地図と拳 (集英社文芸単行本) [Kindle]

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  • 壮大だった。兎にも角にも壮大な物語。
    国家、思想、宗教、都市、戦争、勝利、敗戦、希望、絶望、犠牲、建築、満州、そして地図と拳。

    人は限られた時間で夢をみる。
    叶えたもの、叶えられぬもの、等しく迎える死。
    私は何を思う。死の先に何を思う。死の先に続く時間をみてみたい。天命の先に辿り着きたい。

  • 敬愛する作家の佐原ひかりさんが今年の2冊として大絶賛されていたのでこれは読まねばと思い立ち、めっちゃ時間かかったけど読み終えました。

    舞台は満州で、高校時代も子どもの大学受験勉強を手伝ったときも最後までよく理解できなかったその当時の歴史を期せずして知ることにもなりました。五族共和を目指したはずがそれぞれの糸が絡みあっていく様は読んでいて辛かったし、今に至るまで分かり合えない理由もわかった気がしました。それぞれが自分が信じたことや信じたかったことに翻弄されていく様は今の世界を見ているようでもあったな。

    625ページの大作で登場人物も多くて、何度も前の方に戻っては確認してというのを繰り返して読まないといけなかったけど、読み終えた時の充実感がすごかった。

    1899年に細川が通訳として高木とともにハルビンに渡ったときのエピソードが、終戦で細川と明男が日本に戻ってくるところに繋がったのは嬉しかったし、最後に明男が丞琳と神父と再開して青龍島について知ることになるところが感動的でした。

    「国家も建築だ。ゆえに、国家の図面を引くのも建築家の仕事なんだ。」

    時間。すべての建築は特定の時間な帰属する。現代建築は現代に、古典建築は過去に。そして、その時間を無限に延長しようとする。モニュメントの語源は「思い出させる」ことにある。拳の記憶を、その時間を、永遠に保存し、呼び覚ますこと。

    「建築とは時間です。建築は人間の過去を担保します」

    なんでタイトルが「地図と拳」なのかすごく納得した。

    今のところ自分の今年のベスト2に入る作品です。

  • 図書館からようやく回ってきた本を手にして、まず5cm弱の本の厚さと重量感に圧倒される
    それだけにわくわくしながら本を開くが、初めのうちは
    次から次へと場面と登場人物が変わり、行き先が見えない
    最後まで辿り着けるかなと不安?、やめようかなと挫折しかかったが、登場人物や関係性を書き出し読んだというどなたかのレビューを読み、なるほどと真似させてもらい、それを見ながら読んでいくと、少し楽になった
    大好きな本を読むのに、楽になったもおかしな話だが・・・
    かなり難解な本であることは確かで、私もやっと最後まで辿り着いたというのが正直な感想

    多大な犠牲を払いやっと日露戦争に勝利し、手にした満州。奉天の東にある李家鎮( 後に仙桃城) に吸い寄せられるように集まってくる人々
    仙桃城に対する各人の思いが物語の縦軸として一本通り、日露戦争から日中戦争、太平洋戦争へと突入していく社会情勢が横軸に物語が進んでいく

    戦時下とは言え、決して許されることはない日本軍の残虐ぶりを改めて知らされることになり胸が痛んだが、
    『地図』というものに新たな認識を授けてもらったことはこの本を読んだ大きな成果だ

    「黄海に青龍島が存在するのか」
    「存在するとすれば、該当海域であることを証明する」
    「存在しないならば、存在しない島が存在しないことを
    証明する」
    「どうして存在しない島が地図に描かれていたのか」
    突然、須野のもとに寄せられたこの依頼が、須野の人生を変える

    のめり込む須野の研究に私自身も大きな感銘と知識を得た
    そもそも地図の歴史、この世の中に地図が誕生した瞬間
    地図の変遷、地図とはそれを見る人のために描かれたものであり、主観的な部分も多々あったようだ

    全体を通して、重要な働きをする細川は
    『国家とは地図』であると言い切る
    須野は、地図は全てを物語っているとも言う

    『地図と拳』のタイトルの意味も細川の講演で明らかにされている

    そして、何よりも感動したのは最後
    仙桃城をめぐって、放射線状に広がっていた様々な人の思いが、見事に中心に集まり終結する

    膨大な参考文献をもとにこれだけの話を構築された小川さんの頭の中ってどんなふうになっているのだろうと
    凡人の私はただただ感じ入るばかり

    そういえば「君のクイズ」でも同じことを感じたな

    ちょっと時間をおいて、もう一度読んでみたら、もっと深い読みができるのではないかと思う



  • 日露戦争後の、第二次世界大戦へと進む日本と満州/ハルピンで活動した人々の物語。
    「燃える土」を求め、満州の李家鎮という町にたどり着く。
    時代が移り戦況も変化し、主要人物が命を落とす中で、本作の主人公といえるキャラクターのは”細川”という名前の一人の将校。初登場時は通訳としての立場だが、満鉄に務め、その後は「戦争構造学研究所」というシンクタンクを結成する。独特のカリスマ性で、多くの若き将校や科学者たちを惹きつける。

    軍事ものという雰囲気はなく、新たな土地に街を作ること、その地図を作ること、象徴となる空間を街に作ること、そのロマンに心奪われた人々と都市の変遷が中心。石炭を求め開拓した日本軍が、さらに高効率なエネルギーである石油の確保のために奔走する様が描かれる。資源争奪戦争、という面が伺えるが、それぞれの求める答えを得るため、地政学と政治の力学の中に翻弄された人々が実に魅力的。
    歴史考証もかなり時間をかけたよう。登場人物の多さには面食らう部分もあるが、個々の人物に信念があり、魅力的。読み応えがあるし、ハルビンの地に行ってみたいと思った。

  • 600ページ超でかなり長いんだけど、全然長さを感じず、すごくおもしろかった! 最初のあたり、神話的というか奇想な夢みたいな部分もあって、個人的に、苦手かもと思ったけど、以降そういう部分は少なくなって気にならなくなった。日清戦争後から第二次世界大戦での日本の敗戦後までを、満州を舞台に描いた歴史小説、っていっていいと思うけど、歴史に疎いわたしでもすごくおもしろく読めた。学校で、何年に日露戦争が起きてー、何年に講和条約がー、とかって習っても「事項」とか「単語」としてしか頭に残っていなかったのが、なるほどそういういきさつがあってこうなって、こういう意味があったのか、それが今につながっているのか、っていうのがわかる感じ。
    どんなふうに戦争がはじまり、実際どんなふうにどんな思いで普通の人が戦地で戦い、人を殺すのか、っていうのがわかるっていうか。(わかりたくないけど、わかってないかもしれないけど、状況としてそうなるんだなっていう想像がつくというか。)
    でも、すごく賢くて冷静で日本の敗戦を予想していた人もいたのは、わたしにはなんだか救いのように思えた。そういう人がいても戦争を止められないっていうのも悲しいけれど。
    「地図」や「建築」や、街や都市をつくるということ、についても、普段わたしはほとんど関心ないけど、読んでいてすごく興味深かった。
    あと、ちょっと考えたのは、人は純粋に、楽園をもとめて新しい土地をさがしにいって楽園をつくろうとするけど、人が集まるとそこに欲がからんできて争いが起きる、みたいなこと。

    ラストもよかった。敗戦ですべてを失ったけれど、さわやかで希望があって。「すべてに謝った」っていう文章になんだかぐっときた。
    読んでよかったと思った。
    なんだか急にもっと現代史の歴史小説みたいなのを読みたくなってきた。
    あと、この著者についてはほぼ知らなかったんだけど、ほかの作品も読んでみたい。(けど、次作は突然クイズの話なのね)。

  • 分厚い本でしたが、なんとか読み進めることができ、登場人物をメモしながらつないでいけば読みやすく、つながる度に感動します。
    戦争の話だけとは違って、地図の見方や建築に対するこだわりも含まれて、建築好きなわたしは楽しめました。
    そこに資本主義が押し寄せてきても、それを阻止する戦いも含まれていて、単純な領土争いではありませんでした。
    争いをやめることができなくなってしまった日本人側の立場、中国人でもソ連人でもない元々住んでいた人たちの立場、いろんな角度から想いを巡らせて、多様な考え方を教えてもらった気がしました。
    日本人同士や支那人同士の仲間争いは命をかけた心情が表現されてハラハラドキドキします。
    最後の二人の再会は記憶に残るシーンでしたが、疑問が残り何度か読みたくなります。
    なのでまた読みたいと思います。

  • 長尺かつ、登場人物も多く、キャラクターもたっており、非常に読みごたえがあった。
    P.335から始まる、細川の「地図と拳」というテーマの講演が白眉。その他、八路軍や憲兵の活動も、躍動感や現実感に溢れており、いろいろ書きたかったんだろうなぁ、と伝わってくる。

    丞琳のダイナマイトや炭鉱襲撃のくだりなどが、結構ご都合主義観があるので、一つだけ★減だが、長編をじっくり読みたい人にはお勧め

  • いや~、ゲームの王国から更に濃密で重厚なストーリー。圧巻です。地図に、建築に、そして戦争にのめりこんでいく人々の熱い生きざまがドラマチックで胸に残ります。歴史がそして過去が記されたもの、いろいろなものがあると思いますが、地図と建築物もその一つ。建築とは何かに対して出した明男の答え「建築とは時間である」は納得です。そして、終盤での細川の言葉「見つかってまずいものがあったら、捨てろ」。これを聞いて、そういえばこの物語、序盤で同じようなシーンがあったよなと、長い時間を振り返ってしまいました。きっと、世界を開くのは拳ではなく、人の生き続ける力なんでしょうね。

  • オケアノスはないわー。
    え、てことは、作者はこのオケアノスを細川に言わせるために逆算して親父の苗字を須野にしたんwてメタな部分を考えてしまったら、一気に重厚な雰囲気が白けてしまった。
    作り込みすぎも良くないなって思った。この話に本当に必要なん?と感じる蘊蓄も目障りだった。京極夏彦で鍛え上げられた蘊蓄スキルを持ってしても違和感。盛りすぎ?
    全体としては面白かったからすごく残念。
    そもそも私は小説は全てファンタジーだと思ってるし、それを楽しむために読んでるんだけど、細川という肝心の主役に全く感情移入できなかった。不自然なほどの能力の高さや、人脈の広さなども腑に落ちず、内面や過去を掘り下げられもせずで、肝心なフラグを回収されないまま終わられてしまった感。だから最後の明男の地図の真相の話もとってつけた感にしか思えず、読んでる間、ずっと「いやいや、細川そのままにして終わるんかい!何者なん?掘り下げんで終わるの?」というモヤモヤがずと頭の中をぐるぐる回っていた。

  • 『君のクイズ』と『嘘と聖典』を読んでからのこれですが、小川哲さん、なんでも書けすぎません?
    というか、さまざまな専門知識を取り入れて、知見をキャラに語らせるところが、「もともと専門の方ですよね?」くらいの説得力。
    作家はもちろん、いろんな舞台を描くものでしょうけど、取材力、知識力、筆力がこれほど裏打ちされた作家もなかなかいないような気がします…

    作品が終わった後の参考文献の量が半端ないことでも実感できますね。

    なのに、心の機微をしっかり描いているから、嫌味がなく、感情移入しちゃう……
    高木が亡くなったことを知った時の細川とか。
    そもそも導入が、あ、この作品好き〜、細川好き〜ってなりました。「命より大事なんでしょう?」チョロいんです。
    燃えない土(役に立たない塵芥)も描かれていますが、明男の建築に出てきた時は燃えますよね(ギャグではないですが)。

    最終盤で明男によって語られる『建築の価値』には唸らされました。納得しかなかった。
    『建築の価値は、誰が所有しているかによって決まりません。そこにただ存在することに意味があるんです。久しぶりに故郷に帰ったとき、気にもとめていなかった凡庸な建築が解体されて空き地になっていることを知れば、人々は悲しみます』
    『建築とは時間です。建築とは人間の過去を担保します』

    600頁にも渡る壮大な旅路でしたが、確かな読み応えがありました。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学。2015年『ユートロニカのこちら側』で、「ハヤカワSFコンテスト大賞」を受賞し、デビュー。17年『ゲームの王国』で、「山本周五郎賞」「日本SF大賞」を受賞。22年『君のクイズ』で、「日本推理作家協会賞」長編および連作短編集部門を受賞。23年『地図と拳』で、「直木賞」を受賞する。

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