高瀬庄左衛門御留書 [Kindle]

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  • 講談社
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感想 : 15
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  • 舞台は片田舎、禄高十万石の神山藩。主人公、高瀬庄左衛門は郡方の下役。郡方は、担当する郷村を廻っては、村の様子を把握し、米の出来具合を調べ、穫れ高を記録するお役目。「各村の庄屋から申告された収穫高や、みずからおこなった検見、見聞きした現地のようすなどを御留書と呼ばれる帳面にしるし」上役に提出する。

    村々を廻り歩くのは、五十になる庄左衛門にはいささか辛い。息子も既に郡方に出仕しており、ボチボチ引退も見えている。そんな庄左衛門の息子が、お役目で村を巡る途中に事故死してしまう。子がなかったため、嫁の志穂を実家に帰したが、懇願され、手すさびの絵を教えることに。庄左衛門は、志穂から素行不審な弟のことを相談され、調べているうちに、藩を揺るがす事件に巻き込まれてしまう。郡奉行の役宅に「強訴の企てあり」との投げ文もあり、藩内に不穏な空気が漂う。

    ほろ苦い青春エピソードあり、藩を揺るがす陰謀や強訴事件あり、因縁の真剣勝負あり、老いらくの恋あり、と内容は盛り沢山。そして物語は淡々とした筆致で展開していくので、かえって味わい深かった。庄左衛門、志穂、弦之助、余吾平、半次…と登場人物も魅力的なキャラばかり。特に、軽輩だが誇りを持って堅実に生きようとする庄左衛門の姿が眩しい。

    藤沢周平の「蝉しぐれ」や「三屋清左衛門残日録」を彷彿とさせる、良質な時代小説だった。実に面白かった! 著者の作品、これから注目していきたい。

  • 読み始めたら明日は月曜だというのに夜中までかかって一気に読んでしまった。若い頃はそんなことは多々あったが、この年になってそこまで入り込んだのは初めてだ。気品が感じられる。文体にも登場人物にも。静かに物語は始まるのだが、次第に熱を帯びてゆき、最後にはすべての伏線を回収しながら突き抜けるように最高潮を迎える。この作家の作品をもっと読みたくなった。

  • オーディオブック
    定年間際の老武士が、藩内の派閥抗争に巻き込まれ、自分の息子を失いつつも、事件を解決するミステリ。といっても解決したという能動的な感じではなく、淡々と生きていたら、結果的に解決したので、ミステリではなく、事件簿かもしれない。事件自体は大したことはないが、主人公の淡々とした所作、考え方、行動が日本画の淡い色彩で目に浮かび、BGMはなんとなくポクポクという単調な足音が聞こえてくるような、読了の爽快感はないが、好きなラジオをながら聞くように集中しないで聞ける(読める)小説

  • 暮らしを中心とした風俗描写
    巻き込まれてつつ芯の強い主人公
    1人ひとりのキャラクター性
    読後の満足感○

  • Kindleセール

  • 自然の風景描写が細かく一気に江戸時代にワープするような時代小説であった。主人公も自分と同年代である事から、心理描写にも共感を覚え、自分もこの様に淡々と年を取っていくのかと思った。ただ、最後にどんでん返しがありハッピーエンドで終わる事から読後感は爽やかであった。

  • 本当に本格的な時代小説。藤沢周平、池波正太郎の系統に続く作家だと思う。
    一貫してゆったりとした時間が流れ、その中から人物の心理がくっきりと浮かび上がってくる。ふだん聞かなくなった言葉遣いが、さりげなく使われていて、格調高い。
    いい脇役の出る小説はそれだけで評価できるんだけど、この作品もそうだ。弦之助、半次、余吾平。いなくてはこの小説は成り立たないと思わせる脇役たち。
    読んで充実感のある本だった。世の中にあふれている本からこういう作品を見つけられると、よくやった自分、と言いたくなる。

  • 時代小説にほしい要素がふんだんに盛り込まれている。
    まんま良質の映画になりそう。

    次作以降も大いに期待できそうな作者さん。

  • 4.2

  • 今年度上期の直木賞候補作を順に読んでいるが、これが、「おれたちの歌をうたえ」「テスカトリポカ」に続いて三作品目。
    短編連作集のようにもみえるが、一年目、二年目に分かれた中長編小説のようでもある。
    昨年の傾向を踏襲するのなら三作品の中ではこれが一番直木賞に近いかも知れない。
    庄左衛門の生き方、いいねぇ。

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著者プロフィール

1969年生まれ。兵庫県出身。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社勤務を経て、フリーのライター・編集・校正者となる。2016年『いのちがけ 加賀百万石の礎』で第2回「決戦!小説大賞」を受賞。2021年『高瀬庄左衛門御留書』で第34回山本周五郎賞候補、第165回直木賞候補作になる。他の著書に『逆転の戦国史』がある。

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