風が強く吹いている(新潮文庫) [Kindle]

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  • あなたは、『陸上競技』というと、どんな種目が思い浮かぶでしょうか?

    2021年に行われた東京オリンピック2020。そんな大会では男子と女子合わせて48もの『陸上競技』が行われたそうです。人が出せるスピードの限界を見る100m走、バトン渡しのテクニックに技を見るリレー、そして夏のオリンピックのトリを務め孤独な走りを見るマラソンと、ひとくくりに『陸上競技』といってもそこに見ることのできる光景はさまざまです。そこには数多くのドラマが生まれ、涙と喜びが同じ空間に同居します。

    しかし、『陸上競技』はオリンピックに採用された種目だけではありません。そんな華やかな舞台に取り上げられない中にも、さまざまな競技が存在します。オリンピックというスポーツ界の頂点に立つイベントに採用されていないにも関わらず、おそらくこの国の誰もが知るスポーツ、それが『駅伝』です。今や『Ekiden』という日本語そのままに世界各地で競技人口が増えつつあるとされる『駅伝』。そんな『駅伝』を私たちが目にするいちばんの機会、それがお正月の風物詩とも言える『箱根駅伝』です。『一九二〇年にはじま』り、『戦時中の数年を除いて、毎年行われてきた』『箱根駅伝』は、『学生ランナーの憧れであり、夢』とも言われる大きな存在になりました。私も一度はそんな彼らの走りを直接見てみたい、そんな彼らの高揚を同じ空気の中に感じてみたい、そんな風にも思います。

    さて、ここにそんな『箱根駅伝』出場を目指す十人の大学生を描いた物語があります。『なんで正月早々、短パン姿で襷をかけて山を登らにゃならん。ハコネエキデンってなんですか』という『素人ばかりの集団』が一年を切った本戦出場を目指す姿を描くこの作品。

    『俺は知りたいんだ。走るってどういうことなのか』。

    そんな問いの答えを求めて『絶対に諦めない。届いてみせる』と箱根へと続く道を、そして大手町へと続く道を駆けていく十人の大学生たちを描くこの作品。そしてそれは、そんな道を駆けぬける彼らの姿に『強く吹く風が教える』何かを感じる物語です。

    『行きつけの銭湯「鶴の湯」』の浴槽に身を沈め脚を伸ばす中、『どうだい、竹青荘(ちくせいそう)は。今年は部屋が埋まりそうかい』と左官屋のオヤジに訊かれ『あとひとつなんですが、どうでしょうね』と答えたのは主人公の清瀬灰二(きよせ はいじ)。『埋まるといいねえ』と左官屋に言われ『これが最後の年だ…あと一人…どうしてもあと一人必要だ』と思う清瀬は『左官屋と連れ立って銭湯を出』ました。そして、夜道を歩く中、一人の男が『すぐ脇を通りぬけて走り去ってい』きます。『つかまえてくれ』と後ろから追いかける男に『いやだねえ。万引きだってさ』と左官屋が言う中、清瀬は『若い男に、息の乱れはまったくなかった』ことに囚われます。そして、左官屋の自転車を『借ります』と言って男を追いかけ始めた清瀬。『あいつだ。俺がずっと探していたのは、あいつなんだ』と思う清瀬。そして、追いついた清瀬は『走るの好きか?』と問いかけます。視点は変わり、『走ることが、こんな形で役立つとは』と、コンビニエンスストアで盗んだパンを走りながらむさぼるのはもう一人の主人公・蔵原走(くらはら かける)。そんな時、『だれかが迫ってきている』と背後に気配を感じた走は後方にママチャリを確認し、速度を落としました。『走るの好きか?』と言われ驚いて足を止めた走に、『急に止まるな。少し流そう』とママチャリの男は語ります。しばらくして小さな商店の前で止まった二人。『いい走りをしている』という男は『俺は清瀬灰二。寛政大学文学部四年』と名乗ります。それに『蔵原走…です』と返した走は『四月から俺も寛政大に通うんで』と付け加えました。『なんで万引きなんかした?』と訊く清瀬に『アパートの契約金に』もらった金を『全部麻雀に使っちゃって』『大学で野宿』していることを走は説明します。『それは大変だな』と言う清瀬は『俺が住んでいるアパートを紹介しよう。ちょうど一部屋空きがある。竹青荘といって、この近くだ。大学にも徒歩五分だし、家賃は三万円』と走に提案します。『破格の家賃には、いったいどんな秘密が…』と思うも『無一文になった』自身を思う走。そんな走に『さあ、早く。案内する』と清瀬は急き立てます。『どうして俺に親切にしてくれるんです』と訊く走に『ひっそりとした笑みを浮かべ』る清瀬は『俺のことは、ハイジと呼んでくれていい』と話します。そして、『ここが竹青荘。俺たちは「アオタケ」と呼んでいる』という走の『想像以上に古』いアパートに着いた二人。『部屋は全部で九室。走が来てくれたおかげで、全室埋まったよ』と言う清瀬は走を中へと招き入れ『みんな、寛政大の学生だ』と清瀬以外の八人の個性的な面々を紹介していきます。そして二週間後、『本日、走の歓迎会。住人は七時に双子の部屋に集合』という案内が出されます。なんだか『くすぐったい気分になった』という走は指定された部屋へと向かい、やがて全員が集合し『ビールで乾杯』し、会が始まりました。そんな中、『ちょっと聞いてくれ。大事な話がある』、『これから一年弱、きみたちの協力を願いたい』と語り出した清瀬は、『俺たちみんなで、頂点を目指そう』『十人の力を合わせて、スポーツで頂点を取る』と続けます。『まさか』と思う走。そして、清瀬は言い切ります。『駅伝。目指すは箱根駅伝だ』と『悠然と述べる』清瀬。そんな清瀬と走の運命の出会いの先に『竹青荘』に暮らす十人の大学生たちが数ヶ月後に迫る箱根駅伝への出場を目指し、青春を駆け抜けていく物語が始まりました。

    “箱根駅伝を走りたい ー そんな灰二の想いが、天才ランナー走と出会って動き出す”と内容紹介にうたわれるこの作品。三浦しをんさんの代表作の一つでもあり、『陸上競技』を描いた数々の小説の中でも必ず取り上げられる作品でもあります。陸上を取り上げた作品としては、中学駅伝を取り上げた瀬尾まいこさん「あと少し、もう少し」、高校のインターハイ出場を描く佐藤多佳子さん「一瞬の風になれ」、そしてこの作品と同じく『箱根駅伝』をまさかの食の描写と共に描く額賀澪さん「タスキメシ」などがあります。いずれも読中に胸が熱くなり、読後に感動が読者を襲うということで一致しており、『陸上競技』を取り上げた小説は読書に感動を求める読者には欠かせない存在でもあります。今までに600冊以上の小説ばかりを読んできた私としては、そこまでわかっていながら、かつ、私が心酔している三浦しをんさんの代表作の一つであるにもかかわらず今日まで読んでこなかったことには理由があります。それこそが、文庫本670ページという圧倒的な物量です。この量であれば普通には上下巻に分冊されていてもおかしくないのが一冊にまとまっているところにハードルを感じてしまいました。実際、読み終えるのに二日間かかりましたが、高いハードルというのは全くの杞憂でした。そこには、圧倒的な熱量を放つ感動的なまでの物語が記されていたからです。

    では、そんな感動的な物語について三つの側面から見ていきたいと思います。まずは、『駅伝』を描いた作品ですので、そのメンバーを見ていきたいと思います。これは、これから読まれる方にも役立つと思います。この作品は上記もした通り、清瀬灰二と蔵原走という二人の主人公が運命の出会いを果たすところから始まります。そんな二人が『箱根駅伝』を目指していくというのがおおよその展開ですが、一方で『駅伝』は十人の走者がいて初めて成り立つスポーツです。この作品では、『竹青荘』という下宿に住まう十人の大学生たち、それまで陸上など全く縁のなかった者まで含めて、その時点で『竹青荘』に暮らす十人が清瀬の『これから一年弱、きみたちの協力を願いたい』という言葉の先に『箱根駅伝』出場へ向けて、人によっては嫌々ながらも練習に励んでいく姿が描かれていきます。そんな十人を『竹青荘』の部屋順でご紹介します。

    ・清瀬灰二(ハイジ・101): 主人公の一人、文学部4年生、島根の高校で陸上選手として活躍するも『膝蓋骨を剝離骨折』、大学推薦を辞退し『寛永大学』へ進学。寮生が十人揃ったことで『箱根駅伝』出場へ向けて声かけをする。寮の朝・夕食の調理、移動車の運転、影の監督等一人何役も務める。

    ・岩倉雪彦(ユキ・102): 法学部4年生、大学三年にして司法試験に合格、母親の再婚と妹の誕生等によりギクシャクして家を出る。高校時代は剣道部。

    ・蔵原走(走(かける)・103): 主人公の一人、社会学部1年生、『陸上の名門』・『仙台城西高校』出身だが監督を殴り退部、一度は陸上を離れる。口下手でカッとなりやすい。

    ・平田彰宏(ニコちゃん・104): 理工学部3年生、ただし二浪二留の身。ヘビースモーカー、パソコンソフト制作のアルバイトで『学費と生活費』をまかなう。

    ・城 太郎(ジョータ・201): ?学部1年生、双子の一人。高校時代サッカー部。

    ・城 次郎(ジョージ・201): ?学部1年生、双子の一人。高校時代サッカー部。

    ・坂口洋平(キング・202): 社会学部4年生、高校時代サッカー部、『クイズ番組を見ることを趣味』、就職活動に苦戦している。周囲から疎外感を感じながら生活している。

    ・ムサ・カマラ(ムサ・203): 理工学部2年生、アフリカからの国費留学生だが陸上経験はない。電気を点けずに入浴する。『日本語には崩れがない』。

    ・柏崎 茜(王子・204): 文学部2年生、部屋は漫画で溢れ、階下の走が床が抜けるのではと恐れる。『華やかな顔立ち』、『重そうな睫毛』から『王子』と呼ばれる。『運動が嫌い』。

    ・杉山高志(神童・205): 商学部3年生、『毎日往復十キロの山道を歩いて学校まで通っていた』。村で『神童』と呼ばれていた。『物静かで堅実』。

    以上の十名が『竹青荘』に暮らしながら『箱根駅伝』出場へ向けて練習の日々を送っていきます。それぞれの名前は( )内に記したあだ名で呼ばれますが、流石に十人の男子大学生ばかりということもあって最初は少し混乱しそうにもなります。しかし、そこは三浦さんです。それぞれのキャラクターを見事に描き分けられていくばかりではなく、最後の『駅伝』の各区間を走る場面ではそんなそれぞれの人物が読者の脳裏にハッキリと浮かび上がってくるくらいに存在感をどんどん増していきます。また、これらの十人を『竹青荘』という寮に住まわせるという想定がとても絶妙です。三浦さんには「木暮荘物語」という、やはり木造二階建てアパートを舞台にした作品がありますが、ひとつ屋根の下に暮らす人たちの喜怒哀楽を鮮やかに描いていく様は圧巻です。そう、この作品は一つ屋根の下で暮らす人たちを描く物語としても第一級の魅力を放つ作品だと思いました。

    次に二つ目は、上記した十人の中でも特別な存在として描かれる清瀬と走という二人の主人公の繋がりを描く物語です。『あいつだ。俺がずっと探していたのは、あいつなんだ』というまさかの出会いを元に始まった二人の関係。それは、上記の通り、『万引き』した走が逃げる場面ではあるのですが、清瀬は走の『息の乱れはまったくな』い走りに注目します。そして、そんな思いは『走るの好きか?』というシンプルな一言に集約され二人を繋ぐ起点を作り出していきます。『俺は知りたいんだ。走るってどういうことなのか』と続ける清瀬の想い。そんな想いはやがて走の中に『走りとは力だ。スピードではなく、一人のままでだれかとつながれる強さだ』という答えを生み出してもいきます。そんな二人はそれぞれにどこか不器用な側面も持ち合わせています。だからこそ、そんな二人を第三者的に見るニコちゃんの二人に対するこんな見方がとても説得力をもって伝わってきます。まずは、清瀬をこんな風に評します。

    『清瀬は優秀な指揮官だ。ひとの痛みを知り、同時に、競技の世界の冷徹さも知っている。価値観のちがいをすべて飲みこみ、なおかつ強靱な精神力と情熱で、寄せ集めのチームを牽引してきた』。

    一方の走については、その役割をこんな風に説明します。

    『ハイジに情熱を与えつづけたのは、やはり走だ』。

    だからこそ、

    『清瀬は走を放っておけなかった。傷ついてなおきらめく、走の得がたい才能を』。

    そんな二人の繋がりの根底にあるものを見抜きます。

    『友情とか愛情とか、そういうきれいで大切なものが、清瀬と走のあいだには確実にある。走りでも、心でも通じあえる。そんな二人が出会ったことを』『奇跡のようだと思う』。

    物語の中に順次振り返られていくそれぞれの過去の物語。そこには、『走るために生まれてきたような走と、走りたくても走れない苦しみを知る清瀬』という二人が出会う前の物語が描かれています。そんな『走りへの底なしの情熱を抱える二人』が、『お互いに影響しあい、大多数の人間には垣間見ることすらかなわぬある高みへと、上っていく』様を見る物語。まさに神がかってもいく二人の圧倒的な存在感にも是非ご期待いただきたいと思います。

    最後に三つ目は『駅伝』という『陸上競技』の魅力をこれでもか!と描いていくこの作品のいちばんの魅力です。『だれでも一度ぐらいは、目にしたことがあるスポーツさ。雑煮を食いながら、正月にテレビで』という『駅伝』を知らない方はまずいないでしょう。そんな『駅伝』の最大の特徴が『箱根駅伝の門戸は、関東の大学すべてに対して、常に開かれている』ということです。『どんな新設校の学生だろうと、箱根に出たいと願うランナーのまえには、等しく可能性が示されている』という誰にも開かれた仕組みが前提にあってこそ、この物語は成立します。全国にテレビ中継もされ、お正月きっての花形スポーツが『これから一年弱、きみたちの協力を願いたい』という素人集団の頑張りが小説の上とはいえ、現実になるという物語は他のスポーツでは考えられないことです。このような視点、今まで考えたことがなかったですが、『箱根駅伝』という『陸上競技』に対して見る目が変わったように思います。そして、そんな物語には、『駅伝』を駆けることの素晴らしさが三浦さんの最高の文章表現の数々をもって魅惑的に語られていきます。幾つか抜き出してみましょう。長距離と短距離の違いに触れた部分です。

    『短距離は、選手の先天的な筋肉の質によってほぼ実力が決まるのに対し、長距離の場合は、日々の練習によって少しずつ実力をつけていくことが可能だ。逆に言えば、毎日じっくりと自分の体と向きあい、練習を積み重ねていかないかぎり、長距離では大成できない。あらゆるスポーツで天分が必要とされるが、およそ長距離ほど、天分と努力の天秤が、努力のほうに傾いている種目もないだろう』。

    『陸上競技』を取り上げた小説は数多ありますがその多くが長距離種目を描くものです。その理由がこの記述によって見事に説明されます。そう、長距離とは、『天分と努力の天秤が、努力のほうに傾いている』、つまり、選手が直向きに努力する姿を描けば描くほど、その結末に勝利する瞬間がリアルに近づいていくとも言えます。この作品を読む上での説得力を増す意味でもとても納得感のある記述だと思いました。また、『駅伝』は同じ長距離種目であっても個人競技の代表とも言えるマラソンとは異なります。それをこんな表現で三浦さんは説明します。

    『この起伏ある二十三キロは、東京と箱根を往復するうちの、たった十分の一にすぎないのだ。十人で作りあげる巨大なレースの、ほんの一部分だ』。

    『駅伝』という十人の走者で繋ぐ競技の壮大さを見事に表しています。『ほんの一部分』とはいえ、その一人ひとりが担う区間の積み重ねが勝負を大きく左右します。同じように走者を繋いでいくリレーともまた違う、そんな独特の世界が『駅伝』にあることに気づきます。そして、『箱根駅伝』のレースでよく聞く言葉を物語の中でわかりやすくこんな風にも描写します。

    『鶴見から横浜を通って戸塚に至る区間は、「花の二区」とも称され、各大学のエースがエントリーされることが多い。いいタイムで箱根駅伝を走ったとして、それが二区だったのか、そのほかの区間だったのかで、実業団からの引きもちがってくるほどだ』。

    『花の二区』という言葉はよく聞きますが、そこを走るかどうかが卒業後の進路にまで影響を及ぼすということには驚きました。往路、復路にそれぞれ五人の走者がそれぞれの担当区間を持ち『二百十六・四キロの長い長い道のり』を二日かけて駆け抜けるという『箱根駅伝』。そこには、そんな『花の二区』だけでなく、それぞれの区間にそれぞれの特徴があります。この作品では作品全体の実に四割ものページ数を割いて、そんな十の区間の十人の走りを一人ずつリアルに描いていきます。これこそが、この作品の何よりもの醍醐味です。総ページ数670ページという物量があっという間に過ぎていく、ページを捲る手が止まらない!あまりの熱量に体が熱くなってくる!そして、涙腺が緩く、緩くなっていく!これからこの作品を読まれる方には、この後半四割に描かれる『箱根駅伝』本番を描く圧巻の熱い!熱い!熱い!物語に是非ともご期待ください。私が読んできた『陸上競技』を描いた小説の中でも体験したことのないあまりの興奮に時を忘れて読み耽りました!

    『俺が、俺たちが行きたいのは、箱根じゃない。走ることによってだけたどりつける、どこかもっと遠く、深く、美しい場所。いますぐには無理でも、俺はいつか、その場所を見たい』。

    そんな言葉の先に、辿り着いた者だけが見る景色の存在を感じるこの作品。そこには、江戸時代、街道文化の中でいち早く情報を伝えるために活躍したという飛脚。そんな飛脚をルーツとする日本発祥の『陸上競技』である『駅伝』に青春の全てをかける大学生たちの直向きな姿が描かれていました。三浦さんらしくアニメな話題やぐだぐだした呑みの場面、そしてもどかしい恋愛感情の行方など、走りの側面以外にも読みどころ満載のこの作品。文庫本670ページの物量があっという間に感じるこの作品のとてつもない熱量が読者の背中を強く押し続けるこの作品。

    『関東学生陸上競技連盟』から推薦された大学二校への取材など六年にも渡る執筆期間を費やしたという三浦しをんさんの鬼気迫る執念を感じた、これぞ傑作!だと思いました。



    P.S. 三浦しをんさん、あなたは私にとって別格な存在です。あなたの作品に一生ついていきます!!

    • さてさてさん
      Manideさん、ありがとうございます。
      Manideさんの個性をとても感じるレビューの小見出し、レビューのポイントがとても分かりやすく、...
      Manideさん、ありがとうございます。
      Manideさんの個性をとても感じるレビューの小見出し、レビューのポイントがとても分かりやすく、上手いなあと参考にさせていただいております。
      引き続きまして、どうぞよろしくお願いいたします!
      2023/01/07
    • 犀さん
      さてさてさん、初めまして。

      いつも楽しく、そしてすごいなぁと思いながらレビューを読ませていただいてます。

      さてさてさんのレビューを読んだ...
      さてさてさん、初めまして。

      いつも楽しく、そしてすごいなぁと思いながらレビューを読ませていただいてます。

      さてさてさんのレビューを読んだのも、この本を読んだきっかけになりました。

      箱根駅伝本戦の緊張、熱量、疾走感は素晴らしかったです。

      いい本を紹介してくださり、ありがとうございます。
      2023/01/20
    • さてさてさん
      犀さん、こんにちは!
      こちらこそいつもありがとうごさいます!

      読んだのは年内でしたが、箱根駅伝本番当日にレビューが公開できて、私も再...
      犀さん、こんにちは!
      こちらこそいつもありがとうごさいます!

      読んだのは年内でしたが、箱根駅伝本番当日にレビューが公開できて、私も再度気持ちが盛り上がりました。しをんさんの作品は30冊以上読んできましたが、ずっととってあったんです。レビューに書いた理由と、もう一つ、私、美味しいものは後にとっておくタイプの人間でして、その点が読書にも表れたということもあります(笑)

      誰かの読書の起点になることは私が最も意識していることですので、そう言っていただけてとても嬉しいです。
      ありがとうございます。

      今後ともどうぞよろしくお願いいたします!
      2023/01/20
  • プクログに登録するずっと前に読んで以来の再読。

    暴力事件を起こして陸上部を辞めた蔵原走(カケル)と、怪我のために陸上強豪校の推薦を辞退した清瀬灰ニの出会いから物語は始まる。

    偶然見かけた走の走る姿に魅了された清瀬は、走が自分と同じ大学に入学することを知り、竹青荘という学生寮へ入居させる。
    そこには清瀬の他に8人の学生が住んでいた。
    そして、清瀬の夢であった箱根駅伝にこの10人で挑戦しようと持ちかける‥

    いや、とにかくカケルがカッコよすぎる。
    走るために生まれてきたかのような天性の才能と積み重ねる日々のトレーニング、走りを追求する姿勢。

    そして竹青荘の面々も皆、個性的で魅力的。
    大方が陸上未経験者だが、清瀬の完璧なマネジメントによって、着実に走力を付けていき、それぞれの頂点を目指す。

    走るという究極の個人競技が、襷を繋ぐという行為によって団体競技へと変化し、さまざまなドラマを生み出していく。

    毎年、お正月にテレビで見ている箱根駅伝が、本作では、ランナー目線からの景色や沿道の人々の様子として描かれ、吹きつける風や雨や雪の感触まで詳細に表現されていて、まるで一緒に体験しているように感じられる。

    再読にあたっては、細かい表現も読み逃さないよう時間をかけて読んだ。
    そしてもう一度、竹青荘の面々と一緒に箱根を体験した。

    本当に魅力的な作品だと思う。

  • 箱根駅伝で主要キャラ10人。補欠無し。
    10人ともキャラが立ってるのは著者の筆力だと思う。
    正月のリアル箱根駅伝も一人一人の人間ドラマを理解して見たらこの本と同じくらい面白いだろうと思わせられる。

    スポコンではあるのだけど女性の筆致だから汗臭くない。
    心情描写とか走行中の感情や、ランナーズハイ、ゾーンとかの記述が丁寧で感情移入しやすい。
    ページは多いけどストーリーのテンポいいから飽きない。
    スポーツをすること(走ること)自体への考察が深い。

    「極度の漫画オタク」の王子というキャラがいて、一見そんな内向的な子がそんなに走れるはずないよーフィクションだからなーなんて思っちゃうけど、
    「2代目山の神」と呼ばれた柏原竜二を始め、最近の箱根ランナーはアニメオタクを公称する人が多く、若い人にとってはまったく違和感無いのだろう。
    ちょっと話ズレるけどマンガ『いいひと』の著者の高橋しんも箱根ランナーだし。

  • 半分くらいから鼻すすりながら読み、最後は号泣。
    感動したかったから、この本を選んだんだけど、期待裏ぎらず涙腺崩壊系物語。
    竹青荘に集まった陸上経験がほとんどない10人が1年で箱根駅伝を目指す物語。物語だからこそありえないような事が起こり、実際に箱根駅伝を目指している大学生は感動もしないかもしれないけど。駅伝に限らず、何が頂点なのか?何が勝ちと捉えるのか?仲間とは?友情とは???
    マラソン選手にとって、速さより強さ。苦しくても前に進む力。自分との戦いに挑み続ける勇気。目に見える記録ではなく、自分の限界をさらに超えていくための粘り。強さが必要だ。

    来年からの箱根駅伝の視聴方法が変わることを考えると、とても楽しみです。

  • 駅伝を小説で、となると冗長になるのでは?と思いながら読み始めたけど、寧ろテンポが良い。走りの中での人物描写がメインであり、そこが秀逸なのでストーリーの非現実性もそんなに気にならず。
    外から見る分には淡々と進む駅伝という競技も、1人1人にストーリーがあるのだと再認識しました。

  • とても読後感の良い本でした。走りに対するいろんな思いや向き合い方が丁寧にかかれていて読み進めながら没頭しました。

  • ちょっと現実では考えられない展開だけど、これは小説だから!
    そこを割り切って読めばめっちゃ面白い。あまりに面白いのでDVD購入。

  • 三浦しをんさんの作品で一番好き。
    年始に合わせて毎年読みたい作品。

  • 10人のメンバーの個性、特性を走りながら紹介していく、箱根駅伝本番のシーンがとても印象的だった。テレビで見る箱根はいつもあっという間で、ランナー一人一人の思いなど知る機会すらなかったことを実感して、駅伝競技の奥深さを感じた。


    駅伝競技が大好きなので、読んでいる間とても楽しくワクワクし通しで、ずいぶん夜更かしもしてしまった。
    高校駅伝の強豪校が近所にあり、全国大会の応援にも何度か行ったことがある。その卒業生が活躍する箱根駅伝はお正月の楽しみの一つ。
    今度の箱根は、誰も求めてはいないけれど、もう少し注意深くランナーを見守りながら楽しめたらと期待している。

  • アニメを見て面白かったので原作を購入。
    箱根駅伝、正月に何気なく見て好きな大学を応援して…軽い気持ちで見ていた駅伝。
    ただ、走っている本人、周囲の人たちはこの日に向けて色々な努力をしてきた人たちなのだと教えてくれる本でした。
    外国人だから速いんだろう、そうじゃない。走ることが目的で留学していない人もいる。本当の自分をさらけ出せずに何となく大学生活を送ってきた。小心者のくせに周りにはそんな風に見られたくない。色々な人がいます。
    本の中に登場するキングが私の性格と似ている部分があり声を出して応援したくなります。皆で何か目標に向かって励まし合って時には喧嘩して、そんな日常を私も送りたかった…と思える本でした。

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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