海獣学者、クジラを解剖する。~海の哺乳類の死体が教えてくれること~ [Kindle]
- 山と溪谷社 (2021年7月17日発売)


- 本 ・電子書籍 (313ページ)
感想・レビュー・書評
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国立科学博物館で海の哺乳類を研究している研究者で、これまでにストランディングした(海岸に打ち上げられ、座礁した)鯨を2000頭以上調査解剖してきた著者が、海の哺乳類の生態や調査解剖の意義を語った書。
日本の海岸では毎日のように鯨やイルカのストランディングが起こっている。百頭以上が集団でストランディングすることもあるという。そしてその原因はハッキリは掴めていないとのこと。
鯨のストランディング情報が入る度、年中無休で現地へと駆けつけて調査解体、骨格標本作りに勤しむ著者の情熱と行動力には驚かされた。
それにしても、船で曳航したりクレーンで吊ったりトレーラーに載せたりと、鯨一頭を調査するのにとにかくお金や手間がかかるよなあ。数ある生物の中で、鯨・イルカが特別扱いされているような気がしないでもない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
田島先生と言えば、桝太一さんとの共演も多い。実際私がおふたりを拝見したのは科博のオンラインイベントだった。その時試聴したのがきっかけでこの本を読みたいと思った。とにかくパワフルで、明るいお人柄。説明は明瞭、決して難しいことばは使わない。溢れる動物愛。一目でファンになってしまった。
さて本書の感想。田島先生のそのままのキャラクターで語られていくエッセイだ。ストランディングの原因は何か、もし人間に原因があるならば取り除きたい。本書は一貫してそのテーマに尽きる。
剥製造りの難しさ、ストランディング調査の苦労もとてもよく伝わる。調査の中にある使命感と興味関心で支えられていそうだ。一般読者に向けてこれでもマイルドに書いているだろうが、とても壮絶なことがあるに違いない。
エピソードの中にマナティの話がある。観光地フロリダで生息するマナティが、マリンスポーツの被害を受け亡くなる個体が後をたたないそうだ。
私たちが楽しんでいる間に、生き物が死ぬという背景が心苦しい。野生動物との共存を常に考えていかなければと思うエピソードだった。 -
年間300件。鯨などのストランディング(漂着等)が起こっている回数らしい。
たまーに聞くニュースがまさかこんなに起こっているとは・・・世の中には私たちの知らないことはまだまだたくさんある。
鯨やイルカ、オットセイ、アシカなどなどは知識として哺乳類であるということはもちろん知っているが、研究者の方の本を通して「仲間」なんだなと感じるのが新鮮だ。
知らないことが多い分野なので一般向けの本を読めたことが嬉しい。博物館や水族館にはしばらく行っていないが、訪ねてみたくなった。 -
大阪湾にクジラが迷い込んだのがきっかけてTwitterで紹介されてたもの。柔らかい文体とゆるいイラストで、クジラだけでなく海棲哺乳類全体の解像度を向上させてくれた。アザラシとアシカの違いなんかもうバッチリである。
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陸から海に戻った海獣たちの謎の生態。
なぜ、陸に打ちあがってしまうのか。
人間が環境に与える影響、それに影響を受ける海の生物たち。
海の哺乳類の研究者の七転八倒のエッセイ。 -
海獣学者がストランディングをする日々を書いたエッセイ
また、ストランディング以外にも海獣にまつわる話が多数 -
浜辺にストランディング(座礁、漂着)するクジラを解剖しに駆けつける海獣研究者が日々の活動や経験を通して海の哺乳類の生態を紹介する科学エッセイ。
面白くて読みやすかった。
ニュースでしか見たことがないストランディングが日本では年間300件程あるという事実に驚く。
解剖のことや生態から環境問題に至るまで知らないことだらけで読んで更なる興味が湧いた。
国立科学博物館の大哺乳類展でクジラの標本を見た時に大きさに驚いたのが忘れられない。
標本はその後に常設されたので、次行った時にじっくり見てみよう。
写真やイラストが豊富だけどKindle端末で読むと白黒なので紙の本の方が良かったかなと思った。 -
国立科学博物館で研究員をされている田島木綿子先生による、海洋生物の解剖や剥製の作り方、生態など幅広く綴られた一冊で、とても分かりやすく面白い! 最後までほぼノンストップで読み通しました。ストランディング(クジラなどの海洋生物が打ち上げられる現象)は国内で年間300件ほど報告されている」「1種類の動物のある特徴を知るには最低30体は調査研究に供する必要があると言われている」「イルカやクジラの内臓は丸っこい」など初めて知ることばかりなのに、どれもスルスル頭に入ってくる。この方の書いた他の本もぜひ読んでみたい。
著者プロフィール
田島木綿子の作品





