- Amazon.co.jp ・電子書籍 (249ページ)
感想・レビュー・書評
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第一部までスイスイ読めたけど、第二部以降の論旨を辿るのは一部(特にバザールの比喩のあたり)若干難しかったり戸惑ったりした。とはいえ基本的にテーマの割にかなり読みやすいし正義について言語哲学で紐解いていくというアプローチも新鮮・有用ですごく面白かった。個人的に普段ぼんやりと考えていることに理論的な説明を与えられたようでホッとしたりもした。力をつけて再読したら更にすっきりわかるようになるかしら。
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3.8
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ロールズの公正の批判的分析とそれをめぐる他の哲学者の意見及びトランプでの選挙に関わる分析である。
教員養成系大学の学生にとっては、道徳教育で、学習指導要領が、こころというざっくりしたものを基本としているという指摘があるのでそこを中心に読むといいであろう。 -
多様性はとても大切だ。だが、各々異なる価値観を持ちながら共生する社会を想像すると、すぐに壁にぶつかってしまう感覚があった。金子みすゞの如く「みんなちがって、みんないい。」は理想だが、本当に社会はそれで成り立つのだろうか?─という疑問だ。
そんな閉塞感を起点に本書を手に取った。著者はジョン・ロールズやリチャード・ローティを引きながら一つずつ丁寧に議論を進めている。人は自分が信じてやまない価値観や信仰を「正義」であると錯覚してしまいがちだが、それは自分自身が私的に良いと思う「善」(の構想)でしかなく、本来わたしたちが追求すべき「正義」は公共的な理念である。そして、わたしたちは未来に向けて不公正を解消していく責務を担っている。なぜならば、人と人とが共生せざるを得ないのがこの社会の現実だから。私的領域に偏重しすぎず、公的領域とのバランスを取ることが求められている。そこには、そもそも唯一の解決策や「ひとつの信仰」が当てはまる訳ではない。けれども、わたしたちは常に訂正可能性に開かれながら、特権や「力」の存在に自覚的になり、正しいことばをもたない他者の声を聴きとることによって、丘を登る歩みを止めてはいけない。