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感想・レビュー・書評
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Amazonオーディブルで朗読を聞きました。
まず読み手の玉城 ティナさんの抑制のきいた朗読が素晴らしかった。プロの声優かと思っていたらモデル出身の女優さんとな。
さて内容はと言えば、推していた男性アイドルがファンを殴ったニュースから始まり、アイドル氏が卒業するまでのひとりのファンを描いた物語です。
ファン活動以外の全てを投げ捨てて推しを推す…ほかには何も無いし、何も出来ないのだ。普通の人生を送る、ということが途方もなく難しいということもあるのだ。という…余人には理解までなかなかハードルの高いことだけど、その熱量に圧倒され、誰か彼女を救えなかったのかと悔しい思いもする、読者にパワーを要求する素晴らしい物語でした。
生きづらさというものを描いている。という意味では誰しも抱える主題です。
朗読というのもあったと思いますが、「推しが、」「推しは、」「推しの、」・・・と「推し」という単語に溢れていて、まるで二人称単数主語であるかのよう。推しをあなたに書き換えて読んだら面白いのではないでしょうか。
これを聴いている時期に、ショッピングモールでローカルアイドルが歌っているところを見ました。ファンの方が応援していました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
同世代の方が書いているだけあって、時代や世相への反射神経の鋭さが凄い。更に文章表現も素直で読みやすい。
ただ読みやすすぎて若干物足りない。「推し」文化に馴染み過ぎていて、「既知のことがわかりやすく書いてある文章」に感じてしまったのかもしれない。 -
これは私だ。
自分が令和の高校生だったら、間違いなくこんな感じだ。
青春映画など「わかる、わかるよ。そのくらいの年齢ってそんな感じだよねー。」と、いい作品だなと楽しみながらも若干上から目線というか、おばさん的立場で観てしまうのだが、これは違った。とても感情移入してしまった。
高校生の時、推し(当時そんな言葉はなかった)が逮捕された。テスト期間だった。毎回ほぼ一夜漬けで受けていたが、ショックで一夜漬けすらしなかった結果、とんでもない点数になった。
話が進むにつれ「いや、私はここまで酷くなかったかな」と思ったが、よく考えたら自分も高校辞めかけた。嫌な思い出だから忘れてた。当時の物凄くネガティブな感情をほじくり返された。
…って、自分語りはしたくないに、めちゃくちゃ思い出した。えぐられた。
SNS上の文章や立場と、私生活のテンションとの落差。描写がとてもリアル。
私も文才があれば推し活(昔はこんな言葉なかったけど)の本書いたのに!(笑)
一通り余韻に浸った後で思ったんだけど、刺さらない人には全く刺さらないであろう話。
この人の他の本も読みたいし、これからどんどんいろんなテーマで書いてほしいと思った。