嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか (文春e-book) [Kindle]
- 文藝春秋 (2021年9月24日発売)


- 本 ・電子書籍 (420ページ)
感想・レビュー・書評
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今年の評価の高い本の1つ。
”俺流”落合監督の考え、言葉の深さ、洞察力に触れることができ、大変興味深く読みました。自身のスキル・知識・経験に基づく確かな観察力から発せられる謎かけのような言葉が選手たちを変え、チームを強い大人のチームにしていく。自分が中日ファンだったら、もっと面白く読んだのだと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
名著としかいいようがない。一気に読みました。全ての野球ファンにおすすめできる本です。
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輝かしい現役時代の栄光と実績を引っ提げて、2004年シーズンから2011年まで8年間、中日ドラゴンズ監督を務めた落合博満。
日本一1回。
リーグ優勝4回。
8シーズンすべてで3位以上のAクラス入り。
圧倒的な実績を残しながら、2011年シーズン途中に契約解除が発表された。
筆者は日刊スポーツの記者として、自信の持てなかった駆け出しの頃から、その8年間に密着していった。
なぜ、フリーエージェントで移籍後、怪我のため3年間登板できなかった川崎憲次郎を開幕投手に抜擢したのか。
そして、それを試合直前まで川崎本人以外に誰も伝えなかったのか。
実績のなかった森野将彦に、ぶっ倒れるまでノックを続けたのか。
そして、あえてチームの看板選手である立浪和義と競わせたのか。
「チームのことなんて考えなくてもいい。自分の成績だけを上げることだけを考えろ」
なぜ、和田一浩はこの言葉に心の底から納得することができたのか。
「落合に任せておけば、大丈夫です」
球団の取締役編成担当である井出峻(いでたかし)は、定例役員でこう言い続けることができたのか。
プロとは何か。
勝つために、勝ち続けるために、何をするのか、しないのか。
ヒリヒリするような勝負の現場の空気が、心の奥底まで響いてくる渾身のノンフィクション。 -
めちゃくちゃ面白いノンフィクション
スポーツ記者の視点から、中日の落合博満監督が、就任以降の8年間で選手にどう影響を及ぼしたか、に迫った本。
結果を出すプロフェッショナルを煎じ詰めて結晶化したような、稀有な成功への利他の実践事例であることが、素人でもわかり感動した。
著者の文章のうまさ、構成、着目の視点により、野球素人の自分でも、気づきが得られる。
一気に読み切ってしまう楽しさと学びがある。
徹底した努力の美しさ、人柄、信頼性を文章から感じる。
野球を担当する新聞記者の表現力はこれほどすごいのかと、プロフェッショナルさに深く心打たれた。芸術作品でした。
困難に心が折れそうなときに、勇気と元気をもらえます。
オーディブルがあるので、通勤時に耳から読書がオススメ。 -
落合博満・・同郷と言うこともあって、すぐに読みたいと思いました。
このころはテレビで野球を見たり、新聞で読んだりしてました。なので、登場人物の名前はみな知っていました・・・・小説ではないの面白かったです。彼の当時の顔や言動を思い出しながら、長いページ数を数日で読み終わりました。 -
2011年9月23日、落合監督の退任が決まった首位ヤクルトとの天王山。
同点の8回裏に、ヘッドスライディングして生還した荒木。
この瞬間に落合政権の8年間が詰まっていた。
中日ドラゴンズを常勝集団にした落合監督、謎に包まれた監督の考えを垣間見れる名作。 -
現役時代から圧倒的な実績と独特のコメントで注目された落合氏。本書は落合氏がドラゴンズの監督を務めていた8年間を選手やスタッフの目を通して描くノンフィクションです。
各章が1名の人物と落合氏との関わりを深堀して、落合氏の人物像に迫ります。
2軍暮らしだった川崎憲治郎氏に開幕投手を告げた際「他の誰にも言うな」と念押ししたのは、情報漏洩させるスタッフをあぶりだす伏線だったと判明する本書第1章。
不動のレギュラー立浪和義氏の守備の衰えを、いち早く察知した落合氏がしかけたポジション争い。森野将彦氏が立浪氏へサードのポジション争いに名を上げる決断を森野氏自らが下すきっかけとなった過酷なノックのシーンが印象的な第2章。
2007年の日本シリーズで完全試合まであと1イニングだった山井氏から岩瀬氏へのピッチャー交代劇の舞台裏をブルペンにいた中継ぎ投手の視点から追う第5章
FA移籍してきた和田浩一氏が落合氏から「お前は(ポジション)競争させない」と言われた真意を汲んだ時、「楽園などではない逃げ場のない地獄」と感じたという第8章。
上記以外のどの章を取り上げても、まったく遜色のない深く取材された濃密なノンフィクションです。
監督としての実績は誰も文句がつけようがない(8年間すべてAクラス、リーグ優勝4回、日本一1回)のに、野村監督や星野監督のように人気がないのは、落合氏が”勝つこと”だけに徹して、それにプラスにならないリップサービスとか、情に訴えるような采配を全くしなかったことに起因するのでしょうが、なぜそのような行動を一貫して執り続けたのかが本書では詳しく描かれています。プロ野球球団ですから”勝つ”事が優先されるのはもちろんですし、それを公言して憚らない落合氏は行動と実績で「勝てばいいんでしょ。プロなんだから」と正論を突き付けているように感じます。「魅せるのがプロ」という考え方もあるでしょうし、「魅せて勝つのがプロ」という考え方もあるでしょう。ただ勝利をどん欲に追求する落合氏の姿勢が、あまりに正論だからこそ、支持する人が少なかったり、敵をつくってしまうのかもしれません。でもこの本を読んでみると、マスコミが”オレ流”ななどと軽く呼んでいたのとは全く異なる、恐ろしいほどの観察眼と、理詰めの行動に驚かされました。単行本で500ページに迫る大作ですが、すごく引き込まれました。 -
ルポルタージュの白眉、と、文庫化の際その帯に書かれている様子が、もう頭に浮かんでいる。
私が尊敬して止まない作家、高野秀行先生がツイッターで激賞していたため、購入した本書。「とにかく先に読み進めたいけど、読み終わってしまうのがとても惜しい」という、幸福なアンビヴァレントにはまった本書。400頁越えだが、買ったその日に読み終わってしまった。
(これも高野先生が紹介していだが、)『なぜ木村政彦は力道山を殺さなかったのか』にも匹敵するような、とにかくすごい内容。
『なぜ木村政彦は~』の作者増田氏は、本を持つ手が火傷するほどの熱量で、取材対象である木村政彦と対峙する姿が印象的だったが、本書『嫌われた監督』の作者鈴木氏は、取材対象である落合博満がごとく、感情を抑えた筆致で、淡々と落合像を描いていく。これは当の落合氏の、プロ野球人としての生き方そのものであり(だからこそアンチも多かったのだろうが)、だからこそ、胸に迫るものがあった。
私は巨人ファンだが、2000年代後半の中日戦は、勝つか負けるか本当に分からず、球場に足を運ぶのが本当に楽しみだった。そういった思い出の追体験もできた。
#書評 #『嫌われた監督』#ルポルタージュ -
落合監督の生き様と、それを汲み取ろうとする周囲の様子が感慨深かった。
著者プロフィール
鈴木忠平の作品





