かか (河出文庫) [Kindle]

著者 :
  • 河出書房新社
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感想・レビュー・書評

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  • 作者の推し燃ゆは、すごく良かったのだが、くるまの娘と、こちらの作品は自分には合わなかった。前編方言で書かれ、全然違うが、おらおらでひとりいぐもや、あくていを思い出す。暗いのが嫌いと言うわけではないが暗すぎるかなぁ。表現力は相変わらず素晴らしいし、若い作者ならではの今の言葉、文学の生モノは確かにここにあった。あくまで合う合わないの問題。これからも作者の新作は追い続けたい。

  • 夫の不倫から精神バランスを崩した「かか」と、
    19歳のうーちゃん。「かか」が子宮摘出の手術をで入院する前日、
    うーちゃんは「かか」を妊娠するためにかみさまに会いに行く。

    浴槽にゆらぐ金魚のこと、かみさまに会うのに生理がはじまったこと、
    かかの子宮摘出。ちいさな子供と母親。

    母親がすべてでかみさまのように無防備に信じる幼児の存在は
    かつてのうーちゃんとかかの関係性を思い起こさせ、苦しめる。
    無機質な顔も知らない、SNSの友人たちが、かたりかける優しいことば
    生きた言葉はアカウントを消せば、つながりさえも断たれる。
    弟へ語りかけるうーちゃんの言葉は、SNSで飾る文字と違い、
    生々しい。生臭くても、家族とのつながりやそれに伴う感情は
    簡単には断ち切ることなんてできない。

  • 「推し、燃ゆ」で有名かと思いますが、
    この人のものはこれが初めて。

    思ったよりもナラティブを意識した書きぶりで
    それがフォークロアでありながらも現代的であるようにして書き上げていて
    こんなに腕力のあるタイプの書き手だとは思わなかった。

    一人称の語り手として弟である「おまい」に語りかけるうーちゃんこと私。
    家族だけでしか使わないような言葉と、
    SNS上で飛び交う言葉、
    親戚の付き合いで発する言葉、
    そのどれもがほんとうでありながら切実さにはグラデーションがあって
    それでも尚、どれもほんとうのままであり、そのためにうーちゃんは熊野詣をする。
    だってこんなに八方塞がりでは神仏に祈るしかない。

    祈りは届くかどうか、そうなる前に話を終わらせてしまうのも
    いずれのほんとうも受け入れざるをえない諦念と覚悟を感じさせる。
    その力強さが女性性を強く打ち出していながらも
    人と人の摩擦から生じる熱の普遍性の方に目を向かせている。

    解説も町田康でなるほど、好きそうな感じである。



    >>
    おそらく誰にもあるでしょう、つけられた傷を何度も自分でなぞることでより深く傷つけてしまい、自分ではもうどうにものがれ難い溝をつくってしまうということが、そいしてその溝に針を落としてひきずりだされる一つの音楽を繰り返し聴いては自分のために泣いているということが。(p.40)
    <<

    宇佐見はこの声をよく聴いた。
    それはそのまま、ひとりのために泣いているひとがひとりではないことを示す行為でもある。

  •  順番にと思って、デビュー作の表題作を読んだのだけど、何これ! 19歳でこんな文章・物語を書ける人ってすごいなあ。ただただ感嘆と思ったら町田康が同じ感想を書いてた。。。「そらおそろしいどころではない、もはや怪物級」。→でも町田さんの解説には注意。「かか」のストーリーと読みどころがほぼ全部書いてある!! 解説から読む人はこの文庫注意です。私も解説から読む人種なんだけど、今回は助かった。。。(最近の解説は「以下、ネタバレ」という前置きをおいてくれたりするから自己判断できるけど、この解説はそれもない。町田さん、ギケイキ面白いけど、これはねー)。純文を読む人で未読という方には絶対おすすめ。

  • 血は嘘をつけない。なんでこんな人のもとに生まれてしまったんだろうと思いながら、血液レベルでその人のことを、歪んだ形であれ愛してしまう。へその緒で繋がれていた血は体を巡り生理となり新しい命になって巡っていく。
    憎すぎるかかをもう一度うんであげたい、という一見意味のわからない序盤の言葉は、読み進めるにつれてうーちゃんの最大限の愛だと言うことがわかってくる。
    表面だけの姿を見せるSNSでは明らかに“標準語”であるところを見ると、このカカ弁がうーちゃんにとってはとっさに出てしまう本当の自分の言葉なんだろうなって思ったしそれほどカカとは切っても切り離せない関係なんだろうなって思った。

  • 主人公が話す言葉が何弁か分からなくて読みづらかった。
    大阪弁かなと思ったらちょっと変やし、最後まで謎だった。それがこの本の醍醐味なのかもしれない。

  • 愛情と憎みとか家族や性別についての葛藤だったりとか心にくる対比だったり描写があったけど、自分はこの本を若いうちに読めて間違いなく良かったと思う。

  • 生々しく痛みを感じる。
    過去、家族、性別、様々な縛りに息苦しさ以上のものを感じた。

  • なぜ娘という生き物は、これほどまでに母に執着するのだろうか。

    よくマザコン男などと言われるが、マザーコンプレックスを抱いているのは、実は息子よりも圧倒的に娘の方が多いと思う。
    「母親を産み育て直したい」なんて発想はその究極だろう。

    女というものは、最も身近にいる女を最も愛し憎んでしまう生き物なのだ。
    それが、母であっても娘であっても。

    母と娘の終わることのない、産むと産まれるの普遍の連鎖。
    ニワトリが先か、タマゴが先か。

    スタートもゴールもないこの『マミートラック』を走り続ける私達の喘ぎ声を、本作品は代弁してくれたのではないだろうか。

  • 著者の大ヒット作「推し、燃ゆ」に続いて読みました。
    最新作も出てるみたいだから買わないと。

    「かか」、このタイトルと表紙絵、
    そして「推し、燃ゆ」から何を想像して読みはじめたか。
    きっとこの女の子の大切な「かか」が
    失われるか何かして、それがとても辛いのだろう。
    それくらいの想像をして読みはじめ、
    その想像が100倍以上重くのしかかってきたような、
    そして、後半についていた短編の読後には、
    150倍、町田康さんの解説を読んで300倍
    辛くなるような心持ちになった。

    この作者は、19歳の時にこの小説を書いたという、
    まさにとんでもねえ奴だ。
    そんな口調になってしまうくらい。

    主人公のうーちゃんの一人称で語られる全編。
    語り手はつねに弟の「おまい」に向かって話している。
    その言葉の独特の言い回し、独自の言葉、
    それらがうーちゃんのリアルな感情を
    痛いほどに読み手に伝えてくる。

    彼女の生まれた環境は、子が育つには
    あまり適していない環境だったんだろう。
    子が話し、見て、触って覚えていく感覚が、
    通常とは違うものだったのだろう。

    そんな気がしながら次第に分かってくる
    彼女の考えにドン引きし、理解し難いと思いながら、
    物語は終わってしまった。

    うーちゃんが主人公の本編の後について短編。
    同じ小説として隣り合っている意味を私なりに想像すると
    この短編も本編も同じ悲しみを表現しているのかなと。
    ただ、それぞれの語り手が、その悲しみを
    理解するまでに要する時間や思考の整理に、
    ページ数の違いがあるのかなと。
    そう思うと、うーちゃんがまた可愛そうに思えてくる。

    宇佐美りんの次の小説も読まねば。

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著者プロフィール

1999年生まれ。2019年、『かか』で文藝賞を受賞しデビュー。同作は史上最年少で三島由紀夫賞受賞。第二作『推し、燃ゆ』は21年1月、芥川賞を受賞。同作は現在、世界14か国/地域で翻訳が決定している。

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