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感想・レビュー・書評
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しんっとした風景が見えた
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帰郷。離郷。受容。拒絶。大震災から10年間の、それぞれの形で震災と向き合う人々の姿が歌人らしい美しい言葉で語られる。あらためて考えてみる。この大震災に限らず被災者や被害者の声を聞くとき、自分たちはそこに自らの持つステレオタイプを押し付けてはなかったかと。
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その痛み、この痛み、それがカテゴライズされて、誰かに可哀想と思われるものになっていくこの、やるせなさ。悪いの所在がわからないこの、もどかしさ。そういった言葉にならないままならなさ、というものがここには描写されていて、既に2024年ベスト本にランクインしそうです。ねえ痛さって、痛いんだよ、本当に痛いんだよ、そんなのだれにもわかるはずないじゃあないか、共有なんてできない、しちゃいけないんだよ、でもそれがいつか昇華するんだ、そのときまで。
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2011年3月11日の大地震と巨大津波の被害で負った様々なトラウマ、周囲の視線、評価、態度を受ける中で、人生が変容されてしまう。どう人生をマイボールとして取り返していけるのか。自分の人生をとりもどすまでの道程。
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東日本大震災で大きな被害はなかったものの、被災地でくらしていた高校生の震災からの10年を淡々と綴った物語。年代ごとに、色んな人にあって、モヤモヤが消化されていく。
かわいそうと言われる、それにいちいち対応しなければいけないうっとおしさを知ると同時に、そういう話を聞いた時、どう反応したら良いかも難しい。
例えばそれは受験が残念だった、と聞いたときにどう反応すべきか迷う、というものに近いように思う。
イチカは一生懸命向き合っていて、清々しい。 -
あの東日本大震災で、被災した人の程度は色々で、沿岸部で流されて家族や家を失った人もいれば、幸いにも無事で被害も少なく失わなかった人もいる。
でも何も失っていないわけではない。
「もっと大変だった人がいるのに自分には語る資格がない、おこがましい」という感情。失わなかったことへの罪悪感。
朝ドラの「おかえりモネ」と共通するテーマを見るようでした。
希望のこどもの役割を背負って生きるしんどさ、感動秘話に持っていかれそうになる違和感。それぞれの登場人物が背負ってきた思いは、外からはなかなか見えなくて。この本で描かれたことで、はっと気づかされた気がします。
トーミ、中鵜、松田のそれぞれの語りがとてもリアルで、胸に迫るものがありました。
一度、さーっと読んでからじっくり読み直す読書となりました。 -
うまいものをたべる。人と会う。それが生きるってことよ。