右往左往、という感じで。
金本。ヤクザ。生活保護不正受給の「カモ」として高野や佐々木を狙い、手下を使って収奪する。
山田。金本の子分として詐欺の片棒を担ぐ。
高野。市役所勤めの1人目の「被害者」。愛実に心身ともに騙され、破滅する。
愛実。金本、山田の放った第一の美人局。高野、次に佐々木と市役所の生活保護担当職員を次々と篭絡し、彼らを「地獄」に放り込む。
美空;愛実の娘。こころを閉ざし、「絵」を描くことに没頭する。
佐々木;市役所職員。愛美におぼれ、MDMA、ドラッグ漬けにされることで心身ともに破壊され、破滅する。
莉華。愛実の友人であり金本の愛人。
佳澄。息子と2人暮らし。万引き癖が止められず、生活保護にすべてをかけるが裏切られる。
有子。高野、佐々木の同僚。
基本的にこの者たちの「底辺でのあしのひっぱりあい」であり、それ以上の内容はない。
地獄のような狭い人間関係と弱さを基軸にひっぱりあい、依存しあうだけの人間関係。
展開もそれ以上のものではなく、「逆転」もないだけに面白味には欠ける。 -
染井先生はいつも一寸先の闇を示すのが上手いなと
作中ずっと鬱々とした暗さかと思えば終盤の昭和を感じさせるドタバタ劇でくすりと笑えたのも良かった