死ぬ瞬間 死とその過程について (中公文庫) [Kindle]

  • 中央公論新社 (2020年1月25日発売)
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  • 本 ・電子書籍 (400ページ)

感想・レビュー・書評

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  • 死に瀕した重病患者たちのインタビューを収集し、死への受容の過程を考察した本。

    上記のような内容なので、表題の「死の瞬間」は変だなと思っていたら、ちゃんと訳者があとがきで理由を説明していた。そこには著者のその後の顛末(スピリチュアル系に傾倒)もあり、いみじくも著者本人が冒頭で記した「ホスピスで末期患者がモノのように扱われてしまうのは、周囲の医療従事者が死の存在から目をそらすため」という趣旨の文を思い起こさせる。

    それだけ死を直視するのは難しい。自分のものならなおさら。しかし向き合わざるを得ないとき、人間は、怒り、拒絶、取引、希望等、本書に書かれたような様々な反応を見せる。
    意外だったのは、死を本当に許容してしまうと、人は虚脱状態になってしまうこと。イメージでは死を受け入れたほうが悟りの境地みたいで格好いい気がしていたけれど、インタビューの記録を見ると、現実逃避や怒り等、どんな形でも死から抗っている患者たちのほうが、人間として生き生きとして見えた。

    他にも、死を半ば受容しているのに勝手に自分の手術を決められて(しかし拒否もできず)「死なせてくれない」患者もあり、死そのものよりもその過程で苦しむ場合も多い。それも死を見つめることのできる人間ならでは。
    中年になってきて、人生の終着点としての死を考えなければと思って読んだけれど、そもそもそんなこと必要ないかも(むしろ、考えたらネガティブになるだけ)と考え直した。

  • アナロジーを多用するような精神分析的アプローチは全く論理的でないから嫌いだけど、患者の本質的な利益を考え真摯に向き合う姿勢は学ぶべき点が多いと思いました。書籍で取り上げられる事例からもわかりますが、死に向けて踏む心理的なプロセスは個人差が大きく、一般化されるものでも無いと考えますが、いくつかの時期やパターンがあることは関わる人間にとって(つまり幼くして死ぬことがなかった人間全て)知っておいて損は無いことだとも考えます。

  • 死について、臨床心理学的にアプローチするときには避けて通れない本。

    訳者あとがきによると、後年著者は死後生や輪廻転生に傾倒していくらしいが、むしろそっちを読みたかった。これから読む。

    200人への直接インタビューとか、精力的な仕事をした人。それは単なる知的好奇心の満足のためではなく、治療の一環だと信じる。

    医療従事者でなくても、死ぬのが恐いと思っている人は読むことをすすめる。本書は末期患者のエピソード集ではなく、読者が自分事として死を考えるための貴重なガイドだ。

  • 人は、不治の病を宣告された時、否認→怒り→取引→抑うつ→受容というプロセスを辿るという話。
    精神科医が実際に末期の患者をインタビューして周る。

    私も母のがんを知った時、似たような経緯を辿ったからとてもよく理解できた。
    かなり分かりにくい翻訳で読みにくい部分が多かった。
    著者の精神科医は、当初は同業者から猛批判にあったが、地道に研究とセミナーを続けて、全世界に認められるにまでになった。

    確かに、死にゆく心理過程を研究するために、実際に死に瀕している末期患者から直接話を聞こうとしたのは画期的だと思う。
    インタビューで印象的だったのは、告知をされている患者も、されていない患者も自分の余命が長くないことを知っていたということ。
    やはりいつまでも隠しきれるものではないのだと理解した。

    著者はその後スピリチュアルの世界に傾倒してしまったようで、それが残念でならない。医者として、あくまで客観的、科学的な人であって欲しかった。

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著者プロフィール

エリザベス・キューブラー・ロス

精神科医。一九二六年、スイスのチューリヒに生まれる。チューリヒ大学に学び、一九五七年学位取得。その後渡米し、ニューヨークのマンハッタン州立病院、コロラド大学病院などをへて、一九六五年シカゴ大学ビリングズ病院で「死とその過程」に関するセミナーをはじめる。一九六九年、『死ぬ瞬間』を出版して国際的に有名になる。著書多数。二〇〇四年、死去。

「2020年 『「死ぬ瞬間」と死後の生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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