逆転のトライアングル

監督 : リュ―ベン・オストルンド 
  • ギャガ (2023年8月4日発売)
3.36
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Amazon.co.jp ・映画 / ISBN・EAN: 4589921416405

感想・レビュー・書評

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  • リューベン・オストルンド監督。
    パルム・ドール受賞作。前作『ザ・スクエア 思いやりの聖域』でもパルム・ドームを受賞している。
    どんな天才かと身構えた。

    で実際に観てみたらそんなこんなどうでもいい話が吹っ飛ぶほどに笑える映画だった。
    あらゆる階級・人種・社会常識などが次々と反転していく痛快さといったらなかった。

    とはいえまあ、観念的でひたすら二項対立的な映画だと言えなくもないが、それらを凌駕する過剰な祝祭性がきっと審査員たちを魅了したのだろう。

    いちばんのお気に入りの場面は、嵐の中の豪華客船で、酔っ払った船長とロシアの富豪が船内放送のマイクを使ってクダを巻く場面。
    この2人がアホすぎてもう最高だった。しかも詳しくは書かないが船長室以外ではたいへんなグロテスクな騒動が起きている。
    突き抜けたアホさに感動して涙ぐんだのはこれが初めてだ。

  • ジャンルとしてはコメディ。あははと声を出して笑うようなことは私はなかったが、始めから終わりまで徹底的にシニカルでブラックユーモアに満ち満ちた作品で、その随所に散りばめられた社会風刺性はまぎれもなくコメディに違いなかった。ただしそこにコメディ精神を感じることはある程度の知識あるいは教養が前提とすればいわゆる知的作業であり、それはオストルンド監督がまさに揶揄の対象として描かんとしたものの一つではなかったか。そもそもこの手の映画の視聴者層というのは一定程度のインテリ層がメインと想定される。そこに批評精神の自己還元的な構造を感じ、監督の意図するところかせざるところかわからないが、それもまた皮肉だなと思った。

    冒頭、モデルのオーディション風景にこの映画は始まる。ともにモデルの男女カップルがこの映画の主役だが、モデル業界のギャラの男女格差が扱われ、さらにディナー代をどちらが払うか、というトピックでジェンダーの固定化された観念が口論の火種になる。また、一見すると多様性やグローバリズムを積極的に肯定し取り込んでいる前進的でオープンなモデル業界の姿勢を描きつつも、それは対外的に表明してみたにすぎない詰まるところの欺瞞であり、結局はルッキズムとレイシズムの揺るぎない保守的構造が内面に見え隠れしている。そうした表面的な浅薄さは、この男女カップルの関係性そのものであり、インフルエンサーである人気モデルの女性は、フォロワー数を稼ぐためにこの男性と付き合っているのだということを告白する。そして男性は「本当に惚れさせてみせるからな」と返すが、そこに虚しさを感じるのは私だけではないはずだ。彼女のファッションショーを見に来た彼氏が、やってきたVIPのわがままで座席を弾かれてしまったシーンに感じる虚しさと似た虚しさだ。

    場面は豪華客船に移る。このモデルカップルもSNS上へのアピールのために招かれこのクルーズツアーに参加しているが、彼ら彼女ら以外の参加者は皆成金の超富裕層たちである。欧米・ロシアの成金たちの相手をするクルーズ船の白人スタッフと、表には姿を見せないボイラー室の黒人スタッフ、そして清掃のために雇われたアジア人女性たち。クルーズ船という小さな閉鎖空間に、この世界を体現する人種のピラミッド構造がその縮図として明確に可視化されている。さらにこの資本主義の豚とも言える成金たちを擁するクルーズ船の船長が、共産主義思想の母に育てられたゴリゴリのマルクス主義者という、痛烈にシニカルな構図が用意されていた。船長が参加者をもてなすキャプテン・パーティの夜、したたかに酔った船長とロシア人成金が、かつての共産主義国家であるソ連と、資本主義そして新自由主義大国のアメリカとを巡る現代史に登場する様々な著名人の言葉を引き合いに出してふざけ合うシーンが描かれるが、なんという辛辣なブラックジョークかと思った。結局東西両陣営のどちらも肯定していない。そしてこの映画の極地ともいうべきシーンが待ち受ける。それは、パーティのあと、成り上がった上流階級の人間たちが、大時化の海を航行する船の中で、糞尿まみれになるという阿鼻叫喚の地獄絵図だった。昼間に労働階級のスタッフに対して「なんて可哀想なの」などとのたまっていた女性に至っては、大きく揺れる船室の中で、糞尿とともに自分の吐いたゲロの上を無抵抗な人形の如く滑っては壁にぶつかってを繰り返すという、極めて悪趣味な仕返しというべきか、凄まじく振り切った笑いが用意されていた。

    時化が落ち着いた翌朝、クルーズ船の乗客夫婦の足元に一つの小さな手榴弾が転がり込む。この夫婦は、地雷と手榴弾を開発製造し、戦争の恩恵を受けて巨万の富を得た老夫婦なのだが、海賊たちによって投げ込まれた手榴弾はまさにこの夫婦が製造したものであり、皮肉にも彼らはこれによって命を落とすのだった。爆発によって船は沈没し、乗客や船員たちの数名がとある島に漂流し一命を取り留める。そしてここからが「逆転のトライアングル」の始まりである。「トライアングル」という構造自体は、ここに至るまでにも仕込まれていたが、漂流してからのトライアングルが、文字通り逆転のトライアングルで、孤島への漂流という惨事によって図らずももたらされた、関係性の逆転によって生み出された構図だった。この極めて痛烈な「逆転のトライアングル」がいかなるものか、ぜひ一度見て確かめていただきたい。とにもかくにも徹底的にシニカルな映画で面白かった。

  • なんだかよく分からない映画でした。2時間半もかけて何を描きたかったのかと。

    船が難破してたどり着いた無人島でヒエラルキーが逆転し、船の掃除婦が指導者として君臨。目新しい設定とも思わず(「スウェプト・アウェイ」もそうですね)。

    でもこの映画に主題はここではない(はず)。全体的には、変人たち織りなすオフビートなコメディ。だから結末も適当なんだな。

  • 惜しい!!
    最後以外かなり良かったです。
    類似作品もなく、名作になり得たと思いますが、いかんせん詰め込み過ぎましたね。
    パニック部分はあの1/3で十分です。

  • 邦題ちょっと違くね?逆転はしてないよね、という話。最後のオチは既視感だったけど、途中のロシアのクソ売り富豪ジジイとアル中船長の絡みは笑かした。

  • 普段実は目にしている矛盾、偽善、軽薄をシニカルにみせる
    構造的格差をリセットするシチュエーション
    この長さは必要だったか?
    前作”スクエア”もそうだったが見ていて腹立たしい
    その点、製作側の意図通りと思う
    苛立たしさの対象はそれぞれか

    欧州ではこうした格差意識が日常の底流にありそれが審査員に刺さったのかな、あるいは知識人として一票入れざる得ない同調圧力も働いたのかな、そこまで計算してたのかな、などと思う

  • 富裕層下げの映画最近多いけどそれほど格差問題は世界中で深刻なんだね
    人々がゲロとクソまみれになるシーンが長々とあるので注意が必要。
    この監督は他の作品もだけど、わざと人をイラつかせるようなシーンを入れてくる。
    そこが好きだしまんまとイライラする。

  • この転覆劇、あなたは笑えるか?!

    現代の超絶セレブを乗せた豪華客船が無人島に漂着。
    そこで頂点に君臨したのは、
    サバイバル能力抜群な船のトイレ清掃婦だった。

    **************************************

    予告なのか、何かの情報で面白そうと思ったので観てきた。

    観終わった感想としては、ビックリした。
    あまりにも面白くなかったから。

    まぁ、面白い、面白くないなんて、個人の好みの問題もあるし、私は、好みってほどたくさんの映画を観てきた訳でもない。

    でも、これは映画館に足を運んだことを後悔するぐらい、面白くなかった。

    隣の席の人は、事あるごとにクスクスと笑ってて、
    きっとこの人にとっては、面白かってんやろなと思いつつ。

    家に帰ってから、この映画の口コミを見ると、面白いって人が多いんかな。
    たまに、私と同じで面白くないと書き込んでる人もいた。

    人の口コミや感想で、逆転のトライアングルの意味を知ったり、あー、あの時は、こういう意味やってんやと思ったり。

    ただ、かなりショックやったんは、
    主演で出ていた女優が「2022年8月29日死去、32歳。」とあり。

    もうそれが頭から離れへん。

  • 2本の作品が作れるくらいの濃厚さです。ゲロ、クソなどの容赦ない描写もさることながら、リアリティを追求するとこうなるという好例です。とはいえ、第一部のモデルの話は半分の長さでもよかった。ゲップ。

    『逆転のトライアングル』(Triangle of Sadness)は、2022年のスウェーデン・フランス・イギリス・ドイツ合作の風刺コメディ映画。監督はリューベン・オストルンド。出演はハリス・ディキンソン、チャールビ・ディーン、ドリー・デ・レオン、ウディ・ハレルソンら。

    本作は、オストルンド初の英語作品であり、第75回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、最高賞のパルム・ドールを受賞した。なお、監督の前作にあたる2017年の『ザ・スクエア 思いやりの聖域』でも同賞を受賞しており、2作連続での受賞を果たした。なお、チャールビ・ディーンはこれが遺作となった。

    概略:
    モデルのカールとヤヤは、自分たちの関係が倦怠期に入っていることを悟りながらも、ファッションの世界で共に活動していた。ある日2人は、各国の様々な職業のセレブが集う豪華客船のクルージングに参加する。最初は優雅な船旅を楽しんでいたが、突如発生した大嵐により遭難してしまう。乗客たちの重度の船酔いによってクルージングは大惨事に陥る中、船は無人島へ座礁する。その後、釣りなどのサバイバル能力を持つ従業員と、非力なカールやヤヤたちセレブの乗客の間で状況が変化しだし、やがて船内の人々に存在していたパワーバランスやヒエラルキーが次々とひっくり返されていく。(ウィキペディア)

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