平安貴族サバイバル [Kindle]

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  • 笠間書院
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感想・レビュー・書評

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  • おもしろかった~

    「日本で人気になる男性アイドルや俳優は...どちらかというと中性的で少年のような面影を残した男性がにんきになっているのではないだろうか」030頁
    平安宮廷物語の褒め言葉「女に見立てまつらまほし」(女にして観たいほど美しい)の光る君の美しさと頭中将の凡庸さなどを例に挙げた後、こう締めくくる。
    そうか、わたしがジャニーズ系のアイドルにきゅんきゅんするのは、そのせいなのか!納得!
    1000年の価値観を引き継いでいるわけだと、冒頭章から期待値があがる。

    そもそも、著者は言う。
    「平安時代は戦後日本社会に似ている?」と。
    「身に危害が及ぶような戦闘はなくとも、受験や就職などの奪い合いになっている」
    つまり「地位上昇のために競い合っている」のだ。
    だから平安宮廷社会を知ることは、現代社会を生きる私達にも役立つかもしれない、と「はじめに」で書かれている。

    その試みゆえか、現代社会とリンクする章が並ぶ。「差し向けられたエージェント」
    「恋愛脳」「女性の自己実現」「シスターフッド」「同性愛」「勝ち組」「負け組」
    ・・・これらは、全て、編集さんの平安時代の疑問点から出されたものだという。
    さすが、笠間書院!日文出身のアラカンにとっては、光り輝く出版者なのだよ。

    さらに、素晴らしいのは、「初学者向けの解説本をあらかた読んでしまった人が次に読むための本」として企画されたのだという。なるほど!
    その昔、学生時代は、日文専攻ながら、源氏も枕も、伊勢も、おざなりに講義に出ていただけ。それでも、一応、知識はあるので、初学者向けの本は、物足りない。
    だから、この本が面白く読めたのかと、膝を打つ。

    原文がふんだんに引用されるのもうれしい。全訳がつかなくても、きちんと内容がわかるよう造られているのが、また、味噌なのだ。

    もちろん、現代の研究者が読み解くのだから、その読みは鋭い。

    「第10章」で勝ち組の栄光と挫折を見た後、「紫の上が臣下の男と結婚し、子を産まない女であったのは、女たちのアンチテーであるようにも見えてくる」と、締めくくったのには、快哉を叫んだ。紫の上に対する、長年のモヤモヤを言い当てられた尾ような気分だ。

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著者プロフィール

【著者】木村 朗子

津田塾大学教授。東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程修了。博士
(学術)。専門は、言語態分析、日本古典文学、日本文化研究、女性学。著書『恋する物
語のホモセクシュアリティ 宮廷社会と権力』(青土社)『乳房はだれのものか 日本中世物語にみる性と権力』(新曜社)がともに第四回女性史学賞受賞。ほかに『女子大で和歌をよむ うたを自由に読む方法』(青土社)、『女たちの平安宮廷 『栄花物語』によむ権力と性』(講談社選書メチエ)など。

「2022年 『平安貴族サバイバル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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