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本 ・電子書籍 (237ページ)
感想・レビュー・書評
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人口が4,000万人を切った、近未来の日本が舞台。圧倒的に生産性が落ちた社会は、出産を奨励したり一人でいくつもの仕事をし生産性をあげることに躍起になっている。その中で、高齢者や障害者など生産性が望めない人達に対して、安楽死や生体贈与という制度で平気に切り捨てていく社会でもある…
『同意』の小説である。スマホやネットを利用する時、利用規約などに同意をよく求められるのだけど、果たしてどれだけの人があの規約を読んでいるだろうか。私は全く読まないのだが、その前提として、そんなに不利なこと、理不尽なことは書かれていないだろうと思うからで、もう無意識に『同意』にポチっと押してしまう。
この小説に出てくる生体贈与とはつまりは人体実験のことを指す。新薬の投与、四肢の切断など、本人に苦痛を与えない方法で行われるという。家族の同意と本人の拒否の意志表示がなければ生体贈与は行われる。そもそも生体贈与の対象となるのは意思表示ができない人たちなのだから、拒否の意思表示ができる訳がない。だから家族の同意だけで人体実験が行わられる。小説の中で家族を生体贈与に同意したことに悩む人が登場するが、彼らはどうして同意したのか苦悶している。主人公は車のナビゲーションからの同意を拒否することに苦心する。断っても何度も同意を迫られ、これはもう強要ではと思うぐらいだ。同意という一見本人の選択に委ねられているように思えるが、実際は同意をしないと社会生活を営むのが困難となるのだから、同意は選択ではなく実は服従の意志表明であったのだ。自由意志で生きているように思える社会が、実は巧妙に服従させられているという怖い社会を著者は提示している。
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古川真人の作品





