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Amazon.co.jp ・電子書籍 (563ページ)
みんなの感想まとめ
家族の中で統合失調症が次々と発症する様子を描いた物語は、厳しい現実と向き合う力強さを伝えています。ギャルヴィン一家の物語は、12人の子供たちのうち半数がこの病に苦しむ中で、家族がどのように支え合い、困...
感想・レビュー・書評
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12人の子どもたちのうち、半数が統合失調症を発症したギャルヴィン一家の記録。
人一倍体裁を重んじる父親のドンと母親のミミだが、まるで運命に付け狙われているかのように子どもたちの意識が混濁しはじめ、家庭が崩壊していくさまがすさまじい。
本書は発症しなかった末娘のメアリー寄りの視点からも語られている。彼女は晩年の老いた兄たちや母親の介護に奔走した、行動と意志の人。
子ども時代は地獄のような環境に置かれていたにもかかわらず、その地獄に参入することを決意した。
もちろん、兄たちが好んで幻聴や幻覚に悩まされ、暴力をふるっているわけではないからだ。そうはいっても、受けたトラウマの大きさを思えば、彼女の決断はなかなかできるものではない。
彼女はまた、統合失調症研究の進展にも一役になうことになる。そう、遅々とした研究の進展に、忸怩たる思いがあったからだ。
例えばあのファイザー社が統合失調症の薬剤研究を打ち切ってしまった。そのため旧来の副作用の大きい薬を兄たちは服用し続けなければならなかった。もしももう少し薬剤研究が活発に行われていたなら、兄は廃人のようにならずに済んだかもしれないと。
その意味でギャルヴィン一家は統合失調症の気まぐれな治療法の変遷にも翻弄されたわけだ。
悪名高い、冷水療法や電気ショック療法に始まり、発症の原因を母親のせいにされる時代が続き、精神病患者を悪しき精神病院から解放する運動が始まり、やがて狂気が社会へと開かれていく過程をこの一家は生きたのだった。
なるほど、この一家が味わった不幸をかんがみると、家族関係という枠組みで精神疾患を分析したフロイトにも責任の一端がある(というよりか、フロイトの理論の不正確な受容の仕方のほうにこそより責任があるというべきか)。
本書を読むと、いわば狂気を家族というフレームから解放しようとする流れから、ドゥルーズ=ガタリの『アンチ・オイディプス』のような反精神分析の著作が書かれた理由がよくわかる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ノンフィクションですよね。
この本が特別なのは、ギャルヴィン一家がこの本を出版することに協力したということだと思います。
多子だった時代はありますし、現代でも多子の国はあります。そして、統合失調症が家族内で発症することは、珍しくありません。
なので、探せばこのような家族は、実は稀ではないと思います。
ただ、みんな隠しますよね。
偏見の目にさらされる勇気はなかなか持てないです。
子供をたくさん産み育てるというのは、カトリックの伝統的な文化でしょう。カトリック信仰がこの家族の重要な思想、行動様式であり、この家族のエネルギーの源だと感じました。信仰は、強いです。
統合失調症は、現代でも原因がよくわからない疾患です。統合失調症が完治する未来を期待しています。 -
12人の子供のいる大家族で次々と統合失調症を発症していく家族の話です。
とにかく、救いようのない地獄の日々。そんな厳しい環境でも強い生き抜き、最後には崩壊するのではなく、それぞれが助け合って生きていく姿には圧倒された。
また、彼らのような特異な家族が、統合失調症の解明に多大な貢献をしていることに、ものごとには無駄なものは全くないのだと思わされた。
統合失調症の発症は、遺伝なのか、はたまた環境による後天的原因なのか?
医療の進歩した現代でも、原因の解明はまだまだできていないとのこと。脳の疾患であることは明らかになっている模様。
それと昔からある、抑圧的な母親の育て方が疾患に影響しているというのは間違った考え方だそうだ。引き金であり、助長していると思うけど。 -
遺伝か環境かの論争の研究であるとともに
家族の物語でもある。重たいが避けては通れないし程度差はあれど皆同じような課題、感覚はあると思う。 -
12人兄弟のうち6人が統合失調症の一家という状況について興味本位で読み始めたのだが、統合失調症の原因を探る研究者側の説明もわかりやすく、とても良い本だった。長男に最初の症状があらわれてからの50年は、この病気についての研究や治療法の歴史とも重なる。著者は、遺伝なのか環境なのかという問いについて、性急に答えを出さずに、一家に起こった出来事を記載していく。発症した人だけでなく、発症しなかった6人についても、彼らが感じている恐れと、それにどう対処していたかについて、丁寧に記載している。発症しなかったのは運がよかっただけなのか。セラピストなどと出会って、自分の問題と向き合うことができたからなのか。50年前の、ただ患者を大人しくさせるだけのお粗末な薬物療法と、それによる副作用。非協力的な製薬企業。問題を直視することが困難な両親。母親にすべての責任を押し付ける考え方によって追い詰められる母親。最後は、医療の進歩を信じて、医学的な実験に協力する家族の姿が描かれて、未来への希望へと通じている。原因は一つと限らない。家族の誰かを悪人にするのではない、著者の書き方によって、一人ひとりの生涯に想いを馳せる内容になっていて感動させられる。
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【私たちが人間らしさを備えているのは、周りの人々が私たちを人間たらしめているからにほかならない】
12人兄妹のうち6人が統合失調症と診断されたギャルヴィン一家。壮絶にして稀有な歴史をたどった家族の歴史をたどりながら、統合失調症をめぐる科学史を振り返る作品です。あまりに衝撃の展開と人体の不可思議さを痛感させられるラストに驚嘆しっぱなしの読書体験でした。著者は、本作が軒並み高評価を獲得したロバート・コルカー。訳者は、重厚なノンフィクションの翻訳に定評のある柴田裕之。原題は、『Hidden Valley Road: Inside the Mind of an American Family』。
米amazonで15,000近くのレビューが集まって4.5評価なんだからそりゃ間違いないでしょう☆5つ -
「どうすればよかったのか?」への答えはないのかもしれない。ありえたとしても、審判をするのは私ではなく、あなたでもない。
情報の取捨選択と言い切り、断固たる姿勢を取ることのメリットが浸透している社会の中で生きる私が、この本を通じて強く感じたのは、他人を判断したり決め付けたりすることはほとんど不可能であり不正確であり、意図に限らず敵対的な行為になりうるということだ。
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実話。
12人兄妹。下の妹は、現在50代後半。
何この兄妹の多さ。これだけでも、うわーってなるんだけど、さらに統合失調症を発症した兄弟と、発症しなかった兄弟姉妹がいる。
興味深く読んだけど、この環境を自分に置き換えるのさ遠慮しといた。怖い。
途中、病気に関する専門的な事も出てくるけど、割とサクッと読めます。長いけど。
でもあまり周囲にオススメはしないかな。 -
統合失調症や機能不全家庭についてのノンフィクション作品。
ですがこの本の評価が高いのは、それにとどまらず、ある家族の盛衰と愛憎の歴史をクロノジカルに精密に描き出しているからではないかと思います。
まるで著者が当時にハンディカメラを持っていき、ある極めて特殊な家族のホームビデオを撮って我々に見せてくれているような視点で淡々と物語が進んでいきます。
そして年代が現代に近づくにつれ、映像が鮮明になり、過去には見えていなかった残酷な事実までもが読者にも見えてくる…という仕掛けがあり、後半は読み進むのが止まりません。
「遺伝か、環境か」という副題から科学的/医学的なアプローチを期待すると肩透かしかもしれませんし、私には専門的な知識がないので難しい部分もあったのですが、ある家族の物語としてほんとうに感動できるノンフィクション大作です。 -
12人兄弟の半数が精神疾患を発症した家族を中心に統合失調症の原因究明と創薬に挑む人々を取材したドキュメンタリー大作。画期的な成果とか病気の克服といった結末を期待してはいけない。創薬は挫折したままで、研究はようやく光明が見えてきたもののまだ道なかば。この病気は遺伝によるものか、環境によって後発的に引き起こされるのかと言う古典的議論にすら決着はつかない。
それでも未来の患者の為に奮闘し続ける研究者とそれを支える善意の人達に希望をみいだせる。そしてこの家族を一生支え続けた母親ミミと、研究や本書に協力してきた末娘リンジーのアメリカ的ポジティブ思考が感動的で勇気づけられる。 -
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ずっと気になっててやっと買った本。
表紙の写真良い。
結構長いのときょうだいが多く、地名もあまり聞きなれず、いろんなカタカナが出てくるからちょっと集中力がいる。
どうしてと読み進めるうちに、いろんな原因が浮かんできてつらい。まずいまの自分の感覚だと、そんなにお金持ちでもないのに12人は多すぎる。発病しなかった子どもたちのどんなふるまいも責められない。逃げるだけで必死だったと思う。きょうだいたちのいろんなかたちでの協力があって、この本ができて、読めてよかった。 -
最高傑作のSF小説を読んでいるかのような浮遊感
何度も訪れる壮大な不幸と神秘的な幸運に
打ちのめされた
私たちは周りの人々の産物である。
始まりに戻っていく最終章に動悸が止まらない、 -
ノンフィクションとは信じたくないほど壮絶な家族の話。私には遺伝子より環境が強いように感じられた。
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メンタルがえぐられそうになる内容。
p22〜25の兄弟のプロフィールと名前を何度も確認しながら読み進めた。
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家族の回顧録なのか病気の解明なのかどっちかに絞って書いて欲しかった
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遺伝子が関係しているだろうことは容易に想像できていたが、同じ誘発要因を持っていたとしても月に8100ドルかかるプログラムに参加させることができれば、本人が発症しないように自身をコントロールする力をつけさせることができる、という事実にとても驚かされた。Those who have and have-nots の違いがこれほどまでに残酷な違いを生じさせるとは...。
これまで名声や評価を受けることに固執せず、地道な研究調査を重ねて来られている科学者たちに敬意を感じる。民間の製薬会社が利益の大きい薬しか開発しない・作らない・売らないのならば、本当に薬の開発を民間製薬会社に任せておいてよいのだろうか。 -
12人も子どもがいてその約半数が統合失調症を発症した家族の人生を記し、統合失調症の原因が遺伝か環境かを考える。
この本を読んで驚いたが、統合失調症の薬物治療の道を開いたクロルプロマジンが50年代なので、クロルプロマジンが処方され始めてしばらくくらい(60年代)の若者の患者は10年代くらいまでご存命の可能性はけっこうあるのである。
100年近くに語られる家族の歴史。統合失調症の素因となる遺伝の研究の話も間に挟まれるが、私はこの家族の悲劇的な人生という環境要因も大きかったと感じた。皮肉にも、この家族は精神医学に貢献し歴史に名を遺すこととなった。 -
一つの家庭に複数の子供たちがいたら、子供たちは両親の愛情と関心を競うだろう。兄弟間には自ずと序列と力関係ができあがる。そしてそれぞれが自分のアイデンティティーを探す。それがもし、自分が12人兄弟の一人だったら。。。
ふうっ。それはとてつもなく困難な作業になるだろうことは想像できる。
12人のうち4人が精神疾患を患い、他の兄弟を含めた暴力と混乱が繰り返される家庭。警察沙汰や緊急入院のくりかえし。自殺者も出る。一生傷が残るような兄の暴力の被害者だと訴えた娘に、彼は病気だから、と母はかばう。家を去る者、病気の兄弟の介護に残る者。12人それぞれが、己の心の平安を求めながら、少しずつ異なる形で人生を歩む。互いへの懐疑と追慕とを行ったり来たりしながら。
そんな家族の壮絶な数十年を縦糸に、一方で、精神疾患と遺伝子の関係を追い求めた2人の医者の、気の遠くなるような息の長い研究を横糸にしたドキュメンタリー大作。複雑に錯綜した細かな事実を拾い集め、再構成した筆者の力量には脱帽する。そしてそれを可能にした末娘の意思と行動力にはもっと。自分たちの家族の記録を将来の医療に役立てたいと、公表をためらう多くの兄姉を説得して。
人生ドラマとしても、医療ドキュメンタリーとしても秀逸な作品だと思う。ピューリッツァー賞をあげたい。
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