夜空に泳ぐチョコレートグラミー(新潮文庫) [Kindle]

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  •  『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞した町田そのこさんのデビュー作。生まれ育った水槽の中で生きづらさを抱え、うまく呼吸ができずにいる魚のような登場人物たち。自分の意思だけではどうしようもないものに動かされながらも、懸命に生きていく。
     中でも表題作の『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』が心に残った。晴子は、烈子おばあちゃんの愛情を「普通とはちょっと違う」「ひとから悪く言われる部分もある」ととらえながらも、他人が馬鹿にすることは許さない。それを「孵化」するための大きな力にしていった。『海になる』での晴子の姿は希望の持てるラストになった。

  • 特殊な家庭環境に育ち、あるいは恋人や夫との複雑な関係に傷つき、生きづらさを感じる女性達を主人公とした連作短編集。

    「カメルーンの青い魚」「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」「波間に浮かぶイエロー」「溺れるスイミー」「海になる」の5作。どの話にも魚が出てくる。

    著者はストーリーを紡ぐのが上手いな。ただ、主人公の心情を十分に理解できず、消化不良感の残る作品もいくつか。

    「波間に浮かぶイエロー」の、自分にだけ遺書を残さず恋人が突然自殺してしまった沙世。沙世と恋人との関係、一体どういうものだったんだろう??

    「溺れるスイミー」の「場所だけじゃなかったんです。私は群も、無理なのです。たったふたりきりの群すら、構築することが苦しいのです」と言う唯子の性癖。「ひとところにいると、積み重なった濁りみたいなもんを感じて苦しくなる。身動きが取れなくなる」ということだから、唯子は中には、ムラ社会の閉塞感から抜け出したいというだけでない、放蕩癖のようなものがあるのだろうか??

  • 町田その子さんのデビュー作とかなんですね。

    いろんな、水属性の生き物達が棲んでて綺麗だなって観ていたら、いきなり水槽が割れてドドっドって波にさらわれて海の奥深く引き摺り込まれ、水圧で押し潰されそうになるくらい苦しくって息できないくらいでしたが、必死で水面に顔を出してようやく深呼吸できたような感じの作品でした。
    おかげで、全身びしょ濡れになってしまいましたっw

    5つの話からなる連作短編集
    「カメルーンの青い魚」「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」「波間に浮かぶイエロー」「溺れるスイミー」「海になる」の5作。

    どの話も深ーいっw
    水深の浅い話でないと許容量オーバーしてしまうのでまさに溺れてました。どれも居場所を探してる人たちの話かな。水が合う合わないってあるから息苦しさを感じたり、たまにフラット何処かいっちゃたりしてストレス発散しないと病気になっちゃうのもわかるし、魚の生態って様々で謎も多いから理解するの難しい。
    人も自分に合った居場所とか、試行錯誤しながら見つける必要あるのですね。

    私は「波間に浮かぶイエロー」の話が衝撃的だったです。
    成長に応じて青から黄色と色も変え、性別も変えちゃう生き物がいるとは勉強になりました。
    美輪明宏のような強烈な個性のマスターが異彩を放ってましたが、鉄道自殺した沙世ちゃんの彼氏は一体なんだったのかぁと考えてました。結果、この街に導かれてマスターの元で働き答えを探すきっかけになった訳で、沙世の中では都合のいい形に昇華できたってことなのかな。

    で、どんな生物なんだろうかって考えてみたんですけど、彼氏はクマノミで、沙世はイソギンチャクかなって思いましたっw

  • 「チョコレートグラミー」とみて、お菓子の話かな?くらい中身を知らずに購入しました。
    (お菓子の話ではないです)
    そして読んだ瞬間に、これは間違いなくおもしろいだろうなと確信!あっという間に読み終わりました。

    誰かと誰かがどこかで繋がる短編集。
    小さな町で、それぞれ色んな背景を抱えて必死に生きる人たちの様子が切なく、でもどこか勇気をもらえて、優しい気持ちにも前向きにもなれる作品です。

    読んで良かった!
    そして今日も明日も頑張るみんなに一度読んでみて貰いたいです。

  • 狭い水槽の中を必死に生きていこうとする人たちの短編集。全てのお話に海の生き物が登場し、登場人物に繋がりがあるのが面白い。

    報われないラストではないが、はっきり描かれずに終わった部分には何となく腑に落ちない感情も残ってしまった。

  • 短編集だけどところどころ繋がってる。
    波間に浮かぶイエローがかなり好きだった。喫茶店が舞台なのと、女性同士の会話が面白かった。すごく仲良いわけじゃないし、よそよそしいのにそれぞれの戦いを支え合ってる関係性がすごく刺さった。

  • いずれの短編も冒頭の書き出しが抜群に上手い。
    一行で読者を引き込む圧倒的な筆力だ。

    小さな田舎町の商店街や住宅地を舞台にした、それぞれの登場人物たちが少しずつ関わり合っていく短編集。

    少しずつなにか欠落が、心の隙間が、喪失がある人々が、みんな優しく、とても愛おしい物語を紡いでいく。

    いいなあ。

  • 転がるようにしか生きられない。って後書きが1番ギクっとした。

    けいたくんの話は明るい光が見えたのに最後の話で結局どん底に突き落とされてしまった 深い暗い水の中を地上の光が目に入りながら沈んでった気分

    ひとから 叩かれたら痛い。だけど同じことができる手のひらを、自分も持ってる。こういう気付きの繰り返し

    『いつかどこかのサービスエリアで会えたら』

  • 少しずつ繋がりのある連作短編集。
    思うようにいかない現状を黙々と受け入れている者、小さな水槽の中のような街で様々な悩みや、苦しみ、水槽の外に憧れながらも、その中で自分の生きやすい方法を探してユラユラと泳いでいる姿にギュッと胸を締め付けられたり、ホッと安心したり…心配したり、心があっちこっちに動かされた小説でした。

  • 正直面白いと思えなかったので、そこまで絶賛されている理由が分からない。

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著者プロフィール

町田そのこ
一九八〇年生まれ。福岡県在住。
「カメルーンの青い魚」で、第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。二〇一七年に同作を含む『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュー。他の著作に「コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―」シリーズ(新潮社)、『うつくしが丘の不幸の家』(東京創元社)などがある。本作で二〇二一年本屋大賞を受賞。
近著に『星を掬う』(中央公論新社)、『宙ごはん』 (小学館)、『あなたはここにいなくとも』(新潮社)。

「2023年 『52ヘルツのクジラたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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