内角のわたし [Kindle]

  • 双葉社 (2023年3月23日発売)
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本 ・電子書籍 (187ページ)

感想・レビュー・書評

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  • スクールカーストの底辺で友人関係もなく恋愛ゲームからも敗退したり、非正規雇用で孤独かつ貧しい生活を送っていたりする弱者男性が、なんらかの形でーたいていは意思の弱い承認だけはしてくれる女の子によってー救われる話は、バブル崩壊の影響が物語に反映され始めた90年代後半から、ネオリベ的価値観とコミュ力偏重の2000年代に渡り、うんざりするほど大量に生産された。

    本書は弱者女性の話である。昨今、この手の話も流通網を支配している。主人公に抜擢されやすいのは、20代後半から30代で、独身、友人関係はあるが女性特有のコミュニティに疲れを感じていて、恋人はいない(いたとしても不満がある)、雇用形態は正規か非正規かはさほど重要ではないが男性優位の会社形態で昭和のオヤジ的な悪しき男性上司がいる…といったところ。

    乱暴に要約してしまうと、この手の話は負け組が労せずして救われるという話でしかない。弱者が男性でも女性でもおなじ。正直、食傷気味。それでもなにか新たな一工夫あればいいのだが、本書はそれもなく、ひたすら凡庸な女性あるあるという感じの話が続く。旧世代の価値観を引きずる年配の男性と、意志は弱く押し付けがましさはないが肝心のところで承認だけはしてくれる若い男性、という構図も飽き飽き。

    良いところは、新しい視点はなにもないのでつまずくことなくすらすら読めるところ。弱者女性を慰めて自己肯定感を上げるためのサプリメントとしては出来がいいかも。

  • サインコサインタンジェント的な小説。

  • 最初は読みにくかったけど、
    どんどん面白くなって最後まで一気に読みました。

    なんかこう、こんなに生きづらいものかな?
    と救いのない気分になってしまった。

    人が死ぬわけでも、
    犯罪が起こるわけでもないのに、
    なんか生きてるのって大変だわと
    ブルーになったけども。

    すごく印象的だったのが新人くんが言う

    すべての加害者には自覚がない。
    そんなことはない、
    自分の罪深さくらい自覚しているという人間は、
    たいてい自分こそ加害者だという被害者意識に溺れているだけ。

    という言葉。
    確かに、大抵自分の気づかないところで
    人を傷つけていて、
    悪いことしたなと後悔していることについては
    いろいろ考えているのは自分だけだったりして、
    なるほど罪悪感というものも
    被害者意識に溺れているだけと捉えると
    少しこころが楽になりました。

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著者プロフィール

1986年、静岡県生まれ。2015年、「変わらざる喜び」(「名前も呼べない」に改題)で、第31回太宰治賞を受賞。他の著書に『稽古とプラリネ』『緑の花と赤い芝生』『きみはだれかのどうでもいい人』『ピンク色なんてこわくない』がある。

「2022年 『名前も呼べない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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