母という呪縛 娘という牢獄 [Kindle]

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  • 講談社
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感想・レビュー・書評

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  • 異常な母娘の言葉の応酬を
    読んでるだけで疲れました。

  •  別居している父の気持ちは、無責任と感じる人もいるのかもしれないが、自分にはとても共感できるものだった。多分、諦めの境地に近かったのではないだろうか。娘をこれだけ縛りつける負のパワーを持った妻にはなるべく近寄りたくない。離婚するにも話会いできるような相手ではない。娘も父との二人の外出が楽しかったとあったが、父親も娘との時間が楽しかったのではないだろうか。
     この本の続編を期待するならば、母からの視点の物語だ。亡くなった今となったら不可能だろうが。これだけ娘の学業に執着するという事は、相当なコンプレックスのなせるわざだろうし、母もその母から愛を受け取っていないのだろう。そのような人は自己肯定感が低く、自分自身でエネルギー補給ができず、他者からエネルギーを奪っていく。「あなたのためを思って言っているのよ」、と言いながらただ感情を爆発させ、かつ本人は本気でそう思っているからたちが悪い。〈叱る依存〉がとまらないのような本も、このような叱る依存症の本人には届かない。連鎖していく負の物語は、遺伝子を残さないという方法以外で断ち切る事はできないものだろうか?

  • 娘に過大な期待をしてしまった母。
    母の敷いたレールに乗る事が、乗りたいが乗れなかった娘。
    結果、殺人という罪を犯してしまった娘。
    母は、何故、そこまで娘に執着しなければならなかったんだろう。。。。
    お互いに可哀想。
    小さい世界だけを見るんじゃなく、大きい世界に目を向ける事を教えてくれる人が、近くに居たら良かったのに…
    あかりさんは罪を償い、人生をリセットし、充実した日々を送って欲しい。
    ‘23.05.07読了

  • 娘に理想を押し付ける母親とその母親に苦しむ娘。母親は高いプライドゆえに一旦作り上げた理想を曲げられず、娘は平然と嘘をつき裏切りに罪悪感を抱かないほど鉄の心の耐性をもっていく。
    まずこういった親子の構造はどこにでもあるように思えた。実際私の家庭でもあった。自身が被害者なときも加害者な時もあった。だから母親の立場も娘の立場も痛いほど理解ができた。
    他人の気持ちを察する経験、自身の間違いを認める経験、苦しい人間関係から安らぎを与えてくれるところに逃げる経験、これらが欠けていたからここまでに事態が深刻になってしまったのではないかと思った。
    娘が異様な囚人生活を送る場面では鳥肌が立ったし、随分と長くて丁寧な手紙だなと思えば母親のヤラセだし、ずっと行動を共にするほど仲良い親子なのかと思えば強烈なモラハラで精神的ダメージを食らう。
    母親の恩着せがましい言動に関して、他人なら暗黙の了解になるはずなのに家族だからこそ「こういうことしてあげたんだからこういう形でお返ししてよね」と押し付けやすいんだろうなと共感。母親が恩を売ってくるごとに「こんなものいらないんだけどなあ」と冷めてしまう娘にも共感。とにかくこの親子関係はわかるものが多いからこそ悲劇的な結末になってしまうことが悔しく悲しく恐ろしい。
    最近の事件でありながら、私はこのニュースを目にすることがなかった。この本を機に事件のことを知ることができてよかったと思う。

  • 滋賀県で起きた娘による母親殺害事件を、娘との手紙のやりとりから再現する。ノンフィクションだが小説のように読める不思議な書き方。
    表紙のイラストがすごいな。

    母親は常軌を逸した学歴コンプレックスを抱えており娘に医大へ進学し医者になるよう要請。なぜ学歴に執着したかは本人が死亡しているため不明。高卒だったから娘に自己実現を託したのか。しかしただの教育ママという枠を超えた支配欲を自分はこの母親に感じた。娘が試験で悪い結果だと鉄パイプで殴打、「死ね」「クズ」と罵倒、近所の公立高校に通う生徒たちをバカ呼ばわり、思春期の娘が男子とデートすると工業高校の生徒なんかと蔑み、しかし娘の友人のふりをしてメールを送って関係を探る、娘が受験した大学すべてに落ちたのに合格したと親族には報告する…。
    異常である。
    狂ってる。

    父親とは離婚こそしなかったが別居。母親は父親を三流大卒と見下しながら(自身は高卒だが)毎月振り込まれる給与で生活していた。パートに出た時期もあったが人間関係でトラブって退職。ディズニーランドが大好きだったとの記述にディズニー好きは地雷多しとの己の偏見を強くする。吝嗇で、光熱費節約のため母娘は一緒に入浴していた。部屋の電気を消し忘れただけで烈火の如く怒り出す。

    娘は受験に失敗し続け9浪する。本人に合格の意志がないし学力も及んでいないのだから当然の結果だがその度に母親に罵倒され人格否定され謝罪させられる。受験勉強を知らない母親の、ただ参考書を買い与えてやっているのを監視するだけの勉強方法では超難関の医学部合格は厳しいだろう。失礼ながらあまり勉強ができる方ではないのでは…と思ったがのちにある医大の看護学科は主席で合格しているからそこまでではなかったよう。医学部がエリートすぎるんだな。むしろ文系の適性がありそうで、法学部の方が可能性があったのではと思ってしまった。本人は医療関係の仕事にどれほど熱意があったのか、よくわからない。

    共依存関係。学習性無気力。壊れていながらその壊れが常態化することで安定する異常な母娘関係。そんなふうに読めたがそれだけではないようにも思える。娘は何度か「脱走」を試みているが探偵によって連れ戻されている。父親や、娘が信頼していたと思しき高校の国語教師が、彼女が虐待されていることを知りながら何も行動しなかったその無能さ、事なかれれ主義に読んでいてイライラした。相談所? みたいなところに匿名で一報入れるくらいすればいいのに。

    名門大卒、または人から尊敬される仕事に就いた、そういう他人にマウンティングできるような条件を満たさないならば母親から娘への愛はなかった。『カルトの子』で紹介されたエホバ2世と同じ、条件付きの愛。
    「ただの看護師にしかなれんクズと嬉しがって出歩いてた自分が恥ずかしい」
    こんなことを言う母親…恐ろしい。
    この母親から娘に送ったLINEが収録されているがほとんど怪文書で読んでいて頭がおかしくなりそうだった。なので途中から読み飛ばした。

    娘だから、というのもあったかもしれない。これが息子だったら、成長と共に体格が大きくなり、腕力で母親を上回るようになるからいつか支配しきれなくなるだろう。一発ぶん殴って家を出ていく、という方法もあるだろう。

    事件後、娘に同情的な声が集まったという。
    自分も事件の概要を知っただけの時はそんな感じだったが、本書を読むと、彼女は母親との関係を続けていくうちに嘘をついたり、偽造して誤魔化すという発想が常態化しており(取り調べで死体損壊・遺棄はしたが殺人はしていないという嘘を「してやったり」という顔でつき通した)同情する気持ちより、更生できるのか、という疑問の方が増した。

    家庭は密室。
    外観はありふれていてもその家の中でどのような関係が築かれているか、他者に窺い知ることはできない。
    ドア一枚隔てた向こうに異常な世界があるかもしれない、そしてそれは特別珍しいことでもないのかもしれない、との思いを強くした。
    (春日武彦『屋根裏に誰かいるんですよ。 都市伝説の精神病理』を連想)

  • 評判が高かったので買って読んでみました。
    とても面白かった。

    とは言え、ネットでモデルになった事件を軽く検索しただけで内容はわかるので、それ以上のものはありません。
    より詳細に具体的に説明してもらえる本、っていう感じかな。
    本人の手記を小説風に書いているので、ルポとしても、立ち位置は中途半端かもしれない。著書として初めての作品ということで、文章構成がまだまだ拙いところもある。

    とは言え、お話としてはとても興味深く読むことができる素材であり、こんなにも残虐な事件で、早く釈放されて後は幸せになって欲しいと思える受刑者がいるだろうか。
    例えばもっと早く父親に相談できていたら結果は変わっていたのだろうか。いやしかし、その変わった結果が幸福に繋がるとは限らない(多くの人はこちらを経験済なのでは)。

    母親は母親で、ある種の代理ミュンヒハウゼンなのか??という感じの、単なる虐待という以上に病んでるだろうと想像してしまう。こうなると、母としての愛情があるとかないとかそういう話ではない。
    いずれこの呪縛に幼少時から絡め取られていたら逃げ出すことができなかったことは仕方がないことと思える。
    心で償いながらも、残りの人生を幸せに過ごして欲しいと思います。

  • 私も母なので教訓にするところがあるかもしれないと思い手に取りました。様々な母子関係があることはうっすらと感じることはあっても、ここまで克明に知ることはなかったので大変衝撃をうけました。

    あかりさんの、教養、言語センスや感受性に支えられている著書だと思います。社会復帰された暁にはぜひ、これまで体験されたことと才能を活かしつつ、幸せな人生を送るチャンスを得られるよう願っています。

  • 誰かの子であるすべての人にとって、他人事でない実話。誰かの親であるすべての人にとって、触れるべき実話。
    残忍な事実の背面で描かれるのは、「反省」とは何か?いくら罰を与えても、いくら断じても、自らが心の底から、改めようという意欲を持つことがなければ、本当の反省に至ることはできない。

    哲学者國分功一郎は、中動態という概念を訴える中で、責任と意志の話を展開し、自らが心から反省に至らねば、いくら社会が責任をおしつけても、事態は好転しないことを説いた。犯人が様々な愛に包まれながら、真の反省へと向かっていく歩みは、刮目に値する。
    一人の人間が、厳しすぎる親子関係を経て犯罪者となり、大きすぎる愛につつまれて反省者となるまでの物語。

  • 32歳、看護師の娘が母を殺害したうえで、身体を分解し捨てた。
    ショッキングな事件の裏には、長年にわたる母娘の
    関係性があった。母は娘に自らの願いをかけ、
    二人三脚で生きようとした。娘は母の呪縛から
    逃れ、自らの道を行きようとしながらも母の
    鎖にからめとられていた。

    どれだけひどいことを言われても母を捨てきれない。
    殺すくらいなら、逃げればよかった。
    それができないほど、精神的に見えない糸で幾重にも
    結われていたのであろう。
    娘のずるさもある。母の狂気もある。
    その周りの大人たちの傍観もある。

    家庭のことだからこそ、当事者にはどうにもできないこともあるであろう。悲劇が起こらないためには、
    どの段階でどう支援が必要なのか、そして
    それが実際その場にたったときできるのか、考えさせられた。

  • 想像以上の母親からの精神的虐待。
    いくら殺人とはいえ、
    加害者の情状酌量を願ってしまう。

    母親によって人生台無しになった
    娘の話。

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著者プロフィール

最終学歴:お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科 博士(人文科学)
現職:お茶の水女子大学基幹研究院助教
専門:特別支援教育,障害のある子どもとその家族への支援に関する研究

「2022年 『小児期の逆境的体験と保護的体験』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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