老後とピアノ [Kindle]

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  • ポプラ社
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感想・レビュー・書評

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  • 〜わたしにとってピアノレッスンとは、老いのレッスンかもしれない〜
    「はじめに」より抜粋。

     ここからいきなり自分語りになってしまい恐縮ですが…小学生のころ3年間ヤマハピアノ教室に通い、教本バイエルをなんとか最後まで終わらせ、もう練習したくない…という後ろ向きの理由でピアノを止めた経緯あり。2023年40代最後の正月に、一念発起して、60代の個人の先生のピアノレッスンに通い始めました…
     大人になってからのレッスンは、自発的にはじめたせいか、思いのほか練習を続けることができ、ヘタなりにもそれなりに上達し、自分に自信がついてきて1年経とうとする今では、ピアノを弾きたくなっちゃう体質へと変化しました。中年になっても進歩するんだな〜とうれしいのです。
     筆者の稲垣さんも、新聞社を早期退職しピアノを弾く日々。しかも自分のピアノを持たずヤドカリピアノ!にびっくり。「なるべく所有しない」「手放す」ライフスタイルに感心しました。自分にはまだそこまでの境地に至りませんが…すこし憧れますね(*^^*)
     モノを所有しないで軽やかに生きる方法を知りたい方におすすめです。

  • もう何も言うことはないです。年をとってからピアノを習うことの喜怒哀楽がすべて詰まっています。私は言葉足らずで言えなかったことが、ここにはぎっしり詰まっていて共感しかないです。著者の稲垣さんは朝日新聞記者を50歳で退職して、53歳からピアノを習い始めて、それはいろんな悪戦苦闘があるのだけど、それはピアノだけの話ではない感じです。そこがこの本のすごいところで、ピアノを弾くことがどう生きたいかにつながっています。

    私も無謀にも55歳からピアノ教室に通うになりました。ちゃんと頑張れば将来はピアニストって可能性を持って(笑)

    ですから、この本の著者の気持ちが痛いほどわかっちゃうのです。ただ、彼女と私では違うところもあります。彼女はアフロヘアが有名な元女性新聞記者。ですから、彼女の頭はほぼ熱帯雨林のジャングルです。一方、私の頭はツンドラ平原(笑)。新聞記者は書くことに長けているのでフリーのライターに。私はフリーの味噌屋にはなれません。

    一番の違いはそんなところではなく、彼女は小学校の時にピアノを習っていたことです。私はピアノを習うのは本当に55歳で初めて。大人のピアノ発表会に参加した時に、この差は全然違うと感じたものです。リズム感です。ですから、著者は努力もしているけど、弾く曲目のレベルも高い曲。

    その差はあっても大人の悩みは一緒なのかも(笑)

    なぜピアノを習うのか、、可能性なんかないのにって思います。いろいろな思いはあります。ちょっとでも弾ければ人生が豊かになるような気がする、とか、最近は何よりもボケ防止に有効だとか。でも、この本を読むと、自分の人生と向かい合うというか、様々な葛藤が生きる喜びみたいな、そんな価値が一番って言う気にもなってきます。

    本屋さんの店員は若い方が多いから難しいけど、本屋大賞にノミネートしてほしい。

  • 加齢による身体能力の低下で
    思い煩う経験を
    久しぶりに再開した
    ピアノの稽古をめぐって
    わりとしつこく書かれている。

    お稽古を進める過程での気づきの数々に
    著者の人生観が投影されていき、
    「なるほど!」「そうそう!」と
    大きく頷く文章箇所は
    確かに散らばっている。
    が、
    読後感としては
    わーっとお喋りにつきあわされた感じが残って
    「気づき」が霞んでしまった。
    著者の文体と言えばそれまでだけど
    もう少し内面化されていたら。
    せっかくの気づきがもったいない。

    音楽雑誌の連載を前提に
    ある程度お膳立てされた環境での
    お稽古だったことが
    最後まで読んでわかった。
    まだ50代なのに
    相当の経験者なのに
    老いて始める手習いを強調し過ぎなのも
    それゆえか。

    著者の練習に取り組んだ姿勢が
    真摯なものであることは伝わってきた。
    ピアノと共にあるこれからの人生の
    さらなる祝福を祈る。

  • 「私のピアノを聴く超常連客は間違いなく私なんだから。まず私が私を楽しませることができなければ、どうしてピアノを弾く意味などあるんだろうか」
    「無難な演奏なら機械でもできる。人々が本当に求めているのはきっとそういうものじゃない。みんな心を動かされたいのだ」
    沁みる言葉が多いのは、それだけ稲垣さんがその都度その都度真剣にご自身に向き合っていたからだろうと思いました。
    ピアノ演奏は自分の特性観察。発想の転換をする時にの比喩力が素晴らしいです。

    譜面の拡大コピーを取ってダンボールを背表紙にした譜面台に置く案。真似します。

    私の短い指は不自由そのものですが(オクターブがほとんど届かない)、自分なりの奏でる喜びを探したいと思いました。
    ピアノが上手な方々からすると冒涜で不快に聴こえるだろうと思うけど、オクターブは届かないので、音を外します。「正しさとはいったい何?」と改めて自分に問いたいと思いました(正しさが1つだとは信じていません)

    エピローグを読んで泣きました。もしかしたら、内心私もずっと自分のことを責め続けていたのかもしれません。都度の今に向き合う喜びに気付かされました。
    20歳の時にバイト代で買ったピアノ。弾いていない時期もあったけど処分しなくてよかった。

    年に1回ストリートピアノを弾くという目標を立てています。稲垣さんを見習って、私も目標を楽しみます。

    • workmaさん
      おまいどんさん
      はじめまして。ピアノを弾かれるのですね。わたしは、大人ピアノレッスン2年目で、ブルグミュラー25番の9番『狩り』を練習中です...
      おまいどんさん
      はじめまして。ピアノを弾かれるのですね。わたしは、大人ピアノレッスン2年目で、ブルグミュラー25番の9番『狩り』を練習中です。
      ストリートピアノ、憧れます…いつか弾けるように練習あるのみですね。
      2024/04/11
  • 私もまたピアノやりたい!
    小1から小6まで習ってて、ハノン、ツェルニー30番辺りで中学生なって辞めた。作者と同じで本当に練習が嫌いでレッスンが憂鬱で堪らなかった。先生怖かったし…
    でもやっぱりピアノ好き。
    この本みたいにレッスンは受けなくても自分で弾きたい曲を練習して弾けるようになりたいな。ここまでストイックには絶対ならないけど

  • 40年ぶりに定年後に子ども時代に演奏していたピアノに挑戦する著者。私自身は63年ぶりに挑戦しているわけだが、全く同感!という思いがたくさんあり、私の気持ちを代弁してくれているような喜びを感じた。著者の方が、小6まで習っていたということで、モーツアルト「きらきら星変奏曲」まで演奏していたという点は私より上だし、再開した年齢も私より若い!当然ブランク期間も短い!しかし、この本を読みながら嬉しくなってしまった!大切にしたい宝物のようなキーワードの数々。久しぶりにピアノにチャレンジしている人たちへの応援メッセージのようだ!全力でチャレンジしている人たちを「仲間」「同志」と感じたという弾き合い会の感想は全くその通りである。
    特に最後の結びの言葉は本当に凄い!私の気持ちを簡潔に要約してくれている。引用し書き留めておきたい。
    (P256)「若者は目標を高く持ち、そこに向かって進んでいけばよし。でも老人は違う。遠くに目標は持たず、今目の前にあるミクロのことに全力をかける。 野望を持たず、今を楽しむ。 自分を信じて、人を信じて、世界を信じて、今を遊ぶ。そこに思いもよらない美しいもの が現れるのである。それをただただ楽しめば良いのではないだろうか。老人は今に全てをかけるのだ。」

  • オーディブルで。

  • オーディブルで。
    50代でピアノを習いはじめたひきこもごも。
    感受性が豊かで、素直で、前向きで、
    理知的で、努力家でマイペース。
    素敵な大人の女性だと思います。
    いくつになっても、瑞々しい感性があれば、
    世界は感動にみちている。
    作者の目を通して、そんな世界を垣間みた。
    そんな大人に私もなりたい。

  •  共感することがたくさん。とくに、心の声。
     
     子どものときにやり残したことを50代で取り組むことで
    いろいろなことが見えてくる。いろいろと考えすぎず、行動して、楽しめばいい。
     これからの「老後」をどう生きていくかを考える1冊となった。

  • 失礼ながら50歳を過ぎて、こんなにも真剣にピアノと向き合い、こんなに一生懸命練習に打ち込む人がいるなんて…。
    その姿勢にとても感動した。

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著者プロフィール

一九六五年、愛知県生まれ。一橋大学社会学部卒。朝日新聞社で大阪本社社会部、週刊朝日編集部などを経て論説委員、編集委員を務め、二〇一六年に五〇歳で退社。以来、都内で夫なし、子なし、冷蔵庫なし、ガス契約なしのフリーランス生活を送る。『魂の退社』『もうレシピ本はいらない』(第五回料理レシピ本大賞料理部門エッセイ賞受賞)、『一人飲みで生きていく』『老後とピアノ』など著書多数。


「2023年 『家事か地獄か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

稲垣えみ子の作品

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