フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔 (講談社現代新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 現在のコンピューターの原型となる計算機を発明したとして有名なノイマンですが、その功績ははるかに広い範囲に及びます。本書「はじめに」でも紹介されていますが、論理学、数学、物理学、化学、計算機科学、情報工学、生物学、気象学、経済学、心理学、社会学、政治学におよぶ150編の論文を発表しています。そのノイマンの生い立ちをたどるノンフィクションです。
    6歳のころ、任意に指定された電話帳のページを暗唱したり、そのページの電話番号を全て暗算で足し合わせたりといったすさまじい記憶力と計算力のエピソードに始まり、成長に伴って次々と常人からかけ離れた頭脳の持ち主としてのエピソードが続きます。
    20代以降、ともに研究に携わった科学者としてヴェルナー・ハイゼンベルグ、エルヴィン・シュレーディンガー、ポール・ディラック、ニールス・ボーア、エンリコ・フェルミ、ロバート・オッペンハイマー、アルバート・アインシュタインなど、大学で理系だった人なら一度は名前を聞いたことがある錚々たるメンバーが挙がっています。数学、物理学にとどまらず、ゲーム理論や数値シミュレーションの概念を最初に構築したのもノイマンでした。
    本書の書名で”人間のフリをした悪魔”との副題がついているのは次のような発言からです。マンハッタン計画に従事していた際、「我々が作っているのは怪物で、それは歴史を変える力を持っている!それでも私は科学者として科学的に可能だとわかっていることは、やり遂げなければならない。それがどんなに恐ろしいことだったとしても」と語っているところによるものです。本書に「ノイマンの思想の根底にあるのは科学で可能なことは徹底的に突き詰めるべきという『科学優先主義』、目的のためならどんな非人道的兵器でも許されるという『非人道主義』である」との一節もあります。戦後、ソ連がアメリカに続いて原爆を開発した際、「(アメリカ有利なうちに)ソ連を攻撃するか否かが問題なのではなく、いつ攻撃するかが問題だ。明日攻撃するというなら、なぜ今日ではないのか。今日の5時に攻撃するのなら、なぜ1時ではないのか、と言いたい」とインタビューに答えた証言が紹介されています。
    科学技術に対する姿勢としては、今の時代から考えると非常に危険な思想と言えますが、ただこれぐらい突き抜けた才能の持ち主によって科学技術のステージが大きく進んだのは否定できないと思います。

  •  「悪魔」というのはキャッチャーすぎるタイトルであるように感じる。原爆に対する戦略もノイマンからすれば単にのちに彼自身が設立に貢献したというわれるゲーム理論的に合理的だからにすぎない。かといって人間性をもっていないかというと、私生活のエピソードを見る限りとても人間味にあふれていて彼により救われた人間(ゲーデル等)が数多くいるのである。

     時を同じくしてコンピュータの基礎を開発したチューリングの映画をちょうど見ていたため、二人の天才のたどる光と影がその後の両国の科学発展にも影響したかと思うと感慨深い。(最もノイマンはコンピュータに限らず無数の分野にもわたる天才であるが。)現代で最も知財にうるさいと思われる米国がノイマンの公開された論文により多大な恩恵を受けたのに対して、秘匿した英国がその後の果実を得られなかったのは皮肉である。

     

  • すごく頭がいい人の究極形というか、合理性や効率をすべてに優先させる脳みそを持たせるとこうなりますよねというのがフォン・ノイマンフォン・ノイマンという人である。ノイマンがどのように「天才」だったのかを、エピソードをつなげてわかりやすく読み物にしたという一冊であり、その目的は達していると思う。自分としては本書の参考図書にも当然挙げられていた『囚人のジレンマ―フォン・ノイマンとゲームの理論』(青土社.1995)のほうが読み応えがあった気がする。どのように、の部分については、数学および今日のコンピュータ科学に対する貢献について比重がある記述だが、これは2021年の読み手にわかりやすいようにという親切かもしれない。学者の世界だけでなく、現実世界の多方面に影響を及ぼした科学者であることは間違いないので、今後も世の中が変化するにつれ、評価のされ方が変わるのかもしれない。

  • ノイマンのすごさがわかる。
    いや、すごすぎてわからん。

    客観的な事実と、関係者から見たノイマンの姿が、次々と列挙されていく。
    その時々でノイマンは何を考え、感じていたのか。
    自伝ではないので、このあたりが結局わからないのが残念。

    色々なエピソードを見ても、
    私には、ノイマンが悪魔には感じないんだけどなぁ・・・

  •  世紀の大天才であるフォン・ノイマンの伝記である。子供の頃の逸話は、天才ぶりを大いに発揮していておもしろい。天才の話は凄すぎて大好きである。
     へ~と思ったのは、ウィグナー、テラーなども同時期にブダペストのギムナジウムに通学していたことである。その時期のハンガリーに関心が向いてしまう。
     フォン・ノイマンの業績について、改めて驚いてしまう。数学、物理学、コンピューター、ゲーム理論、暗号解読、弾道学など、一つでも十分にその道の大家と言えるほどの仕事である。その道の人にその優秀さは十分に分かるだろうけど、他の道の優秀さは分からないので、天才の中の天才ということが伝わりきっていないのではないだろうか。
     ユダヤ人で故郷を追われてアメリカで活躍したわけだが、その天才が十分に活躍できる場所を得たことは、彼の業績や影響を見返せば、人類にとって幸運だったと言えるだろう。
     そのような業績を評価するべきなのに、本書の副題は不愉快である。人間のフリをした悪魔とは、針小棒大をいうか本書のほんの一部を取り上げて強調するやりかたは評価できない。作者ではなく出版社がつけたのであろう。講談社は信頼できないと認識を新たにした。

  • 非常に面白い!
    ノイマンは本当に天才で、色々なポジションについていた(請われていた
    )ことがわかった。1900年前後からのアインシュタインやボーアといった知っている偉人の他、知らなかった科学者・数学者と織りなす急激な科学(化学、物理、数学)の進歩の様子を流れるように知ることができる。こういう本には巡り会えなかった、そして人間模様を描いているため、理論に入り込むことなく、かなり平易に読めるという点で、★5つ。
    日本の敗戦間際の状況についての批判が実は隠されたメッセージではないかと思う。

  • 【印象に残った話】
    ・コンピュータ開発には、防弾の最適な弾道を決定するのに大量の計算が必要とされ、一発の弾道の計算にかかる時間の短縮という背景があった
    ・ノイマンの思想の根底にあるのは以下の3主義で、歴史的建造物の多さから周囲は反対した、京都への原爆投下の主張からも、目的のためなら手段を辞さない考え方が見て取れる
     ・「科学優先主義」:科学で可能なことは徹底的に突き詰めるべき
     ・「非人道主義」:目的のためならば非人道的兵器の使用も許される
     ・「虚無主義」:この世には普遍的な責任や道徳は存在しない
    【考えたこと】
    ・戦争をしても何も残らないと言われるが、コンピュータの開発や、その他科学技術の発達への貢献があるという皮肉がある

  • (2021/87)数学・科学・経済学と幅広い分野で、今になお繋がる功績を残してきたフォン・ノイマン。科学哲学を専門とする著者が描き出した彼の哲学は「科学優先主義」「非人道主義」「虚無主義」に集約される。やはりマンハッタン計画に関する記述が多いが、確かにそこにフォン・ノイマンの特異性というか哲学が分かりやすく表出している。同時代を生き、フォン・ノイマンに関わった人々(有名な天才、ノーベル賞受賞者が目白押し)のことにも触れていることで、人間としてのフォン・ノイマンが感じられ、面白い一冊だった。

  • ヤバいくらいの天才っているんだな。

    > ノイマンには、さまざまな職場で秘書のスカートの中を覗き込む「癖」があった。

    いや、ヤバいでしょ。

  • 人類史上最も頭が良かったとも言われるハンガリーのユダヤ系お金持ち出身ジョン・フォン・ノイマンであるが、経歴が読みやすくコンパクトにまとめられていてとても面白かった。
    後年の業績として原爆やゲーム理論やコンピュータアーキテクチャが広く知られているため、あまりそんな印象がなかったのだが、最初期には数理論理学に関わっていてヒルベルトの弟子であったことはかなりその能力に大きな寄与があったのかなと思った。よく言われることだが、若い頃に高度に抽象的な記号操作に習熟して、それから具体的な問題に取り組むのは能力開発として重要らしい。一方で具体的な情報のもの覚えが悪くなったり他人の気持ちが分からなくなったりはするらしい笑

    二次大戦に勝利した以降のフォンノイマンは、先制攻撃でソ連を焼き払えと主張していたらしい。デパート王の資金でパーマネントの高給職をもらい、政界からも産業界からも多額の顧問料をもらって超多忙になり、充実した裕福な生活をしていたフォンノイマンからしたら、反ユダヤで資本主義を破壊しようする共産主義に情けをかける理由は一切なかったようである。ヨーロッパ貴族的な精神と超頭脳からは自明な結論だったのか。
    毛沢東主義に理想郷の夢を見た腑抜けた西側知識人とは大分違う。
    あと、ゴールド○ン・サッ○スの経営陣はハ○○ゲ言われるけどもしかしてノイマンに寄せてる???

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著者プロフィール

一九五九年生まれ。ミシガン大学大学院哲学研究科修了。現在は、國學院大學教授。専門は、論理学・科学哲学。主要著書に『理性の限界』『知性の限界』『感性の限界』『ゲーデルの哲学』『自己分析論』『反オカルト論』『愛の論理学』『東大生の論理』『小林秀雄の哲学』『哲学ディベート』『ノイマン・ゲーデル・チューリング』『科学哲学のすすめ』などがある。

「2021年 『フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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