虚空の人 清原和博を巡る旅 (文春e-book) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 清原和博氏を題材にした書籍はもう何十冊と出版されてきた事だと思います。それでも覚せい剤所持で逮捕された後に直接取材を敢行して出版された本は数少ないのではないでしょうか。
    清原氏が甲子園で放った13本の本塁打。その打たれた投手への取材を基に執筆した記事を、自ら読んだ清原氏が著者へ直接電話をかけてきたことがきっかけとなって取材が開始されたことが描かれています。清原氏が「この人なら」と著者の事を信じることができ、何かを託すことができると思われたのかもしれません。
    その後定期的なインタビューが開始されます。しかし覚せい剤から脱却しようとする清原氏の状態は薬物中毒から脱するための薬のせいで”うつ病”の様でもあり、非常に重苦しい内容です。
    一方、清原氏を知る関係者の取材で構成される高校時代、そして”あの”ドラフトをめぐる部分では、今まで描かれてこなかったさまざまな事実、証言が盛り込まれています。当然、清原氏がメインの本書ですが、桑田氏についても触れています。
    突出した才能の持ち主という共通点をもちながらも、次のような対照的な描写をされています。「その才能に無自覚で他人を遠ざけることをしなかった」清原氏と、「本人の意思と直結した才能で、自分が他者にない物を持っている事を明確につかんでおり、他者を近づけない鋭さを伴っていた」桑田氏。
    著者の描写からは他人に対して壁を設けず、まるで子供のように無防備に人を信じることのできる清原氏の人柄が浮かび上がり、だからこそドラフトやプロ野球の世界を生きる中で病んでしまう事になった様子が描かれています。
    清原氏は執行猶予期間を終え、刑罰権は消滅しました。しかし、だからといって清原氏が”完全に”再生できたわけではなく、本書をもって清原氏の”再生の物語”が完結したわけではない事にも触れています。
    著者は清原氏の出身地岸和田にしばらく住み込み、だんじりまつりに参加するなど、時間と労力をかけて本書の取材をしています。落合博満氏を描いた「嫌われた監督」の著者が3年超の時間をかけて執筆した本書、なかなかの読み応えでした。
    本書終盤で「清原和博をやるのって、けっこうしんどいんですよ」という清原氏の独白が身に染みるノンフィクションでした。

  • 薬物使用は他人を傷つけない犯罪と言うけれども、他人を振り回してきたことは事実。

  • これまでのところ野球を専門に描いている著者が、清原和博をテーマにしたのが本作だ。 タイトルに清原和博を巡る旅とあるように、明確なスタートとゴールが設定されていると言うよりも、清原という人間を取材している過程で出会った人間とのエピソードや、著者の心の揺れを描いている。

    おそらく著者自身も清原和博をどのように描くのかが最後まで決まらなかったのだろう、本作は読者もどこに進むかわからないまま文字を追っていく感覚に襲われる。 一応は清原の執行猶予が終了するところで本作も終わるのだが、消化不良の感は否めない。きっとどこかで著者はもう一度清原和博を、あるいは本作でも一部言及されるKK(桑田と清原)を描くことになるのではないかと思う。

  • 岸和田、PL学園、プロ野球、ホモソーシャルのオールスターみたいな世界で生まれ育ってきた清原がやっと弱者になることを許されたのが、薬物中毒者としての自分だったというのはあまりに心が痛い。
    体格や才能に恵まれたが故に誰かが虚空に描くイメージの中でしか生きられない清原の苦しみがある一方で、10代の時から同じような世界で生きてきたにも関わらず、暴力や幻想の中の男らしさに囚われないでいられた桑田がいかに稀有な男性であるかを思い知る一冊だった。

  • 大宅壮一ノンフィクション大賞を授賞した「嫌われた監督」の著者が、清原和博の内面に迫る内容。

    「嫌われた監督」と違い、清原について描きつつ著者の葛藤も多く吐露されているが、これは、前著が落合博満の監督退任という結末があったおかげでルポとして完成していたのと違い、こちらは結末らしい結末がない、現在進行形の物語であることも大きいと思う。

    実際、ラストまで読んでも清原も、清原にかかわる人々も大きく変わるわけではなく、少なくともハッピーエンドではない。ただ、バッドエンドというわけでもない。清原の隠された実像が明かされるわけでもない。過去に触れつつも、ただただ過程だけが書かれている。救われもしないが、絶望というほどでもない。

    覚醒剤を使用した元野球選手という特殊さはあるものの、淡々とした日常といってしまえばそれまでだが、その淡々さがボディブローのように重くのしかかるような内容だった。

  • 個人的には文体は嫌いではないし、「嫌われた監督」は面白かったと思うが、本作は途中までは面白かったものの、個人的な思い入れが強すぎるのか、最後まで同じ調子で続いて、最後はやや飽きてしまった。

  • うーん、自分語りの本かなあ。清原と距離が近すぎるゆえ、客観的な評伝部分が少なないのは残念。PL同級生だった方の回想から、桑田がどれだけすごかったのかがわかり、それが収穫。

  • テレビ越しでもあれだけのオーラを発してるのだから、直接会った人にしか分からない魅力があるのだろう。
    執行猶予が明けても人間そこで何かが切り替わる訳ではないというのは当人にしか分からないんだろうなぁ。

  • 【清原和博をやるのって、結構しんどいんですよ】(文中より引用)

    高校野球界のスターとなり、プロ野球でも華々しい活躍を誇るが、麻薬で逮捕されるなど、「栄光からの転落」を経験した清原和博。逮捕後も彼を支えた人物などを取材しながら、人が清原に否応なく引き寄せられていってしまう様を描いた一冊です。ノンフィクションと物語の間で揺れるかのような構成の作品でした。著者は、『嫌われた監督』がベストセラーとなった鈴木忠平。

    この人の作品は今後も読んでしまうと思う☆5つ

  • 他の作品でも思ったが、この作者さんは優れた書き手である以上に、物凄く優れた聞き手なのだなあ。

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著者プロフィール

1977年、千葉県生まれ。愛知県立熱田高校から名古屋外国語大学を卒業後、日刊スポーツ新聞社でプロ野球担当記者を16年間経験。2016年に独立し、2019年までNumber編集部に所属。現在はフリーで活動している。

『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』より

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