化け者心中 (角川文庫) [Kindle]

  • KADOKAWA (2023年8月24日発売)
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  • 本 ・電子書籍 (281ページ)

感想・レビュー・書評

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  • これはだいぶ独特だったなー。どういうジャンルに分けていいかわからん…。
    だけど読み始めてすぐに、うわあ手練れだ、とわかる文章。
    漫画だとしたらとにかく画力に圧倒されて、くらくらする感じ。
    緻密で、時々ハッととするくらい鮮やかな表現がある。
    たまに多分リズムを優先するために主語が省略されていて、一瞬見失いそうになる箇所もあったりするんだけども、ずっと高クオリティをキープしてる。
    ナニモノなんだこの作者、ってびっくりするくらいの才能。
    江戸の風俗描写も丁寧。知識がすごいんだろうなあ。

    ストーリーのパターンとしては、わりとまっすぐな犯人探しの王道ミステリーなんだよね。
    殺人事件に複数の容疑者がいて、依頼を受けたエキセントリックな天才と平凡な助手が謎を解いていく、その過程でまた新たな事件が起きる、っていうやつ。

    ただ、犯人が「人を食ってその人に成り代わっている鬼」っていうのが独特。
    なので、最後にファンタジー色が一気に濃くなって、そこだけやたら鬼滅の刃感がすごいんだけど。

    キャラクターたちも、それぞれわりとスレテオタイプ。これは良い意味で。
    だってそのほうが安心できる。容疑者たちのキャラクター把握しやすい。
    絵柄は独特なんだけど、推理物としてしっかり芯が通っているのもすごいなあ。

    鳥屋の藤九郎と、元女形の魚之助。
    ツンの魚之助がデレてきて、じつは最初から好きだった、ってオチもちゃんと王道ラブストーリー的に成立している。藤九郎はノンケなんだけど寄り添って生きていくハッピーエンド。
    隠していた出自が明かされ、弱い内面が晒された時に放たれる、「だけどおまえはおまえだ」ってのは殺し文句だよねえ。

    脇役のめるも良い味出してる。こういう遊びのあるキャラクターの配置もうまいなあ。
    暗くなりすぎない雰囲気もよくて、楽しかった。

    続編も読んでみたくなりました。

  • 江戸を舞台に役者の物語である。
    冒頭からぶっ飛ばしの世界観。超個性的な語り口で突き進む。読者がついてこられるだろうか、という迷いは一切ないような痛快さである。
    この波に乗ることができたらもう、癖になること間違いなし。ただひたすらに役者の物語で、その生きざまの壮絶さに、化け物とはこういうことなのだなあ、と胸が熱くなる。
    芸の道を究めようともがく者たちの物語でもある。
    芸の道とは無縁の主人公が、かろうじて「常識」を示してくれるのだ。狂気とは、鬼とは。それを問われる物語。

  • エグって感じた時代ミステリ
    なかなか輪郭を見せない物語と足を斬られた女形がうまいなあって感じました。

    2743冊
    今年182冊目

  • ふむ

  • 時代物は敬遠しがちだけど、これはちょっと読んでみたくなり読んだ結果、面白かった!
    慣れない言葉遣いも気にならない小気味よい文体と、気になる話の筋運びで、あっという間に読了。 元稀代の名女形が主要人物なもので、どことなく艶かしさも漂う文章が癖になる。

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著者プロフィール

1992年、大阪府生まれ。早稲田大学文学部で演劇映像コースを専攻、化政期の歌舞伎をテーマに卒論を書く。広告代理店勤務を経て、現在は大学職員。2020年、『化け者心中』で第11回小説 野性時代 新人賞を受賞し、デビュー。21年に同作で第10回日本歴史時代作家協会賞新人賞、第27回中山義秀文学賞を受賞。22年、『おんなの女房』で第10回野村胡堂文学賞を受賞。

「2023年 『化け者心中』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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