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感想・レビュー・書評
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タイトルの
八月の銀の雪が一番良かったかな
ちょっとバカにしていた
コンビニで働く留学生が
思わぬ地球の神秘に接していたことを知り
励まされる若者
なんということがない出来事だからこそ
自分を変えるきっかけになるんですよね
とん と腑に落ちる瞬間
科学という真実に触れる瞬間と
うまく重なって説得力がありました
科学ってロマンチックだな
とも思います詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
生活と科学、その組み合わせが絶妙。
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「月まで三キロ」と同様、生物学や気象学など理系知識をふんだんに盛り込んだ5つの短編。
特に最初の2作、「八月の銀の雪」と「海へ還る日」が好き。
地球の内核を研究するベトナム人大学院生と、人前で喋ることが苦手で内定が取れない大学生の話。人の外側だけで判断すること、外側だけを取り繕うことの愚かさを思い、「人の外からは見えない芯のところに静かに降り積もる何かを耳を澄ませて聴くこと」という言葉に胸打たれて鼻の奥がツンと痛くなった。
それぞれの問題を抱えた登場人物たちが、自然や生き物の大きな営みに目を向けることで、癒され、勇気づけられ、前を向く力を与えられる。優しさと清廉さに溢れた爽やかな作品。
最後の作品は、科学が戦争に使われた過去の痛みを描いて異色だが、科学に救われるのも人間、悪用するのも人間なんだな。それでも十万年後に人が滅びた後も風は変わらず吹いているだろうことに救われる思い。
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短編5話。【八月の銀の雪】ベトナム人留学生が語る地球の内核の銀色の森に降る鉄の雪の話が良かった。目に見えない我々の足元深くにこんな壮大なことが起こっていることを改めて知る。【海は還る日】国立自然史博物館でのクジラの親子関係の話。クジラの歌声に魅了はれた。【アルノーと檸檬】迷子になった鳩。鳩の帰巣本能や収穫的地図。主人公の正樹は檸檬の匂いを嗅ぎ疎遠になっている実家を鳩の帰巣本能に重ね合わせたのだろう。【玻璃を拾う】珪藻土から取り出したガラスの殻の神秘。【十万年の西風】原発使用済み核燃料と処分と偏西風に乗せた先の大戦での風船爆弾。風船爆弾の放球時の事故で父親が戦死したその地で凧揚げをする元高層気象観測官の思いにジーンときた。電力会社の隠蔽工作は然り。
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色んなテーマの短編集。地球の中で雪が降っているとか、伝書鳩とか、
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理系の専門的な話がエッセンスとして流れているが、あくまで人間小説。
私の好きな種類。すぐに同じ著者の別の本も手配した。
著者略歴をみると地球惑星科学の博士課程修了とのこと。なるほど。
地球46億年の歴史を研究していると、人間の一生なんてほんのちっぽけなものに感じる、というのは恩師の言葉であるが、この著者の根底にもその気持ちがあるのではと感じた。 -
5編からなる短編集。
主人公が面倒なトラブルに巻き込まれたり、内向的な性格だったりというパターンの始まりなのですが、そこからの山場への話の進め方や切り口がどれも素晴らしく、素直に、凄い、と呟きたくなるほど。
それぞれの話にちょっと専門分野的な話題が出てくるのですが、そのウンチクまでもが興味深いのです。
短編集によくある消化不良なブツッという終わり方でななく、終わり方も美しい。
どの話もハズレがない、むしろとても面白かったです。 -
なんか深く考えさせられる話ばかりだった。
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短編集は苦手です。
その世界に入ったと思ったらすぐに追い出されてしまったような感覚をいつも受けます。
この作品たちもそうですが、いつもと違うのは専門知識が必要な話が多く、参考文献の数を見てもよく練られたもの達なのだな、というのがわかります。