夜に星を放つ (文春e-book) [Kindle]

  • 文藝春秋 (2022年5月24日発売)
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みんなの感想まとめ

心の機微を丁寧に描いた短編集は、日常の中に潜む儚くも温かい感情を呼び起こします。作品は、子どもと大人の思考の違いや、家族や恋人との関係性を通じて、星や星座の意味を探求しています。特に、星を放つという表...

感想・レビュー・書評

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  • 初読みの作者さん。澄み渡る文章が心地よい。人間の心の深層がしっかりと掘り返されていて心に響いてくる短編集です。
    「真夜中のアボガド」
    なんとも切ない話だった。心にジーンと響いてくる温かな話。
    コロナ禍の中での仕事、恋愛、婚活。
    真冬の空、澄んだ空気に光る星が美しい。
    婚活で会った彼氏と綾。
    婚約者と村瀬。
    どちらも30代で将来設計の上でとても大切な時期。何としてもここで結婚を決めたいところ。
    けれども上手くいかない現実がある。
    悲しみを抱えながら前を向いていく姿にジーンと来ました。この作品からあたたかな体温が感じられました。
    「銀紙色のアンタレス」
    『愛されずして沖遠く泳ぐなり』そんな句が浮かんだ。真(まこと)の一夏の恋の話。
    夏と共にあるような真。夏の暑さ、生命のきらめきそのものであるような17歳。
    朝日(あさひ)とたえがそんな真の夏を彩る。
    何か私にも誰しもそんな体験があったような懐かしさが随所にありました。ラストの夏の終わりの場面、真が海深く潜るシーンに冒頭の句が浮かびました。青春真っ只中な爽やかな作品でした。
    「真珠星スピカ」
    ある日亡くなった母の幽霊が見えるようになった(みちる)。転校先ではいじめに会うし、こっくりさんが流行っているしで、保健室登校と結構な激動の人生の真っ最中。重い内容もみちるの朗らかさでとても温かくて柔らかい。みちるもそんなんだったら転校したらいいのにと思ってしまいます。私の子どもがそうなったらと思うと胸がいたい……。それでも、お父さんとお母さんを一緒に思い浮かべている場面はとても温かいし、みちるを助けてくれる人たちもいて、救いがあります。最後に光明が見えてよかったと思いました。ちょっと不思議で面白かったです。
    「湿った海」
    沢渡の妻は娘をつれてアメリカに行ってしまいます。娘と会えない辛さは想像に難くありません。家に残る玩具、ふとしたことから蘇る思い出。家庭の温かさは失ってなお忘れられないものだと思います。そんな沢渡にモテ期が到来します。家庭をもった育児を経験した人は魅力的に映るのでしょうか。沢渡が湿った海からはやく抜け出してほしいと思ってしまいます。とてもいい人なので。
    「星の随に」
    大人の都合で苦しむのはいつの時代も子ども。子どもだから逃げられない、例えようのない悲しみが伝わってきます。これ、私ならきっとぐれちゃうだろうなぁ。ただ、想くんには気に掛けてくれるお父さんがいるのが救い。コロナ禍の時にもきっとたくさんのそんな悲しみがあって、子どもたちは想くんのように辛い思いをしたのだろうなと思います。

  • しっとり、じんわり響く作品集。
    寝る前の読書タイムには少し重たかったかなぁ…
    私には何となくリアルで、考えさせられるテーマが多かった。


    子どもは大人よりも言語化する能力がまだ乏しいけれど、
    内心は大人と変わらないぐらいあれこれと思考を巡らせ、
    空気を読んだり、あえて読まない選択をしたりしていて。
    自分もそうだったはずなのに、大人になると忘れてしまいがち。
    自分の子どもも同じように葛藤したり、強く感じ取ったりしているかもしれない。


    心の機微を深く捉えながらも、するするっと読める短編集だった。

  • ⚫︎感想
    とても読みやすい短編集。直木賞受賞作ということで読んでみたが、私は「読み応え」や、新しい視点、考える余地、読み終えてからの余韻みたいなものを読書に求めているので、私には物足りなかった。でも装画が素敵だったので☆☆

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    かけがえのない人間関係を失い傷ついた者たちが、再び誰かと心を通わせることができるのかを問いかける短編集。

    コロナ禍のさなか、婚活アプリで出会った恋人との関係、30歳を前に早世した双子の妹の彼氏との交流を通して、人が人と別れることの哀しみを描く「真夜中のアボカド」。学校でいじめを受けている女子中学生と亡くなった母親の幽霊との奇妙な同居生活を描く「真珠星スピカ」、父の再婚相手との微妙な溝を埋められない小学生の寄る辺なさを描く「星の随に」など、人の心の揺らぎが輝きを放つ五編。

  • 直木賞受賞作品。5つの短編は、人々の日常から、儚くも温かい気持ちにさせてくれる。
    題名に星が入っているので興味が湧いてくる。星を地上から見ていると綺麗でロマンチックになるのだ。実際の宇宙空間では人は小っぽけなものだとも思ってしまう。ただ、星を放つとは何を意味しているのか?気になる。
    古代の人たちは、この星空を見て何を思ったのだろうか?と古の時間に心を奪われもする。

    本作の共通のテーマを、四字熟語にするなら、捲土重来、臥薪嘗胆、いや温故知新の方がマッチするかもしれない。星の生き死ににも共通するように感じる。
    神は乗り越えられない試練を与えない、という言葉で応援したくなる。

    真夜中のアボカドはふたご座。姉妹という意味だけでなく、二股という意味も含まれているようにも感じられた。
    銀紙色のアンタレスはしし座。アンタレスがあるのはさそり座なのに?和名はひこ星、しし座とさそり座の謎がわかったとき、それぞれの想いがすれ違う。
    真珠星スピカはおとめ座。女神が左手に持つ麦の穂の先にある。和名は真珠星、真珠が家族の絆、温かい涙が頬を伝う。
    温もりの海はオルフェウス、こと座。オルフェウスが奏でる琴の音は愛する人と会わせてもらえるが、あと少しのところで・・・。悲しすぎる。
    星の随(まにま)はLet it be.ベガはこと座。織姫星でもある。この短編だけ、私にはしっくりこなかった。

    家族や恋人の間の出来事を通じて、星と星座の意味を関連付け、離別と復活を上手く構成された作品だと思う。ことばも美しい。
    題名の「夜」は太陽が沈みゆく様、「星を放つ」とは、暗闇だからこそ輝く星を人々の心の中に向かって、温かい気持ちを拡げてくれる、そんな作品だと感じるので

  • 直木賞受賞作品。短編集で読みやすかった。
    人との繋がりは時として辛いこともあるが救われることも沢山あるということを感じさせてくれる1冊。

  • 直木賞かぁ、んーって感じでした。
    中学生の自分だったら嗚咽していたかも

    人との関係を失う辛さや寂しさ。

    どの作品も分かりやすい表現で描かれていて、泣きポイントみたいなのが設置されているところが馴染めませんでした。

    読む人によっては刺さる内容だと思います。

  • 自分ではどうしようもないことを、
    乗り越えようとする、葛藤の物語。
    それぞれのお話に、そこまでパンチはないんだけど、するすると読めちゃう。

    なんか、子どもって、もっとずるくて、
    物分かりが良くなくて、
    わがままでいいんじゃないかな、て思う。
    少し大きくなっても。

    「真珠星スピカ」の短編が特に好き。
    いなくなっても、娘を守りたい強い気持ちに、
    感情移入して、涙が出てしまった。
    私のお腹の子と、旦那が、自分のことをずっと覚えてくれて、愛してくれるなら、いいな。
    熱々のコロッケ、食べたくなった。ついでにビールも。

  • かけがえのない人間関係を失い傷ついた者たちが、再び誰かと心を通わせることができるのかを問いかける短編集。

    「真夜中のアボカド」
    コロナ禍のさなか、30歳を前に早世した双子の妹の彼氏との交流を通して、人が人と別れることの哀しみ。

    「真珠星スピカ」
    学校でいじめを受けている女子中学生と亡くなった母親の幽霊との奇妙な同居生活。
    こっくりさん、流行ったな。

    「星の随に」
    父の再婚相手との微妙な溝を埋められない小学生男子が、同じアパートのおばあさんに救われる。

    など5編。
    読みやすいけれど、どれも特別大きなインパクトもなく、そのまま通り過ぎてしまうような、余韻もなく忘れてしまうような、そんな短編集だった。

  • 短編ですが、最後の話に勇気づけられれて終われて良かった。大人になってわかったけど、子供の頃神だと思っていた先生も親もみんなダメなところもあって悩みながら生きてるただの人で、大人が子供だと軽くみていても子供は結構いろんなことに気を使ったりしていることも思い出して…。いつもは、娯楽要素の高いミステリ系を好んで読むのですが、人間関係が苦手な私は本当はこういう作品をいっぱい読んで人の気持ちを考えたりした方がいいんだろうなあと思いました。

  • 5編からなる短編集で、ひとつひとつの話が、ある日フッと消えてしまうように幸せが消えてしまうのですが、そのあとに、小さな希望の道が見えるような、そんな作品集でした。
    特に重要な場面というわけではないけれど、星座や星を絡めた場面が登場。ここは、作品集として統一感を出すために、敢えて載せた感がありますが、特に必要はないような気がしました。
    何となく、終わりもぼんやり濁しているところもありますが、いつもはそういった終わり方の本を読むと消化不良というか、モヤモヤ感が残るのですが、これら短編はそれが程よい余韻となっていると思います。
    直木賞を取るに値する作品かどうかといえば、ちょっと分からないですが、コロナ禍の今、コロナの中での閉塞感や、家族や人との関わりは共感を生むのかも知れません。

    心に残ったのは、離婚して一人暮らししている男性と、隣の部屋に越してきた母娘との交流がかかれた『湿りの海』かな。
    そして、コロナが始まって外出制限が出されていた頃、こういう風に感じながら暮らしている人は山ほどいたのだろうなと思った『真夜中のアボカド』。

  • 第167回直木賞受賞作。

    コロナ禍に生きる人々の哀しみと希望を描いた五つの短編集。一番好きなのは「湿りの海」かなぁ。季節が今とマッチしてるからかもしれないけど。

    窪さんの作品は好きだけど、正直これが「直木賞」かぁという感想です。

    短編だから限界があるとは思うが、窪さんは中編向きですね。なかなか、このテーマで描き切るのは難しいと思う。

    その分、テクニックに走り、物語が上滑っているような、軽く撫でているような、純文学の新人みたいな感じ。

  • じんわり泣ける話だった。

  • ★4.3
    今まで読んだ直木賞の中では、かなり上位。
    もろに突き刺さる内容ではなかったけど、
    すらすら読めるところが魅力的。
    他の作家さんでも感じるけど、大人が描く子供って、大人なんよね。ませてるとうか、落ち着いてるというか。しゃーないんやけどね。

  • 5編が収録されていますが、ちょっと焦りながら読み終えました。
    自分を、子供を、またその子供を重ね合わせながら。
    過去も現在も重ね合わせて、涙しました。
    清々しい読後と誰かが言ってましたがその通りでした。

  • 直木賞受賞作。
    5つの短編集。
    1)真夜中のアボカド
    2)銀紙色のアンタレス
    3)真珠屋スピカ
    4)湿りの海
    5)星の随に

    どの作品もせつなさを含んでいますが、5)はそこにもやもやが加わりました。
    小学生の男の子が学校から帰ってきても、継母がドアストッパーを外してくれないせいで、夕方ドアストッパーが外されるまでマンションのエンタランスで待っているという話。見かねた同じマンションに住むおばあさんが自分の部屋で待つようにと言われ、部屋に行くとおばあさんが戦争が終わった年に東京が燃えた夜の絵を描いている。
    この戦争が第二次世界大戦だとすると終戦は1945年。
    この夜のことを覚えているというと6歳くらい?を考えると2022年現在83歳。

    なんていうか…ちょっとだけ登場させる戦争を語らせる役割の老人が意外と小説に多く、それだけでモヤモヤます。しかも今回はその話題を持ち出したことにより何かが動き出すということもない、たんなるエッセンスでしかない。

    コロナは現在進行形の厄災で、それにより私たちの生活が一変したので題材になるのも無理はないが…うまくはいえないが、なんだかそこの部分が一番もやもやしました。

  • 第167回直木賞受賞作ということで読んだ。
    星に関係のあるテーマでの5つの短編集
    どの作品も何かを失い心にぽっかりすき間のある人が主人公である。
    心にしみるようなしっとりとした物語ばかり。

    物語として完成度が高いと思ったのは最初の「真夜中のアボカド」
    主人公は双子の姉を失っており、アプリで知り合った男性と付き合い始めるものの思い通りにならず、姉の彼氏だった村瀬と時々会うようになるのだが……。

    他の物語の中では
    高校生と海の描写がみずみずしい「銀紙色のアンタレス」突然母を交通事故で失った「真珠星スピカ」
    テーマや部分はとても読ませるのに今一つモヤっとしたものが残った。

  • 窪美澄がついに直木賞作家に…。
    嬉しい。
    窪美澄の作品は久しぶり。
    この物語もグッとくるものがあった。

    短編集。どの作品も星が関係している…。
    主人公たちは、どの人も喪失感を抱いていて、読後感がとても切ない。

    恋人や大切な家族、友人…。
    何の前触れもなく会えなくなってしまった人たち。
    ネットでどこでもいつでも誰とで繋がりができる時代だからこそ、もう二度と会えない人との関係性を改めて感じさせる作品は貴重に思える。

    ハッピーエンドしか読めない人も増えているらしいので、そうした人には辛いかもしれない。

    それでも、この作品たちに惹かれたのは、喪失感や切なさを抱えながらも、生きていこうとする、今あるものを大切にしようとする、そんな小さな光が感じられるからかも。

    辛いときほどハッピーエンドよりも、こうした喪失感の中でも辛さを受け止めて生きようとする人に励まされる。
    作中の星々は、もしかしたら小さな希望を象徴しているのかも。
    この先も失うこともあるけれど、いいこともある。

    いいことも切ないことも受け止めて、時々は失ったものに思いを馳せて、とにかく生きていく。
    なんだか励まされ、書名の「夜に星を放つ」っていうのも、自分で自分の心の暗いところに希望の光を灯すようなイメージで、くらいからこそキラキラ光るそれを見つけたいと思えた。

    サラリと読めるが、とても良い作品ばかりです。

  • 星座を知る・見る機会のあった人々が、それぞれの目の前の現実に心動かされていく短編集。

    身近に起きてもおかしくないが、当人にとっては大きなイベントを切り取ったような話が多く、話によっては前向きに前進できているのかもわからない。

    一編一編が丁寧に作られているが、話通しのつながりはほぼなく、身に詰まされるような話はあれども、パンチが効いているような話はないという印象だった。

  • 以前よりTLで見かけ気になってた一冊。かけがえのない存在を失った者の“それから”と“これから”が静かに語られる。離別や喪失が主題でありながらそこに未来を感じるのは、たとえ見えなくても、どんなに離れていても、思いがあれば確かに繋がっているという証左だろうか。

  • どの話も心にぽっかり穴が空いたように寂しくて切ない話だった。
    最後の星の隨にでは目が潤んだ。子供が辛い思いをしているのにとても健気で優しくて。私もこの物語にでてくるおばあさんのようにすっと心の拠り所になれる人になろうと思った。辛いけど希望もあってこれから良くなるかもしれない期待があったのが救いだった。

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著者プロフィール

窪 美澄(くぼ・みすみ):1965(昭和40)年、東京生まれ。2009(平成21)年「ミクマリ」で女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞。受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10第1位、2011年本屋大賞第2位に選ばれる。また同年、同書で山本周五郎賞を受賞。2012年、第二作『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞を受賞。2019(令和元)年、『トリニティ』で織田作之助賞を受賞。2022年、『夜に星を放つ』で直木賞を受賞。その他の著作に『アニバーサリー』『よるのふくらみ』『水やりはいつも深夜だけど』『やめるときも、すこやかなるときも』『じっと手を見る』『私は女になりたい』『ははのれんあい』『朔が満ちる』など。

「2022年 『タイム・オブ・デス、デート・オブ・バース』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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