- Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
- / ISBN・EAN: 9784862727428
作品紹介・あらすじ
ここに生まれて ここがどこだか まだわからない耳を澄ますと遠く聞こえてくる声わたしはひとつの声であり、また多声である過去を、未来を、今を、短歌は不安な世界をどう聞き取るのか。『歓待』から四年、あらたな方法を携え挑戦する一冊。【歌集より】あの川に兄が浮かんでこの沼に父が浮かんで 睡蓮咲いたウォーターリリーこんなしづかな戦場がここにウォーターリリーの姿に咲いて生きるとはこのやうにリボンつけることリボンのうれしさ焼け残る服わたくしは牝鹿に還り舐めにゆくウラニウムなほも鎮まらぬ火を睡蓮の気持ちは人類誕生以前から変はらないまま 会へない人よ装幀=毛利一枝
感想・レビュー・書評
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連作で読むと凄みがある歌集です。
ベトナム、水俣、広島、辺野古、上九一色村から、モネの睡蓮まで。
外国に来ているような臨場感を覚えました。
ウォーターリリーは睡蓮ですが呪文のような気がしました。
<夕焼けは返り血を浴び染まりゆく水田と水田と水田が光る>
<あの川に兄が浮かんでこの沼に父が浮かんで 睡蓮咲いた>
<北が南を南が北を西が東を 殺せど殺せど人間なりき>
<ウォーターリリーこんなところにウォーターリリーあんな高みにあなたは咲いて>
<母逝きてみづうみいちまい残りたりてのひらに胸にみづうみ宿る>
<ウォーターリリーこんなしづかな戦場がここにウォーターリリーの姿に咲いて>
<可燃物にあらぬるちちはは焼きたりき燃やし尽くせず睡蓮が咲く>
<モネの描きし睡蓮はたかが光なりウォーターリリーあなたは誰だ>詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
#読了
一首ごとはもとより、連作としての構成がどれも見事だった。連作って結びつきが強すぎても弱すぎてもよくなくて加減が難しいと思うのだけれど、こちらは結びつきは強めでその代わりそのテーマや比喩に一貫性と必然性がある。一首一首はどちらかというと淡めな印象なので、そのバランスが絶妙だなぁと思う。やりすぎ感が全然ない。
ドミノという連作が一番好きでした。 -
(後で書きます。まだ自分の中で評価が定まらない)
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前作の「歓待」で読売文学賞を受賞した後、新しい境地を開いた川野里子の第八歌集である。作者はそれを「短歌とは耳を澄ますこと」「語り手であるより聞き手でありたい」と表現している。歌集では、「ウォーターリリー」という言葉が繰り返され、どこか遠くから聞こえてくる声を書きとめたような短歌に不思議な浮遊感を覚える。「ウォーターリリーここに生まれてウォーターリリーここがどこだかまだわからない」「あの川に兄が浮かんでこの沼に父が浮かんで 睡蓮咲いた」「ウォーターリリーこんなところにウォーターリリーあんな高みにあなたは咲いて」「いきのびてわたしもわたしも布袋草ふつくりと泥の大河に浮かぶ」「ウォーターリリーこころに浮かべウォーターリリー光にふれてわたしは揺れる」
著者プロフィール
川野里子の作品





