予測不能の時代:データが明かす新たな生き方、企業、そして幸せ [Kindle]

著者 :
  • 草思社
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感想・レビュー・書評

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  • 「データの見えざる手」の著者にしてAI× ハピネス研究の第一人者、矢野氏の続編。

    前著から深く感銘を受けたので、本書も期待しながら読んだ。確かに、とてもユニークな視点で物事が捉えられていて、腑に落ちる点も多かったが、ビジネス指南書・自己啓発書の色彩が強くなりすぎてしまっているせいか、前作ほどの感銘は受けなかった。

    著者が挫折を経て「幸せ」にたどり着いた経緯は興味深かった。「どんな変化にも揺るがない最も上位の目的とは何だろうか、と考えた。それは「幸せ」だと思った」とは。

    ハピネス研究の成果は、組織・集団レベルでの健全性を確保する処方箋=「ハピネス関係度」の強化 +「前向きな心」の強化、に結実していて、これを一言で言うと「 FINE thanks, HERO within」となるという。キャッチーな言葉に次々置き換えていくあたりに著者のセンスが光るが、内容的にはややくどい。

    「データの活用もAIの活用」も、「過去の経験をまねする」ことに使っていてはダメで、「データは、予測と現実との差を通じて、過去の延長にないことがどこに起きているかを知るためのレーダー」、「データとAIを使う意味は、この「変化を機会に変える」ことにある」という言葉、これはなかなか深いと思った。

    社会に生まれる格差について著者は、「「格差」とは「量子効果」だ。量子効果が「ばらつき」を生み、そして、それを時間の経過とともに増幅しているのが、「エントロピー増大の法則」という、宇宙が常に新たな可能性を探索し続ける物理の基本法則である」、「極端な格差には理由はない。敢えて理由を説明すれば、世界が新たな可能性を常に探索すること(すなわち、エントロピーが常に増大していること)が必然的に生む格差が、この社会の「因果応報」によって何重にも増幅されることである。いずれもこの世の基本的な理であり、自然なことだ」と断じている。これにはぶっ飛んだ。格差は「量子効果」や「エントロピー増大の法則」から生まれる必然、というのは、当たり前のようでもあり、突拍子のないことのようでもある。う~ん、消化しきれなかったな。

  • 日本経済新聞社小中大
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    予測不能の時代 矢野和男著 働く人の幸福度どう高める
    2021/6/26付日本経済新聞 朝刊
    予測不能の時代だからこそ、迷いなく働くためにはハピネス(幸福感)が必要だ、とするのが本書の主張だ。


    働き手の幸福度を計測する著者の研究は数年前にも本になったが、続編ともいえる本書ではわずか数年の間にもこの分野が深く、広い領域に広がっていることを理解できる。ウェルビーイングという言葉も耳にするようになったが、同じことだ。

    最も興味を引くのは「幸福のシークエンス(配列)」といわれるものを数字で明示したことだ。スマートフォンのアプリから何千人という人の動きを分析し、「幸せが感じられない人間の動き」を0、「感じられる動き」を1で表して時系列で並べると、「0010(信頼)」「0111(感謝)」など何通りかの特徴的な配列が浮かび上がってくるという。

    これを分類し、1がどこで0に変わったか、0から1に変わる時に何があったか、などを丁寧に分析して、現場の社員にケアを施すと、組織全体の生産性が向上しやすくなることがわかってきた。

    著者に言わせると、人間は本能的に1を志向するが、0になるような要因が組織にはたくさん存在する。長すぎる会議やパワーハラスメントなどがそうらしい。人間の本質に迫る興味深い分析が楽しめる。(草思社・1980円)

  • ビッグデータでは未来の予測はできないという話であるが、その理由対策が簡潔にまとまっている。
    予測については、
    1データ分析によるパターンの抽出。
    2機械学習による1の最適化。
    3現実と2の差分を考え、過去の延長線上でない未来を考える。この3が今はまだできていないし、1、2に集中しすぎてそもそもおろそかになっている。筆者はその対応として易経を取り上げ、私/我々と表出/内面の4象限とそれをさらに四分割した16パターンでで変化の兆しを捉えることができるとする。むしろ、筆者は人間の幸せはあくまで能動的なものとし、易経の局面を利用し積極的に変化を進めることこそ、幸せに繋がるとしている。

  • 物理学から東洋古典まで自在に駆け回る、新たな思想家の誕生を感じさせる。ぜひ長生きして多くの名著を生み出して欲しい。

  • ・幸せに向かって

  • 仕事などがうまくいっているから「幸せ」ではなくて、「幸せ」だと仕事がうまくいくと。ただ、論を展開しているわけではなく、デバイスやスマホを使い、それを実証しているので、説得力がある。既存のルールに縛られていたら未来に対応できないと言っているが、まさに、このコロナ禍における政府の対応は、現行のルール(法律)に則ているので、諸外国に比べて対応が遅くなったのではと思う。全体を通して、この未来がわからない時代の対応について、どのように考え、行動すべきかが書かれていて、山口周さんなどが説いているところと同じ考え方で、より細かく記してあり、参考になる。

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著者プロフィール

矢野 和男(やの・かずお)
株式会社日立製作所フェロー。株式会社ハピネスプラネット代表取締役CEO。1959年山形県酒田市生まれ。1984年早稲田大学物理修士卒。日立製作所入社。91年から92年まで、アリゾナ州立大にてナノデバイスに関する共同研究に従事。1993年単一電子メモリの室温動作に世界で初めて成功し、ナノデバイスの室温動作に道を拓く。2004年から先行してウエアラブル技術とビッグデータ解析を研究。論文被引用件数は4500件、特許出願350件を超える。「ハーバードビジネスレビュー」誌に、開発したウエアラブルセンサが「歴史に残るウエアラブルデバイス」として紹介される。開発した多目的AI「H」は、物流、金融、流通、鉄道などの幅広い分野に適用され、産業分野へのAI活用を牽引した。のべ1000万日を超えるデータを使った企業業績向上の研究と心理学や人工知能からナノテクまでの専門性の広さと深さで知られる。2014年に上梓した著書『データの見えざる手:ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』(草思社)が、BookVinegar社の2014年ビジネス書ベスト10に選ばれる。

「2021年 『予測不能の時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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