アリアドネの声 (幻冬舎単行本) [Kindle]

  • 幻冬舎 (2023年6月21日発売)
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本 ・電子書籍

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに気持ちの良い作品だった・・・。
    過去に兄の死を経験した主人公が「見えない・聞こえない・話せない」という三重の障がいを抱えた女性を地下6階からドローンを使い助け出すという物語。6時間という短い時間でどう助け出すかという緊迫感、自分のトラウマと戦う主人公の葛藤が見ていてとても面白かったです。途中から彼女は本当は”見えて”居るのでは無いかという疑惑が浮上し、疑心暗鬼を生じる場面がリアルで良かったです。そしてなによりも登場人物が全員魅力的でとても良かったです。過去のトラウマを乗り越えようとする春生はもちろんのことこの話のもう一人の主役である中川の覚悟が凄かったです。自分だけでは無くもう一人の遭難者を助けようと行動するというのは普通の人には出来ないことだと思いました。内容は途中で予想できてしまう部分もあったが、物語のテンポが良く、スラスラと読めますので是非読んでみてください。

    この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
    高木春生:松岡禎丞
    花村佳代子:日笠陽子
    我聞庸一:内山昂輝
    韮沢粟緒:小松未可子
    中川博美:早見沙織
    火野誠:小野大輔
    伝田志穂:東山奈央
    佐伯茉莉:M・A・O
    長井禎治:千葉繁
    コバッシー:鈴木達央

  • Audibleにて。サスペンス小説。
    兄を亡くした青年のハルオ(主人公)は、過去の出来事から贖罪心を持ち救助災害ドローンを製作するベンチャー企業に就職。
    巨大地震が発生し、地下の絶対的な迷宮に取り残された視聴覚障害の女性、中川博美。
    彼女の救出を試みる感動的なお話。
    ハルオの過去や克服すべき言葉の呪縛、中川博美の障害と生命力、そしてドローンを使った緊迫感あふれる救出活動が魅力的。
    また、ストーリーの中で登場するテクノロジーや技術が、登場人物の心情や行動に影響を与え、ストーリー展開や、登場人物の成長に重要な要素として描かれていた。
    新たな視点を提供し、心に訴える感動的なストーリーを楽しめた作品。

    個人的にはハルオの先輩が魅力的だった。
    仕事においては冷静で優秀であり、部下への思いやりも感じられる一方で、普段の生活では意外と不器用な一面も持つところ。

  • 巨大地震が発生し、地下5階に閉じ込められた一人の女性を、ドローンを使って、地下3階のシェルターに誘導する、という救出劇。しかしなんと、この女性は目が見えず、耳も聞こえない、そして話すこともできなかった。果たして、無事救えるのか?

    救出劇に、ドキドキ、ハラハラ感が足りないのは、(私だけかもしれない)人間が自ら助けに行くのではなく、ドローンを使っているからなのかな、と思いました。表紙の帯に「想像の限界を超えるどんでん返し」
    とありますが、私は、今までずっとモヤモヤしていた疑問が、ラストでようやく明らかになってスッキリした、という印象でした。

    各章の最初に書かれている、ヘレンケラーの自叙伝の一節が、物語の流れと合っていて、より、三重苦の女性の心情に近づくことができます。

  • 意外などんでん返し系

    評価4.1
    audible 6時間47分
    kindle

     兄を失うという辛い話から始まる。この時点でマイナス1であり、今後誰かを救ってもプラマイゼロにしかならないかと思うとちょっと複雑。
     でも兄の意思はつがれていく。

     皮肉なことに、障害者向けの地下都市の開発イベントで発生した災害で、障害者が逃げ遅れる。ただ困ったことに彼女の障害は見ることも聞くことも話す事もできないというもの。このハプニングに無理すればなんとかなる的な主人公が一基のドローンとともに立ち向かう。

     ただ、救助活動も主人公のワンマンプレーではなく、むしろチームとして描かれる。通常はかっこいい主人公が大活躍して終わるのであろうが、よくも悪くもそこまでかっこよくはない。挫けた末に、無理しなくても良い方法で頑張ればいいとの方向転換も現代風。

     途中、実は彼女は少し目が見えているのではないかと疑いが持ち上がる。また、同級生の障害を抱えた妹も行方不明となるなど本筋から外れる話しも。あまりのノイズの多さとスムーズにいかない救助活動でちょっと読み手も滞る。大して長くもない小説での中だるみの多さに評価も下がってくる。

     ただ、最後の最後に評価が覆る。やや偶然が過ぎる気はするがそういうことだったのかと不覚にもちょっと感動してしまう。振り返ると主人公も弱音は吐きながらも決して諦めずに最後まで救助活動を行った。やっぱり、無理はしなくても、諦めたらそこで試合終了ですよということか。イマイチかなと思いかけた作品ではあったが、終わってみれば兄の思いも安西先生の思いも心に残る。最終結果もプラス1に。

  • ドローンの専門用語が沢山出てくるけど、解説が丁寧で分かりやすかった。制限時間が迫ってくる焦燥感で一気読みでした。
    カメラが満足に使えないもどかしさと映像の見えない文字媒体の相性が抜群だった!

  • 2023年 304ページ

    井上真偽さん、初読みです。覆面作家さんだそうです。

    巨大地震で崩壊した地下都市に取り残された令和のヘレン・ケラー、中川博美を救出すべく、国産ドローンを開発しているベンチャー企業タラリアの社員・春生は、ドローンを使って中川を安全地帯まで誘導することになる。

    ドローンについてとても詳しく描写されています。今やドローンはなくてはならないものとなっていますが、私はドローンがどれくらい活用されているか知らないので興味深く読みました。我が家は農業でドローンに活躍してもらうことがありますが、もっと手軽にドローンを活用できるようになればなあと思います。

    物語に関しては、正直、巨大地震で崩落した都市に中川博美がたった一人で閉じ込められたって印象しか感じなかったです。街の住民は一人一人に配布されたIDで、スマホなどの通信で所在確認できるので、他の住民は災害救助隊にお任せでほぼ記述がありません。そして、春生たちタラリアの社員には、中川博美だけを探し出して欲しいという要請でした。
    地下都市のイメージが湧きにくい上に、巨大地震後の災害救助がドローンを介しているため、臨場感に欠けるという感想です。
    しかし、三重苦の中川博美を発見後、ドローンでどのように誘導するか、という点に関してはなるほど〜と思いました。カメラで写しながら順調に誘導していたのが、アクシデントでドローンのカメラ機能が喪失し、カメラのかわりにセンサーで計測し作成した点群データで地形を確認して誘導することになるのです。このカメラ機能の喪失は、物語の構成上、必要不可欠な要素になるのです。

    印象的なセリフもありました。最初は韮沢、後の2つは中川。特に中川博美のセリフは自己啓発的で、なかなかグッドですね。

    『彼女みたいに、頑張りすぎる人がいると。ああいう人がいると、あれが基準になっちゃうじゃない。ほら、彼女を見なさい。あんな重い障害を抱えながら前向きに生きている人がいるんだから、あなたも頑張らなきゃ、って──みながみな、彼女のようになれるとは思わないでほしいな』

    『人にはそれぞれ、限界があります。誰かには簡単でも自分には無理難題なこともあれば、その逆もしかり、です。だから私は、自分には〈無理だ〉と思ったら、すぐに潔く諦めます。諦めて、もっと自分に〈できそう〉なことを見つけて、そちらに目標を切り替えます』

    『とにかく、最初はあまり大きな目標は立てずに、まずは自分にできそうなことから挑戦してみてください。成功のコツは、誰かと比べたりしないこと。あくまで比べるのは、昨日の自分。〈無理〉から〈できそう〉に、〈できそう〉から〈できる〉に──そうやって一つずつ成長の階段を上って、自分の可能性を広げていくことをお勧めします』

  • audibleで読了。
    地下に閉じ込められた、目が見えない、耳が聞こえない、しゃべれない女性を主人公がドローン操作をして救出に挑む作品。
    一見絶望的な状況の中、救出に挑む展開は緊迫感があり、救出チームが一丸となって救出に奔走する姿に胸がうたれます。
    そしてしっかり仕掛けと伏線回収もあり面白かったです!

  • 設定が面白そう!と思い、井上真偽さん初読書。

    結論としてはあまり合わず。

    ストーリーについて、「大災害における障害者救助」、「主人公のトラウマ克服」が要点。

    前者は一本道のゲームに似た印象。もちろん、要救助者が障害者である以上、あまり詰め込めないと思いますが、没入感が薄かった。最後のネタバラシについても、韮沢妹が2度も行方不明になるのは流石に‥と思ってしまって。

    後者については夢とはいえ、トラウマの要因であった死んだ兄が出てきて全部説明してくれるという‥。逆に読後の余韻が残りにくかった。

    登場人物もあまり深掘りされることはなく、特に韮沢さんは用意された舞台装置でしか無かった印象。宜しくない言動が多かっただけに、もう少しフォローがあってもよかったかな。

    尺の問題もあるだろうし、題材も難しかったのは間違いないので、著者の他の本もまた読んでみたいです。

  • ドローンの機能や操作に関する記載がとても具体的でリアリティを与えており、最後の思いがけない展開で感動してしまった。。
    具体的な科学的な知見を用いて話を展開していくところが「プロジェクトヘイルメアリー」に似ていて、あっという間に楽しく読めました。

  • いやぁ……脱帽、圧巻です。
    人間の底力の凄さを、見事に思い知らされました。
    人間は弱い、でもやっぱり強い!
    諦めないという強い意思が、実現させていく最大の『力』となるのだろう。
    そう痛感しました。
    ラストでは感動のあまり涙が……。
    伏線の回収もお見事でした。
    いやぁ……本当に素晴らしい‼️

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著者プロフィール

神奈川県出身。東京大学卒業。『恋と禁忌の述語論理』で第51回メフィスト賞を受賞。
第2作『その可能性はすでに考えた』は、恩田陸氏、麻耶雄嵩氏、辻真先氏、評論家諸氏などから大絶賛を受ける。同作は、2016年度第16回本格ミステリ大賞候補に選ばれた他、各ミステリ・ランキングを席捲。
続編『聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた』でも「2017本格ミステリ・ベスト10」第1位を獲得した他、「ミステリが読みたい!2017年版」『このミステリーがすごい!  2017年版』「週刊文春ミステリーベスト10 2016年」にランクイン。さらに2017年度第17回本格ミステリ大賞候補と「読者に勧める黄金の本格ミステリー」に選ばれる。
また同年「言の葉の子ら」が第70回日本推理作家協会賞短編部門の候補作に。
他の著書に『探偵が早すぎる』(講談社タイガ)がある。

「2018年 『恋と禁忌の述語論理』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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